「節子、節子っ……!!」
朝勃ちを利用して名作・『蛍の墓』を用いてシコシコ、通称『原爆オナニー』という新機軸の一人Hに勤しんでいた。AON(全国オナニー連合、通称【全オナ連】)の会長選挙は来週に迫っている。だからこうして、起き抜けからの特訓にも余念がないのだ。
節子がチュパチュパとドロップを舐める姿に次第とシンクロしていく自分を感じる。節子それは…ドロップちゃう…ドロップちゃうでえ……!!
まさに興奮のるつぼ。段々とエクスタシーの階段を上っていく。楽しいオナニー、愉快なオナニー。この調子でいけば、僕の次期全オナ連会長としてのポストは間違いないだろう。
ドンドンドンドン!!僕の亀仙人が白いかめはめ波を今まさに撃たんとしていたところ、唐突に玄関のドアがノックされた。SHIT!!誰だよ?!いいところだったのに…。仕方なく玄関に向かい、魚眼レンズで訪問客を確認する。するとそこに立っていたのは
「せ……節子?!」
そこに居たのは、僕の祖母・伊集院節子(102)だった。普段は決して実家から外に出ない節子が、なぜここに……?訝る僕の気持ちをよそに、節子は家に入ってきた。
「はいはい、おばあだよ。元気かえ?」
ズカズカと居間に上がりながら、節子は僕に言葉を投げる。一体祖母の真意は…そんな思いと供に絶句していると、節子は突然
「……AONの選挙に出るらしいね」
と、冷たい声で言い放った。目の輝きは冷たさすら帯びている。容赦なく僕を射抜く瞳は、そう、まるで野生の虎のそれ。
「ああ、そうだよ。僕も男として上を目指したいんだ。だから今もこうやって」
「お黙り!」
バシーン!祖母が叫んだ刹那、僕の左頬に激痛が走る。はあはあと息を荒げる祖母を見上げると、右手には鎖の両端にバイブを取り付けたバイブヌンチャクが握られていた。
「それは甲賀流に伝わる暗器じゃないか…!そんなものを持ち出しちゃダメだろ、ばあさん!」
我が家は江戸から伝わる由緒正しい家柄である。江戸中期には、7代目当主であった伊集院逸物(いちもつ)が将軍からの要請のもと暗殺集団を創設、その流派の一つが甲賀流である。そして今節子が握り締めているのは、当時圧倒的な殺傷能力を誇り、その危険性から永代に渡り使用が禁止された伝説の暗器−−−バイブヌンチャクなのだ。
「黙らっしゃい。そんな甘い心持で、全オナ連の出来レースに勝てるはずがなかろう」
「出来……レース………?」
「そうさ。あの選挙にはウラがある」
「馬鹿な!全オナ連はクリーンな集団だ!そんなことあるはずが…」
「これを見な」
そう言って節子は、僕に一つの資料を投げつけた。表紙には赤い字で『重要機密』と書かれている。僕は震える手を抑え、ゆっくりとページをめくった。
「こ、これは……!」
簡潔に纏めると、こうだ。全オナ連次期会長は、既にタカ派の精子丸白濁ノ介(せいしまる・はくだくのすけ)に内定していること。そしてもう一つ−−−精子丸の会長就任が確定し次第、僕は全オナ連を追放されること……。
「馬鹿な!こんなことが!」
「目の前にあるもの、それだけが真実なんだよ」
前身から力が抜け落ちる感覚に囚われる。なんということだ。これがもし本当なら−−−あの努力と研鑚の日々は一体なんだったというのか。ジブリで抜き、サザエさんで抜き、『はたらくくるま』のメロディーにのせて抜き、力士のぶつかり稽古の模様を眺めながら抜いたあの……あの辛く苦しい日々は一体、何のために……!!
