「あんたS?どっちかと言えばMっぽいよねー」
とかなんとか、SかMかの二元論で全てを語ろうとする輩が蔓延している気がしますが、あれは一体どういう了見なんだい?SとM、分類としては有益かもしれないけれど、それでも人がそんな単純に二極化するのだろうか?
ハッキリ言ってSMというのは奥が深すぎて、僕のような若輩からしてみたら「とにかくもう深い、深すぎる」ということしか分からない世界だ。そんなもんだから、それ(=SM)を生業としている人に対しては、ある意味で尊敬すらしている。僕が有さない知識、知見を具備している彼、ないし彼女たち。率直に格好いい。
この春、僕は生まれて初めてSMショウなるものを目の当たりにした。時に新宿、深夜2時。
寸前までテキーラをザバザバと痛飲していた僕は、ほぼ人間としての完成品となり店の床で泥となって混濁していた。夢の中で始発の時間を逆算しつつ、このまま朝まで寝ていよう……なんて愚考していた、その瞬間。
「ギャヒーーー!!」
店内に轟く大音声。「すわ!米英の仕業か?!」と思って飛び起きた僕の目の前には、全身を赤い荒縄で縛られた女性が立ち尽くしていた。そしてその脇には、「いかにも」な感じの鞭を持った女王がスタンディング&プレイ。左手にはおあつらえ向きにロウソクが握られていた。
AVの向こうでしか繰り広げられていなかった光景が、今目の前に。僕は先ほどまでの泥酔を霧と散らし、目をかっ開いて眼前の光景に食いつく。刹那、ポタリと真っ赤な蝋がM女の背中にダイビング&スパークした。むせかえるような熱気が鼻の先まで漂ってきそうな状況。ど、どうなるんだ?!ねえ、どうなっちゃうの!?歌舞伎町の夜の下、僕は少年の心になった。
「ギャヒーーー!!」
先ほどと全く同じタイプの悲鳴を上げて、悶えるM女。その周りに集まったおよそ数十の観客は、一言も声を発さずにその模様を眺めている。M女の絶叫に満足したのか、ニヤリ、と不敵に笑った女王は、ピシリと強めに鞭を振るう。
蝋⇒鞭
この垂涎のコンビネーションよ。サディストとマゾヒスト、眼前で展開される光景は、思春期のころのビデオ学習(AV)で予習は万全だ!そういえば幼い頃にスナイパーというSM雑誌を見て勃起してたこともあったっけな。あの頃はまだエロ本にテープなんて貼られてない時代でさ……なんて過去を回顧している暇はない。鞭で叩かれた女は、一体どんな声を上げるんだ?!それは僕の脳内フラッシュメモリにはインプットされていない未知のゾーン。ビシィッ!再びスパイスの利いた音が響く。さあ、どうなるんだ?!どうなっちゃうの!?僕は藤岡弘探検隊の気持ちになった。
「ギャヒーーー!!」
パン!出た!テンプレートを完璧にトレースしたような悲鳴が、三度轟く。僕は慌てて周囲を見渡すと
「なるほど、そうきたか……」
という風に、うんうんと頷いている客もいた(小林薫似。便宜上、氏を薫と呼ぶ)。

僕はゴクリ、と生唾を飲み込むと、手近にあったウィスキーの水割りをグイと飲み干した。砂のような味がした。
すると今度は女王(否、女王『様』)が洗濯バサミを携えてまたもや不敵な笑みをニヤリ。
「まさかやっちゃうんですか!?女王様やっちゃうの?!」
僕の中の壊れてないな部分が狂乱の叫び声を上げる。M女+洗濯バサミとくれば、導かれる解はオンリー&ワン。これもたゆまぬ事前学習にて予習済みのことである。
しかし、本当にそんなことをしてしまっていいのだろうか?部屋干ししても臭わないのだろうか、などと僕が逡巡している一瞬の隙を突き、女王様の手は閃光と化した。僕が見た時には既に女王様の手の洗濯バサミは煙と消え、だからM女の乳房の首都(≒乳首)に洗濯バサミによる新しい関節が出来上がっていた。さあ、どう出る?乳首を洗濯バサミで挟まれた人間の反応って、どんななんだ!?僕は養老孟司のような目つきで目の前の対象を観察した。
「ギャ、ギャヒーーー!!」
置いた!「ギャ」の部分でM女が一拍置いた!ハラショー!なんて、謎の感慨が僕の胸を包む。見ると薫氏(おそらくジャズバーのマスター)も「うんうん」といった感じで深く首肯していた。やはり僕は、間違っていなかったのである。

いや、やっぱり薫はちょっと黙って!そういうことじゃなくてさあー!ギャ、ギャヒーはいいから!目の前にある未曾有の光景、乳首を洗濯バサミで強烈に挟まれているM女の姿、『ギルガメッシュないと』の世界でしか見たことのなかったその光景が、僕の網膜に強烈なパンチを浴びせかける。その時、間違いなくM女の後ろには後光が差していた。僕は脳内でイジリー岡田に最敬礼した。ありがとう、イジリー!
