僕も生きている人間なので、一日を過ごしていれば何度か尿意を催すことがあります。そういう時は便所に赴き、ドアを開けてから閉め、一人暮らしなので鍵は掛けず、ベルトをリリースしズボンを脱ぎ、その後便座に座ります。
そう、僕は小便の時であっても便座に座る。これはいわゆる『座りション』というやつです。僕はこの座りションを半ば無意識的に行っている自分がいることに本日ようやく気付き、しばし愕然とした。
俺はいつからこんな人間になってしまったのだろうか――
男の小便スタイルといえば、古来からスタンディング・アンド・ショット、いわゆる『立ちションスタイル』が隆盛の極みなのですが、その勢力図がここ最近どうにもおかしい。いつの頃からか、そういう僕らの立ちションライフなムーブメントに対し、女性の側から
【男の立ちションは尿が飛沫してトイレが無駄に汚れる!】
という怨嗟の声が上がり、その声は徐々に『だから男もマンカー(マンコを具備した人。通俗的には、女性の意)と同じく座りションを励行すべきだ』という向きに変わっていきました。
僕もその意見を最初に見た時は「フフン」と極めて冷淡な態度を装い、また酒に酔った時などはそこらにいる女性をとっ捕まえて
「アンタらは僕らの憩いの時間であるところのトイレタイムにまで口を出すのかよっ……!もうやめろよっ……!その女尊男卑な考え方っ……!」
と、福本信行の口調で罵詈雑言を投げかけ、そのあまりの荒ぶりっぷり故か当時は『四谷のモビー・ディック(白鯨)』の名を欲しいままにしていたものです。
それがどうですか?気付いた時には水が高きから低きに流れるがごとく、極めて自然に僕は『座りション』を実行している昨今です。四谷のモビーディックはいつの間にかエイハブ船長に討ち取られ、今ではしがない水槽の中のメダカってわけさ。
こんな僕の態度は、『女性のことを慮る』という視点からすれば一定の評価を受けてもいいかもしれない。僕も一人暮らしを始めてから長いけれど、確かに飛沫した尿からはあの独特のアンモニア臭が芳しく香り立ち、僕らの食欲を逆インスパイヤしてくれる。それがほんの少し、小便をする時に便座に腰をかけるだけで劇的に軽減するのであれば、やはり座りションには合理性があると言わざるを得ないでしょう。
けれど、男らしさ的にどうなんだ?!それは。座って小便をするようなマン(Man)を排出するために、先祖たちはアメリカと戦ったわけじゃないはずだ。僕たちがひとたび男と生まれたからには、小便をする時は確実に『引かぬ、媚ぬ、便座に座らぬ』という聖帝サウザーのような姿勢でなくてはならないだろう。
あるいは、もし野外で小便をしなければならないくらいの危難に見舞われた場合。小便がしたい、でもそこらにトイレがない!というこの状況にあって、僕は友達に『おい、立ちションしようぜ!』と声をかける。それは、マナー的には害悪なのだけれど、我々ボーイズの青春史的には明確に正しい。そしてその時に
「ああ、俺は座りション派だから」
と宣言しながら路地裏にて友人がケツをペロンと出してしゃがみ込みでもしたら、僕は確実にそいつをボコボコにする自信がある。いや、世界が3回破滅したとしても、僕は目の前のそいつをボコボコにしなければならないのである。女の人にはよく分からないかもしれない、でもそれが男らしさってことなのさ。
「立ちションすることが男らしさとか思ってる男の人って……」
そういう声もあるだろう。だがちょっと待って欲しい。君たちは果たして一度でも立ちションをしたことがあるのか?野外にて腰に手を当て、パンツを下ろし、尿管をガイア(地球)に差し向け、思うさまに尿を夢放出。そんなアガルタのような時間を一度でも経験したことがあるのでしょうか。え?あるの?zipでくれ。
