「先輩、お久しぶりですー」
( ^ω^)「おう」
コーヒーショップでレモンティーを飲んでいた僕は、声のした方に顔を上げる。見るとそこには溌剌そうな顔をした女性が立っていた。
「じゃあ南禅寺に行きましょうか」
( ^ω^)「そうね」
彼女は中学時代の後輩である。未だに僕のことを「せんぱい」と呼んでくれる稀少な存在だ。後輩萌えを持ち合わせているわけではないけれど、どちらかと言えば美人の部類に入る彼女から「せんぱい、せんぱい」と呼ばれるのはやはり悪い気持ちはしなかった。
京都、四条河原町。
今回の旅路で、初めてインターネット関係以外の人間と顔を合わせた瞬間である。
【4日目 京都】
( ^ω^)(本当に綺麗になったもんだ)
連れ立って歩いていた彼女の顔をしげしげと眺めながら、しみじみと思う。時の流れは少女を女へと変化させていた。
・・・
「せ、せんぱいの第二ボタンください!」
( ^ω^)「正気か?!」
卒業式の日だった。彼女は僕らの間でも「可愛い後輩がいる」と興味を引く対象であり、だから僕のところにボタンを拝受しにきたという事実はにわかに受け入れ難かった。
「あ、あの……一緒に写真撮ってもらえないですか?」
( ^ω^)「正気か?!」
僅かに紅潮している彼女の頬。第二ボタン、ツーショット、だから僕は確信した。この娘は俺に惚れとる、と。
( ^ω^)(全然イケる。全然イケる)
頭の中で性的なソロバンを弾く僕。「惚れられている=何でもしていい」という思春期特有の公式を脳髄ドリルから導き出した僕は、目の前の娘と具体的にエロる姿を想像する。それはたて笛ちゃうで……でももっとビブラートを利かせてやな……オオゥ、などと空ろな目でぶつぶつと呟く僕。正しい童貞の姿である。
( ^ω^)「あれ?でもおかしいな」
「なんですか?」
( ^ω^)「俺、卒業しないじゃん」
そこで僕はひとつの疑問にぶち当たる。確かに今日は卒業式で、だからボタンを貰いに来るという行為はある意味正しい。しかしながらこの時、僕は未だ中学二年生であり、彼女は中学一年生であり、結局ボタンをやり取りする理由はどこにも存しないことになる。あれれー?
「ああ、あたし転校するんです」
( ^ω^)「そのギャグおもしろい!」
僕の恋は始まった瞬間に終わった。伝説の樹の下で……。いや、別段あれは恋とか呼べる代物じゃなかったけどさー、それでも少々残酷に過ぎんじゃねーの?だってすんげー可愛いと思っていた女の子が第二ボタンを受け取りにくるとか、そらもう童貞にとってみりゃチンポが隆起してあまつさえ根元から空に向かって射出、奇跡の大気圏突破を果たして木星に突き刺さり、結果妊娠。タフな俺の精子は木星の子宮部分に激しく着床したりして、僕はいつしか1児のパパに、子供の名前は冥王星でーす。キャハ。みたいになるのが自然(ナチュラル)だと思うぜ。それを、お前。世が世なら盟神深湯(くがたち)使って思っきし断罪されるんよ?俺が菩薩のような心の持ち主だから助かったけどさー。
「せんぱいもお元気で」
( ^ω^)「あ、ああ」
振り返って思う。もしかしたらあの時は拝み倒してでもセックスをするべきだったのではないか?チンポをマンコにぴったんこさせるべきではなかったのか?それは、その思いはあくまで僕自身の「セックスしたい!」という薄汚れた欲望からではなく、僕を好いてくれていた彼女自身にボタンなどより遥かに重い思い出を与えるべきだった、文学的に表現すれば僕の怒張した肉槍を彼女の熱く濡れそぼった蜜壷に突入させ、花芯をピリリと刺激された光江は思わず獣のような絶叫を上げる、というような手順を踏むべきだったのではないか。消えない肉の痣を残すべきだったに決まってるよ。そんなことを思うのだ。
どうして俺は……無敵の未成年様だったのに……。
sweet pain
・・・
そんな切ない青春のカサブタを作出してくれた彼女と、昨年7年ぶりの再会を果たした。理由はmixiさ。かつて僕は本名ズバリのアカウントを所有しており、それを見つけた彼女が僕にコンタクトをカマしてくれた、という格好です。人生もmixiも案外捨てたもんじゃないっていうか、奇跡ってそこかしこに存在するもんなんよ。
「なんだ、肉欲は出会い厨かよ」
違う!そうじゃないんだ。それはあくまで偶然のことであり、とにかくそんな穿った見方をするのではなく、若い男女が再び巡りあえた幸福を積極的に祝福するべきなのではないだろうか?僕はそうするべきだと思いますね。それに僕だってキープオン童貞だったあの頃とは違うっていうか、別段その娘と性的なセッションを決め込みたい、とか何とかは思わなかったもの。本当だって。そんな目で見るなよ。たまには俺にも聖人君子ヅラさせろよ。まあフェラチオくらいしてくれるかなー、って思っただけだってば。マジで!