そのまま粛々とSMショウは進行。最後は全身をタイトに緊縛されたM女が天井から吊るされ、それを女王様が鞭、蝋、洗濯バサミなどを駆使してシバく……等々、二人は三面六臂の大活躍。僕らはただただ嘆息を漏らすばかり、という風情だったけれど、終わった時には惜しみない拍手を贈った。薫氏もニヒルに口角を持ち上げつつ、拍手を贈っていた。SMを通して、皆の心が一つになったのだ。

いいもん、見せてもらったな……半ば酔った頭だったけれど、素直に感動した僕は、ステキなショウを演出してくれたM女役の女性の方に近づき、声を掛けた。もちろん最高の舞台を見せてくれた女優の苦労を労うためだ。
「素晴らしかったです!僕、感動しました」
「な、なんのことですか?」
M女は僕の言葉にはにかみながら俯いたので、ハッとして口をつぐんだ。確かに一瞬
「あんた、さっきまで乳房を露わにして絶叫してたのに、どうして照れてるんだ」
と無粋なことを思ったけれども、よくよく考えたらいくらM女と言えども目の前にいるのは一人の清楚な女性なんだよね。彼女の有するM性は、女王様に対して発現した性癖(あるいはロール・プレイ)なのであって、別段僕に対してMなわけじゃない。だからこそ、一人の人間として尊重しながら接さなければならないんだ。それを証明するかのように、丁度僕の対角線上にいた薫氏は

「肉欲、それはノンやで」
という感じの強い視線を僕に投げかけていた。だからその瞬間に僕は
「ああ、なんて失礼なことを言ってしまったんだ」
と己の無遠慮さを深く恥じた。頭にガーンと強いのを一発もらった気持ちになった。すまん、M子!
・・・
あの日、僕が心に強く感じたことは、彼女たちは身も心もプロだっていうことと、僕みたいなにわかエロ坊主が安易にSMなんて語っちゃいけないってことだ。確かにあの日僕が目の当たりにした行為の表面部分だけを掬い取れば、「女王様に叩かれ、喜び悶えるM女」という部分にしか帰結しないのだけれど、でもそれって単なる現象であってエッセンスではない。あの日、僕の目の前で展開されていた行為はそんなに単純なことじゃなくって、もっと深い意味での愛だったりとか、信頼関係だとか、そういう言外の訴求力が強く存在していたと思う。稚拙な僕の語彙じゃ、上手く表現できないけれど。
だから僕はその日から、安易に『SM二元論』で人間を語ることは控えようと思った。人間には攻撃性や隷属性は存するけれど、だからと言ってそれがサディズムやマゾヒズムとイコールになるわけじゃないよね。
「俺って命令するの好きなんだよね。だからドSなんだよ!ハハ」
つぼ八などで酒を飲んでいたら、一晩に4回は耳にする類のセリフである。命令するのが好き、だから俺はSだぜ!という彼のロジックは、確かに理解できる。
けれどそれって、もしかしたら単純な支配欲でしかないんじゃないの?S(エス、サディズム)って言葉は便宜的で使い勝手のいい言葉だけれど、あんたのキャラクターを表すには適切な記号じゃないと思うんだ。だってあんたの話を聞いてる彼女の顔、とっても退屈そうだったんだもの。きっとあんたの前戯もマンネリで退屈に違いない。なぜだか俺には、そんな気がするぜ!
