肉欲企画。

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2007年03月08日

ろくぶて

うっかり手袋を落とす時、どうして片っぽだけ落ちるのだろうか。そんな果てしない命題に頭を悩ませて早一週間、もう頭がフットーしそうだよお……。

 
冷静に考えてみれば、ある人がうっかりして手袋を落とす時っちゅうのは当然その手袋を手から外している時です。そうでしょ?だって手に付けた状態からスッポリと抜け落ちて道端に落ちることなんて考えられないですからね。装着状態から抜け落ちるくらい締め付けの悪い手袋なんてのは、この世にないでしょう。そんなゆるゆる手袋、ヤリマン手袋でもって一体何が守れるのか。何を暖めたいのか。

ヤリマン手袋の場合は格別として、通常手袋を落とす時なんてのはその手袋を外している状態だと思う。外した手袋をポケットなりカバンなりに入れておいたら、歩いているはずみにヒョイと道端に落ちる、これが一般的な手袋落下のプロセスよ。

でも不思議なことに、僕たちが道端で落ちている手袋を見かける時、それは大体ソロで活動している。可哀想な一人ぼっち手袋であることが絶対だ。2つ仲良く揃って落下している手袋というものを、僕は生まれてこのかた見たことがない。そしてこれからもない。落ちてる手袋というのは、そういう存在なのだから。

どうして2人仲良く落下できないのだろうか。こういう場合、残された者はあまりにも悲しい。愛してたのなら連れ去ってよ!意気地なし!――それは、全ての女の心のシャウト。

正直、落とした方としても一つだけ手袋が残ったままとあっては、却ってその処理に困ると思う。2つまとめて綺麗サッパリなくなっていれば、むしろ諦めがつくというものだ。

それなのにポッケの中には情けなく手袋の片割れが鎮座ましましている。ハッキリいってこれほど情けなく、そしてしょっぱい存在もないような気がする。

残された者は一体どうしたらいいのだろうか?それへの答はどこにもない。カッちゃんの亡骸に対面した南ちゃんも、おそらく

「私はこれからどうしたらいいんだろう」

という絶望にも似た気持ちを抱いたことだろう。僕たちが片方だけ残った手袋を見つめる時の気持ちはそれとよく似ている、否、全く一緒だと言っていい。カッちゃん――私を連れ去ってよ――そんな僕たちの気持ちのキモチ。切ねえ。

僕もこの冬だけで、通算5度ほど手袋の片割れが道端に横たわっているのを目撃した。落とされ忘れ去られた手袋たちは、木枯らしに吹かれていつだって儚げだ。そういう風にして置き去られた手袋をよく目にするのは、どういうわけかオールウェイズ冬だ。別れ、別離、そういう単語が冬にはよく馴染む。そして、手袋が夏に放置されることは――ない。それは、とても不思議なことだけれど、案外それでいいのかもしれない。

僕が片っぽ手袋にこだわるのには理由がある。いつもいつも自分語りで申し訳ないが、あれは4年前の冬のこと。その年のクリスマス、僕は当時付き合っていた人にMKの手袋をプレゼントした。彼女は大層喜び、僕も満足した。その夜、僕はゴム袋の封を開けた。

その2日後、彼女は音速でその手袋をロストした。貰って2日後に、見事バニッシュ。それは神業、とも言える。元から忘れ物をし易い彼女ではあったけれど、まさか2日で、しかもクリスマスプレゼントを失くすとは思わんだ。目の前でしゃくりを上げながら「なくした、なくした」とさめざめ泣く彼女。

その時もやはり、残されていたのは片っぽ手袋だった。彼女の差し出した手の上に力なく横たわるMKの手袋、左手用。

「どうしよう……」

泣き腫らした目で彼女は僕に問いかけた。僕は正直に思った。知らんがな、と。折節、彼女に食いちぎられかけた亀頭の怪我も治りつつあった冬本番。ほぼ役立たずとなった片っぽ手袋を目の当たりにしながら、一組のカップルの間に冷たい風が吹いた。

仕方がないので、僕はその手袋をもう一組購入してあげることを提案した。いくら無機物といえども、不完全な存在のままでいさせるのは忍びない。それに手荒れのひどい彼女だったので、やはり手袋は必要だろうという思いもあった。その年は寒さの深い冬だった。

「いや、これがええねん……」

僕は正直に『面倒臭ぇ女だな』と思った。手早く残った手袋をひったくり、しこうして後にジッポオイルを撒き散らし劫火に散らしてやろうか、とも思った。なまじ、中途半端に残るから未練が消えないのだ。それならば僕の手でいっそ……。