便宜上、99.89%以上の女性はそんなような経験に未だ恵まれていないとしてだな。率直に言わせていただければ、立ちションというのは実に軽妙かつ愉悦な行為なのです。それはある意味でアートだ。その昔、『裸の銃(ガン)を持つ男』という映画があったけれど、立ちションをする男たちは比喩表現などではなく各々の股間に植わった肉銃(ショック・ガン)を手に戦いに挑んでいるのである。
立ちションに挑む男たちの心境は、いつでもタフだ。失敗=死、という方程式は何も実物の銃の取り扱いの場合にのみ適用されるわけではなく、裸の銃(ガン)の取り扱いに関してもうっかりミスをカマしてしまうと僕らはフェータルな傷を負う。それは心の傷であり、死とは社会的な死のことだ。酔っ払った勢いでフルに装填された銃弾(≒尿)をフルオートで己のズボン、あるいは両の手に引っ掛け、結果として社会的に抹殺されてしまった人物を僕は多く知っている。少なくとも2人くらいは知っている。
だからそれくらい危険な行為なのだ、立ちションという行為は。
「そんな……そんな危ないことなら、最初からしなければいいじゃない!バカよ!あなたたちみんな……バカよ……」
ああ、俺たちは確かにバカだ。でもジェニファー、俺たちはこういう生き方しかできないんだよ。モグラが地上で生活できるか?マグロが回遊を止めて生きていけるか?理想は確かに輝かしく見える、けど……俺たちが生きていけるのはこの薄汚い現実の世界だけなんだよ。だから俺たちは立って放尿する。何度でも、何度命を危険に晒しても、だ。
――というような詐術的言辞を、本日座りションをしている30秒くらいの間にでっち上げた次第です。立ちションの気持ちよさ、心地よさは確かだとして、僕は一体いつから座りションに傾倒するようになったのだろうか?
それはあるいは過去の女性経験に起因しているのかもしれない。僕は男三人兄弟というバリバリの体育会系環境で育ったのだけれど、そんな男塾のような生育状況にあっては『女心の機微』など知る術もなくて。
そんな僕でもいっぱしの大学生になれば女性と懇意にするようになった。初めて女性とちゃんとしたお付き合いをするようになったのも、大学に入ってからのことだった。それまで女性と交流する機会に乏しかった僕は、クロスレンジで接する女心のひとつひとつが非常にもの珍しく思えたように記憶している。
付き合いも浅いある日のこと。19歳というのは性的に猿になってしまうピークでもあるのだけれど、僕もご他聞に漏れず『出身地:猿の惑星』のようなマインドになっており、その帰結として毎晩のごとく激しい運動、詳しくは語りませんが『交』とか『尾』とかいう漢字で組成された行為に耽っておったんだわ。僕のことはさて置き、その相手の乱れっぷりはまさに『次回、括目して待て!』とかいうコピーが付きそうなほどにサンバのリズムを刻んでおり、あえぎ声たるやアラスカの最果てにまで届きそうなほどの絶叫。この場を借りてお詫び申し上げたいのですが、当時僕の隣に住んでいた方、マジでゴメン。
そんな激しい姿態を晒す女性だなんてAVの向こう側にしか知らなかった僕はまさに蒙の開かれたような思いになり、興奮し、『あら、いいですね』の波が止まらなくなってしまい、ある晩、Sから始まりEで繋いでXで閉じるとある行為が終わった時、彼女に対して何の気なしにこんなことを囁いた。
「お前ってとんだアバズレだよな!」
信じて欲しい!僕の言葉に悪意はなかった。ただ、激しく乱れる彼女に対し、一体どんな言葉をかけていいのか分からなかっただけなんだ!そして僕のボキャブラリーから飛び出した魔言こそが、そうアバズレ。ごめんなさい、こんな時にどんな顔をしていいかわからないの……ってやつです。みんななら分かるだろ?分かってくれるだろ?