「俺、ドSだよ!だってこの前、女の『アソコ』にピンクローターを突っ込んで買物に行かせたもの」
先日出席した結婚式の二次会で、新郎の兄は熱弁した。その時(=ピンクローター・ショッピング)の状況はよく分からないけれど、確かに行為の側面だけ耳にすると、新郎の兄はドSであるような印象を受けるし、正直僕のチンポも立った。
けれど、本来的な、あるいは職人気質なSは、そのようにして自分のSっぷりをひけらかすものなのだろうか?ひけらかすにしても、それはあくまで「求められた状況」においてのことだろうし、決して結婚式の二次会などで披露するようなものではないような気がする。事実、新郎の兄の発言により宴席は真夜中よりも静かになった。
「で、でさぁー!やっぱ縛るのとかも好きなわけよ!俺は!」
それでもSMトークをキープ・オンする兄者。一体どのあたりが「やっぱ」なんだよ?!オイ!!と、首を絞めながら聞きたい気持ちになったが、そこはグッと堪えた。儒教精神の強い僕、目上の人は一応尊敬することにしているんだ。
「でもまぁー、そういうプレイっていっつも彼女にヒかれるから長続きしないんだけどねぇー。でもさ、S的には縛ったり恥ずかしいことさせるべきだろ、実際さぁ!」
そうなのだろうか?もちろんそういうプレイの形があってもいいとは思うけれど、縛ったりとか撮ったりするのはあくまでも行為の一態様でしかないだろうし、それがSとしての全てではないだろう。だから、そこにあって『縛る』『撮る』『ピンクローター』なんていうのは本質じゃないし、『すべきこと』とまでは言えないような気がする。
そして、みうらじゅんはこう言った。
『結局、僕のSはサドの意味ではなく、M子に対するサービスのS。マゾが期待することを先読みしてプレイを施しているだけ。僕はノーマルなS、アブノーマルなMに調教を受けているに過ぎない』
『僕はこんなSMのパターンをどこで学んできたのでだろうか?かつて見た映画や、小説のストーリーを疑似体験してるに過ぎないんじゃないか?僕の”御主人様”は決してオリジナルではない。だからM子とセックスした後の演技がよく分からないのだ』
(みうらじゅん著 『愛にこんがらがって』より抜粋)
『マゾが期待することを先読みしてプレイ』
『映画や、小説のストーリーを疑似体験』
後付けのS、インプリンティングされてしまったサディズム。それは、世に蔓延る『似非S』の実態なのではないだろうか?だから、僕は思う。兄者の語るサディズム武勇伝は、このあたりに該当しているに過ぎないのではないかと。言い換えればそれは仮初のSであり、欺瞞に満ちたSなんだよね。なぜなら、兄者の付き合い(ないしプレイ)が
『彼女に否定され、関係が長続きしなかった』
という事実が存在するのだから。本来的に正しいS(というのが存在するのかは分からないけど……)ならば、人間性や性格の不一致を理由に別れを告げられることはあっても、プレイ内容を理由に暇を告げられることはないのではないだろうか?僕にはそんな気がしてならない。
一方的に欲望をぶつけるような行為、それは『サド』なんてものではなく、ただの傲慢とか、あるいは陵辱であるように思う。パートナーの了承が無い以上、自己満足的にS的なプレイをすることはただの『暴力』でしかないだろうし、だからこそ『縛りたい』『撮りたい』のであれば、まずその手のお店で金銭をペイして行うべきものだと思われる。
そこにあってパートナーに無承諾で『縛る』『叩く』などのプレイをカマせば、彼女が逃げていくのはある意味で道理なんじゃないのかな。
「そこをねじ伏せるのがいいんじゃない!調教だよ、調教」
そういうことなのか?SMって。僕にはどうも違う気がしてならない。いや、もちろんお互いが満足してたらいいんだけどね。
でも、もしかしたら
「本当は嫌なんだけど……彼のことを考えると拒絶できないの」
という人もいるかもしれないじゃない。そうやって鬱憤が溜まり、結果として逃げられた後では、全部が手遅れなんだぜ。どうするよ?後からいきなり告訴されたら。そういう事例、最近にもあったよね。
答のある類の話ではないし、もしかすると人類は、一生SMについて懊悩して生きていかねばならないのかもしれない。
それでも、と僕は思う。願う。あるいは、祈る。有能な科学者たちが、早いところ各人のS度M度を測るスカウターのようなものを開発してくれれば、と。目の辺りに装置を装着すれば、ピピピ……と相手のSっ気・Mっ気が測定できるってやつね。発売されたら僕は絶対に買うし、ブログで宣伝もするよ。だからどうだろう、SONYあたりが頑張ってみれば。S度が強すぎてスカウターが爆発しても「そうか、ソニータイマーか」って納得してあげるからさ。
相手がSなのかMなのかが、数字として分かれば。
僕らがムダに悲しい涙を流すことなんて、金輪際味わわなくても済むんじゃないのかな……そんな風に思ってしまう僕は、やっぱりまだまだ情緒的に過ぎるのかもしれない。
でも、やっぱり僕はどこかで信じる。
「ピピピ……えっ、宮崎あおいのS度は530000です!?」
とってもMっぽくて儚げに見えたあの子が、不意に見せるギャップ。僕はそれだけで、生きていける気がするんだ。
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肉欲様にいじめて欲しいぉ。
考えが改まりました
明日のお天気を語るように
「アタシ、普段はSナンだけと、レシカの前だと、Mナンだよねー。」
と言ったあいつは愛に迷っているように見えた。
そして、私を見たあの目は確かに発情していた。
私はノーマルですが相手が望めばソフトなら…
社会生活不適合なのはやはりSよりMなのでしょうか?