「ヘコたれるんじゃないよ!たった一度の挫折くらいで情けない……そのチンコはなんの為についているんだい!」
「……!」
節子の檄が飛ぶ。そうだ、諦めたら、何もかもがおしまいなんだ。
「すまないばあさん・・・俺は、俺は何としてでも、会長の座を勝ち取るよ!」
「その意気だよ。おまえさんならやれる。そう思って今日は特訓しに来たんだよ」
特訓…?僕は思わず動揺したが、そんなことは気にも留めず、節子は何やら用意を始める。玄関からガタガタと何かを手にやってくる節子。その手に握られていたのは……
「節子お前それ……オムロンの真空掃除機やないか!!」
「覚悟を決めな!」
そう叫ぶと、節子は見事な体裁きで、鮮やかに宙を舞った。そう言えば戦時中、節子はそのナギナタ技術で迫り来る米兵を千切っては投げ、千切っては投げ、その姿は、ライク・ア・バタフライ。今、平成の世に蘇った伝説の蝶が、僕のチンコに向ってフライアウェイ−−−時が−−−見える−−−
ズポッ
「WRYYYYYYYYYYYYY!!!(対訳:いてええええええええええ!!!)」
「このくらいで悲鳴を上げるんじゃないよ!ホレッ!ホレッ!」
「クソッ、こうなったら……」
「ホレッ!ホレッ!」
「おいババア!よけれるものならよけてみろ!オレのギャリック砲はぜったいに食い止められんぞ!貴様は助かっても地球はコナゴナだー!!」
「…!!考えたなちくしょう!」
節子は素早く掃除機のスイッチを切り、ガボッと入れ歯を外すと、何と尺八を始めたのだ!
「な、なにい!オレのギャリック砲とそっくりだと!」
「ぎぎぎぎ……!!!」
攻めては受け、受けては攻める。二人の戦士が今で繰り広げる激戦に次ぐ激戦。
互いの実力は、見事に伯仲していた。
このまま膠着状態が続くのか…誰もがそう思ったその時である!
節子「ふぉ・・・ふぉふぁふぁーふぁーーーーー!!!」(訳:4倍だぁー)
節子は体内の気を一気に練り上げ、界王拳を禁じられていた4倍に引き上げたのだ。
「お、押され……
ファーーーーーーーーーーー!!!」
そして僕は、節子の口の中で、果てた。
点けっぱなしにいたテレビからは、清太が節子のことを火葬する模様が、静かに、ただ静かに流れていた。
「ぐ、ぐぐぐ……」
気付いた時、僕は、病院の一室に横になっていた。
「ここは…」
辺りを見回すと、隣のベッドには節子が眠っている。穏やかな寝顔に、僕は、得も言われぬ感情が涌いてきて…
(これは……恋?)
そんなバカな、と笑い飛ばした。僕は僕、節子は節子、この関係は変わらない、変えちゃいけない。
僕は静かに語りかけた。
「節子、ありがとうな。おかげでオレの弱点がなんとなく見えてきたよ。これでオレ、選挙もなんとか頑張れると思うんだ。だから、また、稽古をつけてくれるかい?なあ、節子?」
節子は、何も答えない。
「おい節子…節子?」
僕が何度も呼びかけていると、突然兄貴の達也がやってきた。
「兄貴、節子が…!」
「…キレイだろ?死んでるんだぜ、これでも」
慟哭−−−死んだ…?節子が…?
「節子はな、末期のシャクハチハイマーだったんだよ。あと一回でも尺八したら、死ぬってところだったのさ。だけど節子は、お前の為を思って、お前の未来を願って、死を省みずに……尺八をした。……分かるな?この意味が…」
僕は節子の死に顔をじっと見つめながら、力強くうなずいた。
僕は、もう、逃げない。
きっと−−−掴み取る、全オナ連、会長の座を。
「それで兄貴、オレはなんで病院にいるの?」
「ああ、さっき診断書を受取ったよ。ええと、なになに。突然なる老婆からの尺八による精神的ショックにまつわる勃起不全。ああ、いわゆるインポやね」
「え?」
「現在の医療技術では手の施しようがないってさ(笑」
「え?」
僕と節子の短い夏は、こうして、終わった。
(完)

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