とも思ったけれど、僕はチキン(臆病者)なのでできない。「棒ちゃんに折角もらったプレゼントだから、きちんと使いたい」と呟く彼女は存外に健気だったが、そんなことはほぼ無視して「ぶっちゃけ、折角もらったプレゼントなんだから失くしてんじゃねえよこのメス」みたいなことを思った。口では甘言を呟くけれど、心の中では正直でいたい。それが俺クオリティ。

「じゃあ、似たような手袋で代用しようよ」

彼女にあげた手袋は黒だった。だから、ノーブランド品でもいいから、贈ったものとよく似たデザインの手袋を買おう、それで代用しよう、と提案した。それで彼女はようやく泣き止んだ。正直言って、MKの手袋をもう一度買い直すこととどれだけの違いがあるのだ?と思ったけれど、やはり最初に貰った手袋の方を大事にしたいのが乙女心というものなんだと思いました。そんなものは野良犬にでも食わせてしまえ。薪にくべて燃やしてしまえ。

「あ、これがええ!」

新宿の丸井で、目をきらめかせてノーブランドの手袋を手にする彼女。僕は素早い、かつ自然な動作で値札を閲すると、頭の中でスーパーコンピューター(SOROBAN)を弾いた。よし、安いぞ。僕は彼女の提案を受け入れ、その手袋をレジに運んだ。

「包みますか?」

レジのチャンネーが僕に問う。僕が「いや、いいです」との言葉を発するのを制して、彼女は光よりも早く

「包んで下さい」

と決然と言い放った。常に自分の欲求(YOKKYU)に正直でいたい、その心意気やよし。おそらく、これが乙女心というものなのだろう。

そんなものは肥溜めにでも放り込んでしまえ。こういった無為な乙女心のせいで、アマゾンの熱帯雨林は年々1万ヘクタールは消失しているのだ、絶対に。包装紙に謝れ。

ご他聞に漏れずそんなことは言えないので心の中に押し留め、僕らは地下鉄に乗った。彼女は僕に聞く。

「開けていい?」

アマゾンで泣き叫ぶ幼児の顔が頭にチラついた。ゴメン、俺、何もできなくって。僕は彼女の方を向くと、鷹揚に頷いた。ああ、僕の背中の羽が、音を立ててもげていく。

「わあ、ぴったりや!」

テメエで選んだんだからぴったりサイズに決まってんだよ殺すぞクソビッチが!!とつま先の辺でヒッソリとシャウトしながら、僕はアホの子を装いつつ「わあ!ホントだね!スゴイ!」と応じた。何がスゴイものかよ。手袋を作った職人さんか?でもメイドイン中国なんだぜ、それ。マニュファクチュア手袋だよ。僕は別段感動はしないけどなー。

と、僕はここで心に沸いた疑問を率直に彼女にぶつけた。

「つーかさあ、結局新しく買った手袋も片方がひとつ余るよね。どうすんの、それ」

悲しみが悲しみを産む。孤独が孤独を呼び、運命の連鎖は決して止まらない。僕は封切られたばかりの手袋を見つめながら、カッちゃん、アタシが南よ、と心で呟いた。そして呼吸を止めて一秒――

「どっか閉まっとけばええんちゃう?どうせ使わんし」

急転直下、彼女が見せたこのドライっぷり。一寸の躊躇いも見せない大胆な決断。つーか、おめ、それだったらMKもどっかに閉まっとけば良かったんちゃう?というシャウトは心の中にだけ仕舞いこみ、僕は「あ・ああ、そう」と曖昧に笑った。もっと強くなりたい――僕がそんなことを思うのは、いつだってこういう時だった。なぜなら力、それはパワーなのだから。

「プレゼントがダメにならんで良かったわー」

そんな言葉を鼓膜に受け止めながら、何か違うだろそれは……という僕の秘めた思いを乗せ、東京メトロ丸の内線は恐ろしいスピードで新宿から中野に向けて、走った。


そんな僕だから、冬に見かける片っぽ手袋はやけに情緒的で、切なく胸に響くのだ。エイメン。



『タッチ』

呼吸を止めて一秒 あなた真剣な目をしたから
そこから何も聞けなくなるの 星屑ロンリーネス

きっと愛する人を大切にして 知らずに臆病なのね
落ちた涙も見ないふり

すれ違いや回り道を あと何回過ぎたら
二人は触れ合うの
お ね が い タッチ タッチ ここにタッチ
あなたから タッチ手を伸ばして 受け取ってよ
ため息の花だけ束ねたブーケ

