ここは北麻布の瀟洒なバーラウンジ。
僕はデヴィッド・ヘイゼルタイン往年の名作『クレオパトラの夢』に耳を傾けながら、ドライマティーニに口をつけた。ここのマティーニは他のどの店よりもドライだ。ベルモット・リンスしただけのグラスに並々と注がれたゴードン。何も言わなければただのジンストレートとの違いは判然としないだろう。しかし、五感を研ぎ澄ました時に一瞬だけ感じる、微かなベルモットの香り−−鼻腔を貫くその瞬間を、僕はたまらなく好む。
「マティーニ、もう一杯」
見知らぬ隣の男性が飲んでいるロブ・ロイを見つめながら次の一杯をオーダーした。マスターは何も言わず、グラスを磨いていた手を止めてミキシンググラスに新しいゴードンを注ぎ始めた。曲はエルビスの『カリフォルニアドリーミング』へと変わっていた。
良いバーテンダーの条件とは何だろうか。思うにそれは、酒作りの技術でもその経営手腕でもない。
『客に求められたことを、最大限にサーヴィスすること』
ただそれだけである。そしてそれが、最も難しいサーヴィス。
派手なパフォーマンスも粋な会話も、時には必要だろうし、必要ではない。求められる全ては、タイミングと心遣い。
マスターは間違いなく、一流のバーテンであった。
「ご一緒してもよろしいかしら」
不意に声を掛けられ、僕は心ならずも狼狽した。声の主に目を遣ると、チューブトップの真っ赤なドレスに身を包んだ女性が脇に立っていた。
心の振幅を悟られぬよう、僕は極めて冷静に隣の止まり木を引き、彼女を導いた。滑るように椅子に落ち着いた彼女は、手に持っていたギネスを一息に飲み干すと僕の方を一瞬見つめ、そして手持ち無沙汰にグラスを弄び始めた。
程なくしてマスターが僕の元へマティーニを差し出した。添えられたオリーブがグラスの底で所在無さげにしている。なぜだかそんな風に映った。
「マティーニ、お好きなの?」
相変わらずグラスを掌で転がしながら、彼女は射すくめるような目で僕に尋ねる。彼女はこの世の全ての答えを知っているようで、しかしあえてそれを忘れたような、そんな不思議な目をしていた。
「嫌いじゃなければ飲まないさ。ただ、王様にかしずく野暮な兵隊でしかないよ、僕は」
「気障な人…ねえマスター、あたしにはマンハッタンを頂戴」
そう言って、彼女はバッグからシガーケースを取り出した。華奢なその身には一つも似つかわしくないSHINSEIに火をつけると、くゆる紫煙をどこか投げやりに見つめていた。
「さしずめ君は、王に召し取られた女王様…ってとこか」
マティーニがカクテルの王様ならば、マンハッタンはカクテルの女王だ、そういう風に一般では言われている。彼女が僕を揶揄したのか、それとも本当に好きで頼んだのか判然とはしないが、しかしこんなやり取りも悪くはない。
マスターがほとんど気配を感じさせずに彼女の前へとマンハッタンを運ぶと、彼女は目を細めながらグラスを手に取り
「女王と王様……この符号をどう考えるの?」
と呟いて悪戯っぽく笑った。
僕は一瞬考え、そして乾杯を求めた彼女のグラスを避けながら、マティーニを一息に流し込んだ。
「それに答えるには、ここは少し俗すぎる」
僕らはパークハイアットの一室へ赴いた。
彼女は備え付けのレミーマルタンをストレートでグラスに注ぎ少しだけ唇を湿らせている。相当に酒は強いらしく、酔った素振りは微塵と見せない。
「ねえ…」
キングサイズのベッドに腰を落ち着かせながら、彼女はまた悪戯っぽい顔で僕に問い掛けた。
「魂の存在って、信じる?」
「僕が信じるのは、優しさだけさ」
「もう…混ぜっ返さないでよ」
つまらなさそうに笑い、彼女は再びグラスの内容物に目をやった。
「じゃあ僕からの質問だ。女王と王様。君の考える符号は?」
残り半分はあろうかという酒を、彼女は喉をならして勢いよく胃袋に押し込んだ。そして挑戦的な目で僕を見つめながら
「理屈は嫌い。ねえ、言葉よりも、体で知りたくなる時って、あると思わない?」
そう言って、彼女はゆっくりと立ち上がり、眼下に広がる夜景を背にしてその裸体を顕にした。
僕はベッドに潜り込む。彼女は、屈託の無い笑顔で僕を迎え入れた。
「綺麗だ……」
そう呟いた僕に妖艶な笑みを浮かべた彼女は、静かに僕のズボンのジッパーを引き下げた。
「あんれまあ!こりゃあ見事なマラなこってすが!!」
「うはー!恥ずかしいでがんすよー!!」
彼女は僕の屹立した股間を見つめると、思わず感心の溜息を洩らした。幾つになっても下半身を晒すというのは、気持ちの良いものではない。
「いんやあ、これはホンマ、見事なもんでがすなあ」
「だはは……お世辞はよくないこってすばい」
「おやおや……ありゃりゃあ!チンカスがこんなにドッサリ!」
「だひゃあ!参ったがやー!昨日お風呂ば入っとらんけん……」
「ようがす、ようがす」
彼女は大胆に、かつ繊細に僕の下半身へと舌を這わせる。その巧みなテクニックに、僕は言葉を失うばかりだ。
「お、おめはん、どこぞでこんなテクニックを手に入れただよぅ……」
「わだす、そっだら恥ずかしいごと、よう言わんだす…」
「あっあー!ええだす、ええだす!でもそろそろワスにも舐めさせてけろー!」
「あんれー!!」
にわかに顕になる彼女の秘部。既にそこは、彼女の恥液で濡れそぼっていた。
「おめ、これ、大洪水でねかあ!」
「ちょっこす、恥ずかしいだべさあ・・・」
「ようがす、ようがす・・・っておめ!マンカスがドッサリでねかあ!」
「あんれまあ、恥ずかしいこってすわいやぁ!!」
「これはこれでまたよござんす!では、どれ、ひとつ・・・」
僕はいやらしく音を立てながら、彼女の秘部を貪った。
「ありゃりゃあーー!こりゃ、ほんに、すごかこつ!か、観音さまーー!」
「グフフ…グフフ…」
攻めては受け、受けては攻め……。衣服を剥ぎ取ってもつれ合う僕らは、さながらそう、一匹のケモノとケモノ。お互いのスウィートスポットを慎重に調べながら、僕らは一進一退を繰り返す。
「おめはん、ちょっとそのアヌス、見せれ!見せれ!」
「ああ!ダメだす!あんれー!!そこは・・そこはあきまへんでぇ・・・!!!」
言葉とは裏腹に、彼女は自ら秘部を曝け出した。もはや彼女には一分の理性も残されてはいないのかもしれない。僕は舌を突き出すと、乱暴に彼女の菊を貪った。
「アバー!アバババーー!!」
「ようがす!ようでがんすよー!!」
「うんもが!うんもが出やんすうー!!」
「出しなはれ!出せばよござんす!!」
「エクスプローーージョン!!」
ブバッ!ブッ!ブバババッ!ビチビチビチビチビチ!!溢れかえるような汚物の中で、僕は、恍惚に包まれながら、果てた−−−−
〜ファイナルファンタジー14 赤魔導士の夏休み〜 より抜粋

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