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「母さん!初潮がきたわ!」
「おやおや」
赤味噌の匂いが立ち込める台所、夕餉の支度。
マチ子の告白にしかし、母は冷淡だった。
「母さん……私の初潮が嬉しくないっての……?!」
「これであんたも女になったってことだからねえ」
ギラリ、とした目つきと共に、柳刃包丁を握り締める母、マチエ。
台所一帯にツン、としたメスの香りが立ち込めた――。
「あたしが所帯を持ってから……」
色のない目で柳刃包丁を携えたまま、問わず語りにマチエは言葉を継ぐ。その佇まいはおよそ昨日までの母のそれとは異なり、だからマチ子は肉親であるはずの目の前の人物に身震いすら覚えた。
「父さん、いえ、幸三さんが私を求めたことはなかったわ。一度として、そう。一度としてね」
求める?それは一体どういうことなのかしら、などと思うほどマチ子は生娘ではなかった。マチ子は一人っ子だった。弟、あるいは妹が産まれないその理由。それは、何となく理解していた。
「あの人は言ったわ。『君は今日から私の妻だ。妻になるということは、家族になるということだろう。そして、家族と関係を持てば、それは近親相姦だ。それが何を意味するかは、君にも分かるだろう』ってね。私が妻になった日に、お父さんは女である私の全てを否定したのよ」
穏やかな語気とは裏腹に、母の目にはおどろおどろしい恨みの色が深まる。マチ子は思った。平凡な幸せというものは、案外目に見えない幾千もの我慢の上に成り立っているのかもしれない――と。
「でも!それでも、父さんはいい父さんだったじゃない!母さんにしてみれば、それはもしかしたら『夫』としての父さんはダメだったかもしれないけれど、でも、あたしからすれば最高の両親なんだよ!それなのに、どうしてそんなことを言うの!?」
「いい、マチ子。私はね、母親である前に、女なんだよ。それはアンタからすれば良き母、良き妻であったかもしれないけれど、それだけじゃ満たされないものだってあるんだ。私は母にはなったけれど、女を捨てたわけじゃない。男の体に包まれたいし、にゃんにゃんだってしたいんだ。それを、それなのにあの人は……」
プルプルと震えながら、マチエは赤味噌の汁をグイと呷った。塩分は平気なのかしら……と思ったマチ子だったが、マチエのただならぬ迫力はとてもマチ子にその言葉を発させない。
「でも、でも!それと私が初潮を迎えたこととには、何の関係もないじゃない!」
「さて、それはどうかしらね。いい?初潮を迎えたメスは成熟した女になると言っても過言ではないわ。そして幸三さん……あなたの父親は」
そこでマチエはふう、と一息をつく。そしてたっぷりと間を取った後、台所の窓から差し込む夕日の紅を瞳にたたえながら、静かに言葉を紡いだ。
「ガチロリなのよ」
刹那、陶器の割れる音が二人の間を包む。マチ子の握っていたチョココロネが床に落ちた音だった。冷たいチョコレイトが好きなマチ子は、行き着けのパン屋でいつもたっぷりと凍ったチョココロネを買って食べる。その冷凍されていたチョココロネは、己が固さと床の固さ、さらに高みから落とされた衝撃で粉々に――砕け散った。
仮にマチ子の握っていたものがアナルだったら、チョココロネとアナルを交換しておけば、マチ子の好物は砕けることはなかったのだろう。けれど、全てが過ぎてしまった今となっては、そのようなことを言っても全ては空しく響く。
おそらく、砕けたのはチョココロネだけではなく、母と子、いやむしろ――マチ子とマチエ、一個一個の人間同士の関係が、途方もないほどに遠くなったことを象徴していたのかもしれない。
「ただいまー」
あまりにも薄ら寒くなってしまった台所の雰囲気に、幸三の鷹揚な声が無遠慮に響き渡った。二人の鼓膜は幸三の声に揺れるのではあるが、それが聴覚として脳には伝わらない。かつて、母と子だった女と女。避けられない決戦が、いま――。
「いやー、僕は今日パーマをかけましたよ。どう、マチ子?お父さんのパーマは」
そんなことを言いながら、幸三はおもむろに己の陰毛を晒し出した。たしかにそこにはくるりと綺麗なウェーブを描いた陰毛が存在したのだが、しかしそれでは、父の陰毛はそもそもパーミングしていなかったのだろうか?突然の混乱がマチ子を襲う。
「あなたお願い!手まんをしておくんなまし!」
それは突然の行動だった。あるいは、人生における年輪の深さが、マチエをしてマチ子の機先を制させたのかもしれない。とにかく、唖然とするマチ子の脇を風のように走り抜けたマチエは、夫の手を掴むと嵐のような手まんを己の膣に懇願した。疾風――まさにその言葉がふさわしいほどに。
「マチエ!やめないか!娘が見ているじゃないか!」
「いいえやめないわ!娘を、マチ子をダシにするのはやめてください!あなたは、マチ子がいなくたって手まんはなさらないでしょう!?」
「そうよ父さん!私たちは全てのことをお見通しなのよ!」
二人のメスとメスが、思いの限りを言葉に託す。その声はあまりのも大きすぎたものだから、その後に台所を包んだ静寂は、むしろ耳が痛くなるほどだった。
「しかしそんなことを言われても……やはり家族を抱くことはできない……」
「じゃあ、あたしだったら?!」
言いながら、マチ子はショーツを破り捨てた。突如あらわになる、マチ子の幼い蜜壺。だらしなく幸三の股間にぶら下がっていた幸三それ自身がにわかに活気付いていく。遠くから祭囃子の音が聞こえてきた。
「マチ子!やめなさい!ところで今日はずいぶん暑いねマチ子。胸とか、存外窮屈なんではないのかい」
幸三は叫びながらマチ子のブラのホックを外した。あまりにも巧みなロジックの前に、マチ子はなすすべもなくブラを外されていく。この人が、初めての男になるのかしら――千々に乱れていく思考の中で、マチ子はそんなことを思った。
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限界。これで30分か……。まあがんばったでしょ!
もう一回だけやります!
1〜10のコメントの間の、適当な5個選んで日記にします。
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次
疑似餌
カップル喫茶
死亡フラグ
MMR
朝食ヨーグルト
で頑張ってみます。
目標は23:00で!
あの5つでこんな文章が作れる肉欲さんはすごいですね。想像力と文才力に尊敬です。
園児「え〜〜〜」
なかなか興味津々です( ̄m ̄〃)
また覗きにきますね♪