どういう風に死にたいか?!というのは、誰しも一度は抱く思いではないだろうか。
死に際、散りざま。
それは、間違いなく一回こっきりのセレモニーだ。僕の浅薄な経験の中では、3回死んで4回生き返った!というタフな人と出会ったことはないし、おそらくこれからもない。
で、あるとするならば。たった一度の死に際を、なるべく綺麗に、そしてできるだけ格好よく飾りたい!と願ったとしても、そいつは別段奇異なことじゃない。どれだけ言葉を尽くしても、僕らの人生は僕らだけのものだからだ。
人生の数は無限にある。けれど、世の中に数多あるそれぞれの人生、その中にどれ一つとして同じものはない。それは『脚本・俺、監督・俺、主演は、満を持して、俺!』のロードムービーなのである。
だからこそ、やはりエンドマークは綺麗に打ちたい。
しかし、いくらそんな風に願っても、人生なんていつもままならない。映画にしてもそうだけれど、製作過程の全てが順調に進むわけではないし、已むにやまれぬ事情から映画の公開が断念されることもある。人生、というものを映画に喩えるとするならば、世にある星屑のような人生のほとんどは、公開されることなくひっそりと場末に朽ちていくのではあるまいか。
だから、やっぱり僕たちの人生は、映画だなんて壮大なものじゃない。せいぜい、ホームビデオかそこらのものである。その中ではノイズも入るし、手ブレもある。尺が合わずに中途半端なタイミングで次のテープに移ることもザラで、時たま録画のスイッチを押し忘れることだってあるんじゃないか。
それでも、最後は綺麗に飾りたい!不思議なことに、全般的に物事というものは、終わりがキチッと締まっていれば体裁を取り繕えるものだ。
逆に言えば、始まりがどれだけエキサイティングな作品であっても、締まりが絶望的に悪かった場合、あれほど輝かしかったはず物語の始まりであっても、ひどくドス黒く僕らの瞳に写ってしまう。何の話なのだろうか?僕は多くは語らない。ただ、「浦沢直樹……」と呟くだけに止めておく。俺は、多くは、語らない。
死に方。僕なんてのは典型的な凡夫だから、ハッキリ言って人生を綺麗に幕引きできるかすら怪しい。
しかし、それでも。もし、自分の生の去り際を選べるのであれば。身の丈を知っている僕は、多くは望まない。ただ、そのちっぽけな僕の人生の中で、せめて……せめてテロリストとかエイリアンなどから世界を守って華々しく散りたい。僕なんかは、ホント、そんなちっぽけな感じで。
たとえば地球に宇宙人が来襲した、と仮定して。それはいわゆる「あるある!」な状況でしょ。そこにあって極度の酒浸りな僕、日がな一日を角打ちで酒飲んで過ごしている僕が、
「昔は俺も空軍で活躍しててだなぁ!」
「はいはいワロス」
みたいに冷遇されている僕がだよ、宇宙人の襲来に際して、猛然と立ち上がる。激しい宇宙人の攻撃に、もう為す術がない!弱点が分かったけど、もう弾がない!どーすんの?!どーすんの地球!みたいな状況、すると肉欲が
「任せろと言っただろう」
とシャウトし戦闘機にライド・オン。宇宙船の開いた砲口に向けて肉欲はミサイルを撃ち込もうとする!が、発射装置の故障で肉欲機からミサイルが発射できない。皆は肉欲に引き返すように説得するが、家族の将来を憂いた肉欲はミサイルを抱いたまま砲口に体当たりし、ついに円盤は全滅し異星人は撃退される。そして皆はこう言うんだ。『オー、カミカゼ……』。
「それって、インデペンデンス・デ」
おっと、それ以上は喋るなよ。それが気に食わないなら、こう言い換えてもいい。
たとえば降りしきる雨の中。レイプされた彼女の下にダッシュで駆けつけた僕は、泣きじゃくる彼女をそっと抱きしめる。そんなお前でもいい、お前は汚れてなんかいない!燃えるような愛をはぐくむ二人、僕と君とは永遠に……と誓ったのも束の間、末期ガンに犯されつつ、ガッシ、ボカ!ギャッ、グッワ!とかありながら、唐突に彼女は子供を身ごもり、そして僕は訳もなく死ぬ。それは涙が止まらない、感動の、スイーツ……。
「それって、恋ぞ」
正論は、もううんざりなんだ。あんたのその言の葉で、誰かを幸せにできるのかい?そうじゃないなら、黙って僕の話を聞いて欲しい。
今挙げた例は2つしかないけれど、その中でも共通している部分はある。それは、華々しく散る直前までが泥臭い生き方であればあるほど、散り際は一層輝く、ということだ。
あるいはそれは、昼間には花火が決して輝かないことと類似しているかもしれない。日本の誇る職人芸、花火は、いくらその造形が完璧であっても、その焔は絶対に夜空にしか映えない。太陽の下で咲き誇る花火というのは想像しがたいし、直前までの闇が深ければ深いほど、華の光は一層輝きを増すのである。
そうであれば。散り際を煌びやかに飾りたいのであれば、むしろ普段の人生が満ち足りたものであるほど不利なのではなかろうか。
たとえば僕なんかは、死ぬ最後のその時は、ダンプカーから野良猫をかばって死にたい!と本気で願っているのだけれど、その際に僕が日本経済に必要欠くべからざる人物であったとしたら。
「あんな薄汚い猫のために……」
という声はこれ、あるかもしれない。何せ高度に発達した、極めて利己的な日本経済社会である。そこにあって、経済の中枢を担う人物が猫を守るために死んだとあっては、『犬死にだよ』と揶揄されてしまうことだろう。いや、それは猫死にか……?ノン、そんなことはどうでもいいんだ!