任せるより託される方が、確かに、重い。
愛がなきゃできなねぇよ…あまりにも頭にきたので爪楊枝を足に突き刺してやりました。
(´ー`)
(・∀・)
さすが肉欲クオリティ
(^ω^)
でもすごく気持ちいいです。ギャヒーーー!!
プレイは、あくまでも通常のセクロスの延長線上のものに過ぎなくて、SもMもお互いを知り尽くし、相手を喜ばせるために奉仕する。
この人なしでは生きられないと思った時こそ、本当に支配される・支配することができた時なのかも。
縛りや鞭なんかはやる気があればすぐ覚えられるけど、習得したからってSとは呼べないですよね。
どSって言葉自分に使うなんて、エセSと言ってるようなもんです。
反吐がでるぜぃ
いやぁ奥が深く入り組んでますね。SM。
そんな趣味は…ナイ。確かに気が強くて、ワガママ。言いたい事をズバズバ言っちゃう女王様タイプなんだケド。
惚れた殿方になら、何をされても構わない…むしろ『メチャクチャに…シテイ』的な♀なのです。
こんな私はSとMどっちに属すのでしょう[
エッチの時は、たっぷり時間をかけて全身リップとか…フェラとか。好きなんですょね。あと合体中、喉元を噛みつくみたいにキスされると目眩がする程感じますねぇ。
隠れM?
あるマンガで「いやね、MなのにSのフリをする奴等がいるんですよ」
って言ってた。絶対Hの時と普段生活してる時のSM差はある!と思います。
でもギャップはありゃあるだけいいよね
それにしても、最近S?M?って質問、流行ってますねー。個人的には、SMは表裏一体。
そもそもドSと自称する方は攻撃的で傲慢な性格の持ち主が多く、断じて性癖云々の問題とは疎遠だと思います。
この場合肉さんの仰るように支配欲や自分の意思を何としてでも押し通そうという幼稚な行為を誤魔化すためにSと便宜的に用いているようにしか思えません。
逆にドMだと称する方は他力本願でただの無味乾燥なマグロでしかないかと。
大抵の人の考えるSMは自分の未熟な部分を隠す為の道具でしかないような気がします。
ちょっと極論過ぎですけど、飲み会とかでSかMかと不毛なパワーゲームをやってる連中の大半はこれに当てはまるんじゃないでしょうか。
誰がどの色持ってるかなんて分からない。
友人のガキ大将的な奴も久々に会ったらペニバンつけてましたし
極論を言えば、みんなSでありMである。
片方に寄るのは性癖というか自分なりの思惑や欲求によってだと思う。どっちにしろ、頭で考える行為でなく本能で《肉欲》を持たない限りない自分がどっちに片寄っているかなんて分からないものですよね。長文スマソ。
SMについて熱く語れる肉さんに愛のスコール!
SMって信頼関係無しにはなりたたないのですよね。
つか最近の人気軽にSだのMだの言い過ぎ。
どちらかと言えば、S(ショコラ・トルテ)だなと。
SMは深いね、深いし愛も深いね、
などと友人と電話したばかり。
ナカーマ(・∀・)
私の知人でも肉欲さんと同じような事を言っていた人がいて、
彼曰く、通常は、男子であれば6〜7割のS要素を、3〜4割の
M要素をもっていて、女子はその逆らしいです。
で、どれだけ訓練しても2割程度は、どちらかの要素が
必ず残るものだと言っていましたよ。
棒の兄貴!
『ハプバーオフ』やりましょうよ!来たれ変態!
SM。SとMは表裏一体では?をテーマに友人と酒を酌み交わした矢先にこれ読みました。
アツすぎっすよ。肉さんと酒酌み交わしたくなりました。
場の盛り上がりだけのために「S?それともM?」みたいな話はしますわー
ホンモノに触れると目からウロコがバスバス落ちますよ〜
似非S・Mに対して「それってちげーぞオイ」と思ったり、
ノーマル人の十把一絡げ感覚に「そんなじもんじゃねえぞ」と思ったり。
読み終えるのに4時間弱かかってしまいました
深く考え出すと混乱してきました
なんかめんどくせぇ
SとかMとか、なんかめんどくせぇ・・・
と、思えてきました
もうどっちがどうでもいいです