正しい泥沼のハマり方を提示した上で先を急ぎます。そんなこんなで適当にぬるりと連絡を取り合っていたところ、僕が来阪することを告げると「じゃあ寺に行きましょう」とのオファーがあった。聞けば、この春から就職で上京するらしく、だから京都を離れる前に寺を巡りたい、とのこと。
言っちゃあ悪いが僕も罪業の深い方であり、卑近な言い方をすればカルマ道4段を拝受している立派なゲスです。なので寺に行って己のカルマを薄めるという提案は少なからず魅力的に写った。仏を前にして悔い改めることで、僕の人生もあるいは快方に向かうのではないか?そういうことならひとつ仏に頼むというのも一興よ。
「むしろ仏罰が下るんじゃねーの?」
言わないで欲しい。僕から希望を奪わないで頂きたい。
( ^ω^)「ここが南禅寺かー」
初めて訪れた南禅寺は存外大きく、その瞬間に僕は「これはご利益が期待できるな」ということを思った。仏の大きさと仏パワーは正比例する、というのは学校では中々教えてくれないエトセトラ。ただ、ひとつ気になることがあるとすれば、南禅寺のどこかで仏を見た、という記憶が一切ない部分であります。
( ^ω^)「寒いのう」
この日の京都はひどく寒く、加えて僕は肌着を3枚まとったのみという超薄着だった。ただ、仏教的側面から考えれば、そのようにストイックな姿勢で寒波に耐える、という姿はかなり僧チックな感じなので、もしその辺りを仏が見ていたら「見所のある青年だ」ということになり、ご利益をオマケしてくれるんじゃないか?具体的には僕の包茎も治るのではないか?などということを考えながら、僕は寒さに耐えた。
( ^ω^)「カレーうどん食おうぜ!」
清貧は必ずしも善ではない、と言いたい。というかむしろ、己の欲求に素直であるということ、これは取りも直さず人生というクロスロードをかなり真面目に歩んでいるということにもなり、だから僕が「寒い⇒嫌だ」とストレートにシンクしたことは、むしろ好印象だったと思うぜ。仏ポイントも高かったと思います。思え。
「じゃー次は銀閣に行きましょう」
銀閣寺に向かう道すがらには『哲学の道』という大仰な名を冠した通りがある。比較的哲学に明るい僕は、その道を歩みながら哲学的思考に没頭した。
「それでも地球は回っている、って言ったのは誰でしたっけ?」
( ^ω^)「い、伊藤マンショだったような」
「……」
( ^ω^)「……」
哲学、そこに明確な答は存しない。生きることそれ自体が哲学の道を歩んでいると言っても過言ではない。そう、だから僕らはまだ登り始めたばかりなのだ、この果てしない哲学の道をよ……。
( ^ω^)「ここが銀閣寺かあ」
銀閣寺は非常に綺麗な場所でした。全体的に苔が美麗に生えており、連れ立っていた彼女はその苔にいたく感動、将来は苔師になりたい!という雄大すぎる夢をブチ上げる始末。何だよ苔師って。確定申告とかどうするんだよ。税務署ナメてんなよ。
( ^ω^)「銀閣寺なのに銀閣寺がないとは、これいかに」
「いや、これが銀閣ですよ?」
( ^ω^)「えっ?こんなにショボ」
「言ってはいけません!心で感じるんです」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「……」(プスゥ)
放屁した。
( ^ω^)「くさっ」
臭かった。
【おいでませ銀閣寺/京都市観光協会】
「そうそう、肉欲さんに相談があるんですよ」
( ^ω^)「みのもんたばりに頑張るよ」
「先日、男友達が私の家に泊まったんですよ。その子はたまにうちに泊まる人なんですけど、彼女もいるし、とにかくそういう関係ではなかったんですけど」
そういう関係、の『そういう』って何だよ。アァ?!何でも曖昧に語る我が国の風潮が必ずしも尊いものじゃねーってことを教えてやろうか!体(バディ)で!と思わないでもなかったけれど、話が進まないのでそのまま黙って残りを聞いた。くやしいビクビク。
「それで、夜中にふと目を覚ましたんです。そしたら彼、何かその、一人で『して』たんですよね……これってどう思います?」
( ^ω^)「他人の家でオナニー?そりゃとんでもない変態だな。正直理解に苦しむよ。まあおそらくそういう性癖なんだろうね。他人の家じゃないと興奮できない、というような。でも分かって欲しい、男が皆他人の家でオナニーしているわけじゃないってことを。もちろん俺だって例外じゃないさ」
「そうですよね!良かった!」
世界は晴れの日ばかりじゃない。
優しいウソをつきたい日だって、あるさ。
・・・
「じゃ、引越しの準備があるのでこれで!また東京かどこかで会いましょう」
( ^ω^)「達者でな!」
夕刻、僕らは四条の街でお別れした。サヨナラだけが人生さ、と井伏鱒二は言ったけれど、やはりサヨナラのその瞬間はいつだって悲しい。僕らはあとどのくらいサヨナラを経験するのだろうか?サヨナラの意味が解るまでに何度サヨナラを言えばいいのか?思わず脳内iポッドからGLAYが流れる。