けれど、その時に例えば僕がホームレスであったとしたならば。寒風吹きすさぶ新宿西口の路上で、昼間からカップ酒『鬼ころし』をガブガブと飲み干す、そいつの名は、そう肉欲!いわゆる社会のゴミである。落ちている食料は、30時間ルールで拾うくらいの逸材だ。
そんな家なき僕が、最後の瞬間に路上を這うカタツムリを守りながらフォルクスワーゲンの前に散っていったとすれば?したとすればそれは!?
「いきなりあのホームレスが飛び出してきて。過失割合でいえば、まあ100-0でしょうね」
警察「被害者の戸籍も見当たらないし、とりあえず災難だった、ということで」
敗訴です。無縁仏に僕は眠る。スリープ(棺)。
そうじゃないんだ。生きているか死んでいるか分からないような人生を送っていた中年(=肉欲)が、アスファルトの上で必死に生きていたカタツムリを守って死んだ。その姿、それこそが路上に咲く花火なのではないか?それまでの人生が底辺だったからこそ、カタツムリを尊んだ僕の行為の背景は、人々の想像の中で無限の広がりを見せるのである。それはあたかも、夜空を彩る10尺玉のように。
「あいつ、何だかんだで優しかったよな……」
きっとそれは、ヤンキーが束の間に見せた優しさが過剰評価される現象と似たものがあるように思われる。普段の素行が悪ければ悪いほど、ふとした時の慈愛がひどく眩く見える、あの光景。善く生きるな、というわけではない。ただ、人の心は、尺度は、いつも相対的でしかいられないのだ。悪い人たちが善行をした時、それは善人が善行をした時に比べて、激烈に美しく見えてしまうのである。
なので、僕はなるべく薄汚く生きていこうと思う。そうすることによって僕の散り際が輝くんなら、マジで儲けもんじゃね。
楽して、汚いこととかたくさんして、でも最後に、地を這うオケラを、爆走する一輪車から守って死ねば全部チャラ!肉欲±ωレニかωと〃ぅUちゃった……とかなるんだったら、べらぼうにサイコーじゃんか。
つーことでここからの記述は?!そんなマインドを遵守しながら送った、薄汚い今日の僕の生き様です。
本日は已むにやまれぬ事情から、昼飯を食べる時間が満足になく、結果としてコンビニでおにぎりと味噌汁を買うに止まった。もちろん僕の選択肢は、味噌汁をすすりながら握り飯を食べるという一択。
コンビニの電気ポットで味噌汁にお湯を入れて、それをむき出しのまま片手にムンズと掴み、横断歩道に佇む僕。どうしてあの人味噌汁を片手に……?バカなの……?と言った趣旨の視線が惜しげもなく僕に突き刺さるのを感じる。いいさ、笑わば笑え。だが、俺を笑ったお前らの死に際が、必ずしも明るいとは思うなよ!?
なんて思っていたら、横断歩道の向かい側から歩いてきたのは紛れもなく親しい友人。いや、親しいと思っていたのは僕だけなのか?分からない、それは分からないけれど、とにかく彼らが僕を抜きで昼飯を食べに行こうとしていたことだけは確からしい。片や僕は、味噌汁を片手に、横断歩道を、こうね。
友「えっ、お前何してんの?」
「やっぱ赤出汁がよかったかなー」
笑わば笑え。高らかに笑えばいい。
アンタらが今笑ってる分、僕の死に際は、散りざまは、一層雅に輝くのだから。
たぶん、きっと。
おそらく、僕は。
そう信じないと生きていけない、生きていてはいけないのである。
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コンビニでインスタント味噌汁を調理なんて、全然やりますよ^^
まあ、友達は私をおいて別に、こう...ね
なんか悲しい終わりだね。。
ふっとばされる肉欲
そしてふまれるかたつむり
この言葉に強く惹かれました。
人の感情を逆手に考えたステキな案ですね。
多くどころか全てを語っています(--;
『モン..-』『2....年』
ちったぁストーリー考えてから書き出せ!
…と。
自分も華麗に散っていきたい。
4尺玉が最大だったような
多分、そしたら皆死に方ダサくても認めてくれると思うし。
(棺)て。
うまいなぁー…
人を巻き込んだ犯罪もあったやも。
それを鑑みた場合、肉さんあなたは美しい。
なんでも中途半端な自分の胸にちょっと来ました。
多分だけど肉さんは笑って死ねると思うよ・・・?
日本語でお願いします><
サプリ(TV)に神木キュンがでてる。
どうしても卑猥な目でしか見れなくなってきた。てか写真でしか見たことないけど、肉欲さんと似てると思った。
我が生涯に一片の悔いなし
これしか考えられん。
激しく同意せざるを得ないですorz