この一月の出来事です。僕が地元で中学の同窓会に行った時のお話。
僕の中学は、龍の刺繍がほどこされたロングTシャツを着た男子生徒が丸太を肩に抱えて善良な生徒達を威嚇する、だなんていう少々アバンギャルドすぎる荒くれ者が居はしたものの、概ね穏やかな学校でした。その僕らが、約5年の時を隔て、一同に会したのです。
5年という歳月は短いようで長い。それがまた10代という多感で繊細でセンチメンタルな時分を挟んでいるものだから、僕たち一人一人の変わりようもまた激しい、というもの。ある者はママになり、ある者は極道の道にピットインし、ある者は完膚なきまでのフリーターになり…と、それぞれが立派になっていく姿に、僕は感涙を禁じ得ませんでした。
それでまあ、同窓会という名の飲み会は、再会の喜びも後押しして盛り上がるのですね。みな酒に酔い、狂った果実のようになっていく。
その同窓会の面子の中に、加藤さんという女の子がいました。
この加藤さん、中学生の頃は控えめで大人しく、特に目立つ生徒ではなかったのですが、これが高校に入ってから急変したらしく、この時再び僕の目の前に現れた時は随分と変貌を遂げていました。眉は細くなり、化粧は上手くなり、服装はオシャレになり…そう、少女はもはや少女ではなく、大人の女になっていたのです。
そんな加藤さんも例外なく酒に酔い、大いに騒いでおりました。僕と彼女は同じ幼稚園でした。もはやあの頃の面影なんて存在しねえな…などと漠然と考えながら、僕はぬるくなったビールをチビチビと啜っているうちに、一次会が終了。
さて、二次会はどうしようかな、と考えながら外に出ると、そこには途方も無い光景が広がっておりました。
いや、加藤さんが途方も無いくらいディープインパクトなキッスを、同級生と交わしているではありませんか。
アメリカならばいざ知らず、ここは大和撫子の国・日本。そんな途方も無い場面を見せられては如何にキング・オブ・エロスと呼ばれる僕とて動揺を隠し切れない。もしやこの二人は付き合っているのか…?との疑念も抱きましたが、彼女は今岡山県にいて、相手の男は東京にいるはず。つまりこれは…ゆきずりの愛…?
唖然とする僕を尻目に、彼女らは歩き出します。その先に待ち受けるのは確実にラブホテル。常々このブログにて『挨拶がわりにセックス』なんて文言を軽軽しく打ち付けている僕ですが、実際にそんな光景を目の当たりにしてしまうと恐怖に脚がすくんでしまいましたよ…。
そんな彼らがどんなプレイに勤しんで、何回戦の営みを行ったのかは知る由もありませんが、話はこれで終わらない。
翌日、今度は仲間内だけで飲んでいると、友人の一人が
「なあ…加藤って相当かわいくなっていたよな…」
なんて言い出すわけですよ。はにかみながら。照れながら。
「俺、昨日番号交換したから、今度遊びに行こうと思うんだ」
という言葉を聞いた時、心優しい僕としては『あの子、おそらく昨晩は狂ったように性交に興じておりましたぞ!』だなんてすべてを打ち明けてあげようかとも思いましたが、彼女への思いを語る彼の目は真剣そのものでしたし、まあこのまま放置しておいても面白いんじゃなかろうかきっとそうだろう、と思い直し、僕は貝のように口を閉ざした。友情…って、いいものですね。
とはいえ、まあ、岡山−山口ってのはかなり距離もありますし、伝え聞いたところだと加藤さんにも彼氏がいるらしい(いるけどセックスしたらしい)から、何かあるってことはなかろうよ、とイージーに考えていました。僕の友達にしても遠距離恋愛なんてできる柄ではありませんしね。
だなんて考える僕が甘かった。彼は次の日には岡山行きの新幹線を手配し、神速の如き勢いで岡山に旅立ったというのだから驚きです。そして彼はまんまと性交に成功。彼と、同窓会の後に消えた東京の彼、二人は僕の中で兄弟になりました。戸籍上の繋がりの無い、兄弟に…。
セックスは人を狂わせる、この言葉が僕の心の深いところに突き刺さった、あの寒い冬の日。