神木キュンとの生活 その1
(その2以降は政治的判断により割愛します)
(日曜日なので絵日記風味です。画像が多いため携帯の方には優しくありません。申し訳ない)
・・・
夕食を終えて自室でくつろいでいると、突然肉欲さんが息を切らして僕の所へやって来た。
「大変だ神木キュン!大変なんだ!!」
「どうしましたかついに狂いましたか?」
肉欲さんはハアハアと荒い息をつきながら目の前に立ち尽くしている。常日頃から様子のおかしな人ではあるが、今日は特別落ち着きがない。
「とにかく大変なんだ……とんでもないことが起きてしまった……」
「大変なのは分かりましたから、とにかく落ち着いて下さい。一体何が大変なんですか?」
「実は……」
肉欲さんは神妙な面持ちで握っていた右手を開く。その時、彼の吐息が僅かに酒臭いことに気が付いた。おそらく日課である晩酌の途中だったのだろう。それにしても、毎日飽きもせずよく飲むものだ。
「これを見て欲しいんだ」
「どれどれ」

「何だ。ただの豆じゃないですか」
肉欲さんの手には、薄緑色をした大振りの豆が一粒握られていた。蛍光灯に反射して見事な艶を出しているその豆は、何だか口に入れるのが惜しまれるほどでもあった。ただ、そのこと以外には特段気にかかるところはない。では、肉欲さんは一体何に狼狽していたのだろうか。
「これがただの豆だって?バカ言っちゃいけない。いいかい、もう一度この豆をよく見るんだ」
「はあ……」
改めて豆に目を落とす。ほんのりとした豆の香りが鼻腔をくすぐるものの、やはり自分の目には取り立てて変わったものは見て取れない。マジで意味が分かんないよ……僕が途方に暮れていると、要領を得ない僕の様子を見透かしたのだろうか。肉欲さんは深いため息をつきながら口を開いた。
「神木キュン……いつまでも生娘ぶってんじゃないよ!!」
「きむすめ?」
「いいか神木キュン、もう一度よく、このオマメをじっくり見るんだ……そう、"舐める"ようにしてね……そしたら分かるだろう!!この豆が抱いているミーニング(意味)が何なのか!!」
「意味(ミーニング)……?」
「そうだ!この豆、その縦に伸びた雄姿。かと思えば、下の方でプックリと膨らんだ愛らしさ!そして全体のバランス!!これはもしかして、もしかすると!?」
「も、もしかすると?」
そこで肉欲さんは一拍おくと、ニヤリと怪しげな笑みを浮かべながらそっと呟いた。
「まさにチンコみたいやないか……」
(そうだろう?)
「この色と艶、そして得も言われぬハリ。それら全ての要素が相まって、この豆をピナス、いわゆる男性のチンボルたらしめている。それくらい分かるだろう、君も男なんだから。そして僕は考えた、どうしてこんな猥褻物が市場に出回っているのか、と。僕はすぐにピンときたね。食の欧米化が進む昨今、我々の食卓では野菜を見る機会が減った。結果、蓄肉の消費量は右肩上がりに高まり、それとは逆に野菜の消費量は減る。そうなれば農家はパニック、家計は火の車となり、また農業をやっている場合でもなくなるだろう。そして農夫はこう考える。『全ては、野菜を見捨てた日本人が悪いのだ』と……そして義憤にかられた農夫たちは、水面下で品種改良を重ね、ついに食卓にチンコを送り届けることに成功した……と、まあこういう寸法さね。どうだい?僕のロジック。震えた?」
「ふざけろドカス!!なにがチンポだ!!ただのソラマメじゃねーかこの国賊が!!」
気づけば僕は大声で怒鳴っていた。いい歳をした大人が、神妙なツラをしてチンポだ陰謀だのと語ることが許されるのだろうか?いや、許される訳がない。だから、僕の憤りは極めて正当なものと言えるだろう。きっと彼の頭の中には脳味噌の代わりに赤痢でも詰まっているに相違ない。