愛さなければ寂しさなんて 知らずに過ぎてゆくのに
そっと悲しみに こんにちは




・・・
「肉欲さん、JASRACの者ですが」

-----
明日(8日)で僕を煩わせていた雑事が終わります。こまごまとした用事はそれから行いますので今しばらくお待ち下さい。

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posted by 肉欲さん at 02:33 | Comment(31) | TrackBack(0) | 日記 このエントリーを含むはてなブックマーク
この記事へのコメント
1げと^^
Posted by きょろ at 2007年03月08日 02:35
泣ける。
Posted by 髪 at 2007年03月08日 02:44
その女心よくかります><
Posted by 女子 at 2007年03月08日 03:07
わたしの彼氏は、バイクの中に手袋を入れていてバイクごとパクられました。
私からのクリスマスプレゼント、きちんとつがいでバニッシュです。
Posted by 有希 at 2007年03月08日 03:09
まこと女人の心というものは計りしれん…
Posted by 一太 at 2007年03月08日 03:09
肉さんに同意出来すぎて困る。
そういう女の非生産的なとこが大嫌いだ。
Posted by at 2007年03月08日 03:43
う、うーん…。
ごめんなさいw女だけど理解できないやww
Posted by くるみ at 2007年03月08日 04:06
手袋なんかやった事ないや
Posted by ひろ at 2007年03月08日 06:43
全俺が泣いた
Posted by 豚足企画 at 2007年03月08日 07:49
手袋って『付ける』物なのか。北海道は『履く』物。それが引っ掛かった( -_-)
Posted by るい at 2007年03月08日 08:25
理解できない女心に直面した男の気持ちって、大体そんな感じですよね・・・
Posted by at 2007年03月08日 09:27
肉さんに同意・・・。

北海道では「履く」なんですか。
九州ですが「嵌める」です。
Posted by at 2007年03月08日 10:29
まったく女って奴は…。
どうしてこうも意味のわからない言動をしてくるのか…?
まぁ男も似たようなモノかもしれませんが。
Posted by のーあ at 2007年03月08日 10:32
かなり過激な暴言を思っていながら彼女に直にを吐けずにいる肉さんのヘタレっぷりにムカつきましたがその自分に正直な生き方は嫌いじゃありません。これからも身を削りながら笑える話期待してます。
Posted by フミオ at 2007年03月08日 11:57
女性の価値観は何とも奇妙なものですね…。
Posted by 肉好き男 at 2007年03月08日 12:37
女だけどこれはわからんわ
Posted by at 2007年03月08日 13:34
ゴムと手袋と女は『嵌める』ものですね。
指輪を無くされてさめざめ泣かれたことあります。『別にいいやんけ。新しいの買うけん』と思うのは俺だけじゃないはず。
その彼女は先輩と結婚しましたが。
Posted by at 2007年03月08日 13:58
かまいたちのアーッ!はどこ行ったですか?
Posted by at 2007年03月08日 13:59
北海道は『履く』物。→×
北海道は『穿く』物。→○
Posted by へけ at 2007年03月08日 14:34
>上の上
そういうコメントのせいでコメント欄閉じたことが分からないの?
日記に関係ないこと言うなよ…
Posted by at 2007年03月08日 15:33
>片方だけ落ちているてぶくろ
私は姪が読んでいた絵本が頭に浮かんだよ。
http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=192
米汚しスマソ
Posted by nktkニクヨカー at 2007年03月08日 17:03
女として成長した気がします。相手の気持ちも考えて行動したいと思います!
Posted by ぽん at 2007年03月08日 18:58
>もう頭がフットーしそうだよお……。

おでんふいたw
電車の中なのにどうしてくれるんだ!!!
Posted by at 2007年03月08日 21:09
結局、新たに買ってあげちゃうあたり、男前。こういう小さな不満が積もり積もって隙間が生じ、別れが訪れるのであった・・。
Posted by at 2007年03月08日 21:12
気持ちの切り替えが早いのは女性のたくましいとこやと思います。
なんだか男女の付き合いに似たものを感じました。
肉さんの対応にキュン(´・ω・`)
Posted by ノリ3 at 2007年03月08日 22:59
もう手袋でいいから「ハメ」たいと思うcherry=童貞は俺だけじゃないはず
Posted by at 2007年03月08日 23:05
北海道だけど手袋はくなんて言わない´`;
Posted by えた at 2007年03月09日 12:33
なくしてしまったものの代わりの新しい手袋を買って欲しかったがための・・・
Posted by 梨梨 at 2007年03月09日 20:50
そんな悪口を言いながらも昔の思い出もいいよね。今日はオヤジと宮寒梅で泥酔。5時間前酒を酌み交わしたことすら後悔
Posted by 深海 at 2007年03月09日 23:20
今日、てぶくろ両手セットで落としました!私は淋しいけど彼らは離ればなれにならずに済んで幸せだと思うことにします。
Posted by K at 2007年03月12日 01:40
初カキコ 最近ココ知りました まじでぉもしろすぎです♪絶対吹き出します 読むと。さいっこーー(*^_^*)
Posted by ぁさこ at 2007年03月12日 23:31
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