( ^ω^)「おおーい!」
去り行く彼女に、僕は背後から声をかけた。
( ^ω^)「負けるなよー!」
あまりにも安っぽい、今時のドラマでも聞かないような陳腐な台詞。しかし今はそれでいい。安っぽいから、安っぽくなければ伝わらない気持ちもある。あっていい。
( ^ω^)「フェラチオー!」
もう僕の目の前には彼女の背中はなかったので、とりあえず口には出さず心で呟いた。僕からの精一杯のエールだ。きちんと受け取ってくれただろうか……。
( ^ω^)「フェラチオー!」
そうして京都を夜が包む。
・・・
( ^ω^)「5分ほど遅れます、か」
阪急河原町駅前。僕は人と待ち合わせしていた。
人、とは10日の梅田オフ会で知り合った一人の男性。名前をキンパくん。彼は京都に住んでいるらしく、僕が13日に京都を訪れることを告げると
「じゃあその日に会いましょう!」
ということになった。
「肉さーん、お待たせしました!」
( ^ω^)「来た来た……ギョッ」
( ^ω^)「なんだよその格好……」
「いやいや普通っすよ!大体皆こんなもんっすよ!」
識別信号オールレッド。しかも金髪の長髪、オールバック。身長180cmの筋肉質。DQNってレベルじゃねーぞ。
「肉さん、何か食べたいものありますか?」
( ^ω^)「うーん、特にないかなあ」
「あっ、そうだ!シシカバブとか食べたくないっすか?!」
( ^ω^)「おお、いいね!行こうよ!」
「そんな店どっかにないですかねぇ〜」
お前は何を言っているんだ。えっウソ?どうして「肉欲が知らないのが悪い」みたいな流れになってんの?なんかスゲー押し込み強盗に襲われた気分なんだけど。何この敗北感。
「やっぱ京都といえば和民ですよねー」
そんなこんなで僕らは和民にインした。適当にもほどがある。
( ^ω^)「キンパはさぁー、どうしてうちのブログなんて読んでんの?いっちゃ悪いけどパソコンなんて使いそうにないよ?」
「いやいや、意外と使いますよ?ラジオとかも聞いてるし。ブログで見てんのは肉欲企画くらいっすけど」
などと野太い腕をチラつかせながら肉欲企画との出会いを語るキンパ。いつから読んでるの?それは僕がブログの読者さんにいつも聞くことである。それにしても目の前の男、聞けばかつてキックボクシングをやっていたらしく、体が鋼のように硬かった。しかも彼が今ご執心なのはウェンツらしく、どちらかといえば掘ったり掘られたりに興味があるらしい。この夜、ミスは許されない。脳内にミッションインポッシブルのメロディが激しく流れ始めた。
( ^ω^)「でも、そういう特殊な性癖ってどうやって満たしてんの?日本じゃなかなか認知されないでしょ」
「そっすねー、とりあえず僕は筋肉質の人間が好きなんて、アメリカからミスターオリンピアのビデオとかを取り寄せて視覚を潤してますね!」
( ^ω^)「ミスターオリンピア?」
「ボディビルの大会っす!シュワちゃんとかが出てたアレっす!」
性的な意味でボディビル大会を見ている男が僕の目の前にいる。ふうん、そう、と何気なさを装った返事を返したが、あの時僕のアナルは確かにヒリついていた。トラを目の前にした子ウサギ的な意味で。
「逆三角に鍛えられたバディに組み伏されたいっすねー」
僕はふうん、そう、と何気なさを装った返事を返しながらおもむろに上着を脱ぐ。ほら、僕のバディはこんなに難民ライクだよ……ガリガリだよ……ということを目の前の獅子に誇示するために。
( ^ω^)「いつか欲求を満たしてくれる力士(おんな)が現れるといいのう」
「デブは嫌ですよ、僕」
こうして夜は更けていった。このキンパくんはとにかく本当に楽しい奴で、僕とも趣味がよく合った。特に読書好きなところやゲーム好きなところ(特に『街』が好き、というあたり)がガッチリとマッチしたので、話が尽きることは全くなく、結果的に和民に4時間も逗留してしまうことに。安居酒屋なのにお会計が1万円とかなってて、正直「どんだけだよ」という思いが拭いきれなくて、晩冬。
長くなったので今日はここらで。
中々終わりませんね。
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いや、でも趣味あったんならいいじゃないすか。
それにしても伊藤マンショは懐かしすぎw
ケツのヒリつきは多分それっすよ。肛門は覚えているんだ・・・
あんた最高だよ!!
GLAYのカーテンコールだったんじゃないかな
かなり昔の曲だったような
そんな二人に淡く切ない思い出があったなんて…なのに『フェラチオー』って、最高ですな。
コメント欄でする話じゃないだろ…
うわー
その日、四条めっちゃ歩いてました。
阪急河原町前も通りました。
ニアミス…!
くやしいっ
(´・ω・`)
俺もGLAY大好きでカーテンコールとかたぶん泣けます(笑)
http://tachinpone.seesaa.net/