「怒鳴ることはないだろう。君は一体誰と戦っているんだい?」
「もういいです……用件は分かりました。だから早く向こうに戻って下さい。鼓膜が腐ります」
「随分だな……だが待たれよ、まだ僕の話は終わっていないんだ」
そう言うと、肉欲さんは再び僕の方に豆を見せ付けてきた。全く、この人は何をしたいのだろうか?反論しても話が長引きそうなだけだったので、僕はおとなしく彼の手の中に目をやった。

「豆、ですよね」
「確かにそれは豆だ。だが、もっと大事な何かがあるだろう。君には見えていないというのかい?そんなまさか。君も男なら分かるだろう?」
「いえ、皆目見当がつきません」
率直に返事をすると、肉欲さんは小声で『やれやれ』と呟きながら、右手に持った豆をグッと僕の目の前に近づけた。
「いいかい、ここを見てごらん。そう、ここだ。コレ、この縦スジ、そう……スジが入っているね……割れ目が……割れ目と縦スジ……そして、表から見るとピナス……この符号、何だか示唆的だろう……」
「何が言いたいのですか?」
「とことんとぼけるつもりかい?まあそれもいいだろう……では敢えて言おう……この豆、前から見れば男性のシンボル、そして後ろから見れば女性の象徴……だからこの豆はね、神木キュン」
「両性具有なんだよ……」
(一体この人は何を言っているんだろう……)
喋り終わった肉欲さんは、やたらギラギラとした眼差しを僕の方へ向けてきた。僕は思う。この人はどこから来て、そしてどこに行くのだろうか、と。
「ハイハイ、もう分かりました。分かったから、ね。僕の部屋から出て行って下さいよ」
「ホラ見てごらん神木キュン!この禍々しいまでの黒さを誇る縦スジを。どうだい?何だかワクワクしてきたでしょう」
「しません。早く出て行って下さい」
「人生にはドラマがある。それは豆だって同じことだ。想像してみよう、二つの性器を持ったまま生きる豆・ライフを。きっと迫害されたことだろう、いじめられたことだろう。『このマメズレ!』『死ねよ、ヤリマメ!』なんてことも言われたかもしれない。だから彼……いや、あるいは彼女か、とにかくこの豆は、生きる手段としてその豆(カラダ)を使うしかなかった……自分の武器である豆(オンナ)を駆使するしかなかった!その結果が、この黒ずみさ。どうだい神木キュン、これは壮絶なドラマだと思わないかい?」
「い、いや、そんな・・これは豆・・・豆ですよ・・・!」
「違うね。確かに物質としては豆に見えるかもしれない。けれどその精神、そして生き様!そいつは僕ら人間と比べた時、決して何も異なるものはない。いや、辛酸を舐めつつ、それでも豆道(モラル)に外れることなく、こうやって食材として我々のところにやってきた。君はそれを知って、この健気な豆を見て、それでも何も感じないというのかい。耳をすましてごらん、聞こえてくるようじゃないか。『食べて、アタシを綺麗な豆(ジブン)に戻して頂戴!』という切なる声が、さ」
「ま、豆・・・子・・・」
肉欲さんの悪魔的な囁きが、次第に僕の脳髄を侵食していく。落ち着け……目の前にあるのはただの豆だ!そうであれば、そんなドラマだなんてただの虚妄なはずだろう。そうだ……騙されるんじゃない。しかしながら、この豆の扇情的な姿態、それも同時に確かなのではないだろうか……瞬間、胸の中に様々な思いが沸き、僕の心は千々に乱れた。
「我慢はよくないな神木キュン。ためらいは長く、しかして決断は一瞬だ。結局僕らに提示されている選択肢なんて驚くほど少ないものさ。『やるか、やらないか』。そうであれば、ヘイ、前へ前へと進むのが男ってものだろう」
「男……男に……」