まあ結果として彼女が号泣してだね。もうホント『おっ、アリクイくらいなら軽く撲殺できそうだね!』ってくらいのパンチを放つわ放つわ。僕としましても、何が起きているのか分からないままにペニスのペニス部分をブラブラと躍らせながら殴られるがままよ。あの当時の僕なら確実にこう言ったと思う。「ガンジーのことを見習うな」。
ひとしきりボコボコにされた後。僕はパンツを履くことも許されないまま彼女から大説教を受けた。それはもう遠い遠い過去の話だし、説教の内容も随分長いものだったので詳細は省くけれど、かいつまんでダイジェストをお送りすると
『あんたには前々からデリカシーがないと思っていた』
『女心が分かっていない』
『男らしさと無礼は違う』
『ウンコが臭い』
などといった感じ。ちょ……待てよ!ウンコのことは悪く言ってもいいが、俺のことを悪く言うのはよしてくれ!違う、逆だ!いや、そんなことはどっちでもいい。確かに僕のウンコは臭い。
とにかく、その一件を経て以来彼女は目覚めた。僕の精神構造改革に着手し始めたのである。『女には優しく!』このプロパガンダの下に、僕の長州男児的なマインドは矯正の一途を辿る。歩く時は車道側を歩け、歩調は合わせろ、ブーツを履いている時は座敷の店を選ぶな、生理は二日目がキツイ、だから話しかけるな、でも放置もするな、手マンは優しくしろ、そして、座りションをしろ。
そう、すっかり忘れていたけれど、僕の座りション童貞はこの時の彼女に奪われた。洪水のように押し寄せるフェミニズム教育の中、僕は大した痛痒もなく『座りションはマジ至高』という価値観を植えつけられていたのである。恐るべしは情報統制社会よ。19歳という若い感性にあって、『これはこういうものなのだ!』と強く言われてしまえば、生半に抗う術はない。
かくして現在まで座りションのカルマから抜け出せない僕がここにいる。それで何か困ることがあるのか?と聞かれれば、それは確実に「ノー」と答えるしかないのだけれど、同時になぜだか寂しい気持ちになってしまうのも確かなのだ。
無邪気な心で彼女に対し『アバズレ』と囁いてしまったあの夜。その一言が僕の小便ライフを激変させてしまった。僕は最近、自宅で放尿する際、いつでも「俺はこれでいいのか?座って小便するような男に、あの虹が掴めるのか」と問いかけるのだけれど、目の前に鎮座しているまっ白い壁は、いつもいつまでも白いままでしかなくて。
もう、僕の家の便座が上がることは、ない。
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女としてはU字便座も意味わかんない!!座ったときつきそうでやじゃないですか??
お茶吹いたwwwwww
もう実家暮らしだというのにクセが抜けなくてマジこまるっす
座ってするとかマジ最高な男です!!!
実家はお父さんしか男がいないんで
便座があがってると
すんごい勢いで怒られてます笑
いい加減自重しろw
そんな僕も座りション派。
どうでもいいですが、付き合った女性には必ずと言っていいほど、
お風呂場でおしっこしてくれないかと懇願します。
もちろん立ちションで。
真っ直ぐ前に飛んでいきませんでした。パンツがびしょびしょになったのでもう二度としません。
さらにリリース中にくしゃみして着点を大きく外してバイオハザードを巻起こした俺が通りますよ。
…一昨日の話ですorz
半同棲してた頃、便座がいつも下がってて“あたしの為に毎回下げてくれてるww超優しいww”って・・・
おっさんともなるとスタンディングポジションは常にキープ。
でもトイレ掃除役もキープ。
…いつでも女性(嫁)は強いもんでございます。
じゃあどうせーっちゅうねん!
でもすげーわかります。その不思議な女心。
私の彼氏には理解できないようですが。
昔オリンピックが開かれた会場に(東京だったっけな)
どうなんだろう…
さて。前に友人とウンk後のティッシュでのアスホール洗浄法について熱い談義をかましたことがあります。前派、後ろ派、立ち前派、立ち後ろ派etcetc。。。
人と普段意識を共有していない内容って詳しく聞いてみると十人十色で非常に面白かったりしますよね。
で吹いたwwww
京浜東北で吹いて、前にいたおばあちゃんに睨まれました。
それを告白する勇気を僕にもくださいorz
自分もある人に矯正されて今では座りションです。
私はむしろ燃え(萌え)ましたがね
肉さんって脳みそ何に使ってるんだろうって。
ゴミ捨て用のカゴのそばではやめてくれ…!!!!
その土をいつも踏んでいたけど…まさか…今までも。
あんたすげぇよ・・・