「そうさ、この豆(コ)も寂しがり屋なんだ。だから神木キュン、君のぬくもりで豆(カノジョ)を暖めてあげればいい。軋むベッドの上に優しさを持ち寄りながらね」
肉欲さんの宗教的なボイスを聞くにつれ、僕は段々と自我を失っていく。目の前にあるのは、豆だ。でも豆だからって何だというのだろうか?僕が豆を愛し、そして豆が僕を愛したとすれば。確かに現行法上、豆とは結婚できない。でも、法律にも穴はあるんだよな……。
(狂ったように求め合う僕たち、そして――)
「……どうやら自分の正直な気持ちにやっと気づいたようだね。それでいい。委ねていいんだ。さあ神木キュン、豆ますか?豆ませんか?」
「豆……ます!」
確信を持って僕は答えた。豆だとか、豆じゃないだとか。そんなのって時々ひどく重要な問題なように思えてしまうけれど、大事なのは『僕が今、どうしたいのか』、それだけなのだ。僕はうっとりと、陶然とした様子で豆のことを見つめる。
鮮やかな薄緑。
そしてハリのある肌。
また、匂うような豆・フレグランス。
それはどこからどう見ても豆のようで
かつ豆であり
豆でしかなく
果てしなく、豆だった。
「豆じゃねーか!!何が両性具有だ殺すぞ!!」
「ホラ神木キュン!僕の股間のところにも沢山の豆を用意したよ。ワカメ豆だよー。ほら、貪るようにして僕の股間にカムヒア」
「やっぱり最初からそれが目的なんじゃねーか死ね」
「ちょっと待って神木キュン金属バットはまずい。僕がゴルゴダの丘に送られてしまいかねない」
「祈りな」
グシャ!!ゴリン!!グチョリ!!金属バットが風を切る音と共に、僕の部屋中には教育上とてもよろしくないサウンドが響き渡った。肉欲さんは何度か『トランセルのかたくなる!トランセルのかたくなる!』と叫んでいたが、僕は構わずバットを振り続けた。
・
・・
・・・
「今日はこのくらいにしておきますけど、次に同じような真似したら本当にひっぱたきますよ。じゃ、おやすみなさい」
僕はベコベコになった金属バットを投げ捨てると、肉欲さんを部屋の外に放り投げて静かにドアを閉めた。そういえば明日の1時間目は算数の問題を当てられているのだった。全く、思わぬところで時間を食ったものだ。僕は深いため息をつきながら、算数の教科書をゆっくりと開いた。
「次は……アケビの季節に勝負だ……」
(参考資料:アケビ)
こうして、肉欲と神木キュンの春夜は更けていく。
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すげー豆だ!
加えて妖怪大戦争とアケビで吹いてしまったwwww
それにしてもいやらしい豆だww
五訂食品成分表的にthinkして。
派遣勇者も読みたいです(><)
久々の神木キュンも嬉しかったけど、ローゼンとトランセルに吹いたwww
お父さんwwww
かーまーえーよー!!!
手血が!!!父さんの手首から手血が毎秒6リットルで放出中でやんすー!!!
忘れた頃の神木キュンは斬新すぎです
あと頭に乗っているトサカみたいな物体が気になって眠れませんw
この豆の奇跡に乾杯!!!!!
純潔を守り続けた僕のディスプレイがついによだれまみれになりましたwwwww
再開待ち遠しかった。
こういう趣向も嫌いじゃない。
目をつぶって枝豆のカラの中に指つっこむとエロい感じがしますよ。
トランセルは吹きましたwww
アケビの季節が待ち遠しい……!!
「豆ますか?豆ませんか?」て(笑)
面白かったです。
ローゼンみたの??やだぁ
わたしは肉欲さんの絵だいすきですv
絵が有っても良いと僕は思いますよ。
ホラー話に絵が付いてたら多分キレますが。
一度ウケたからといって二番煎じの絵を何度もつかうのはやめたほうがいいかも
形状は果てしなく違いますが