肉欲企画。

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2007年02月09日

乳首の科学

人に何かを相談する時、どこから話してどの程度まで聞くか?この辺りの基準は非常に曖昧で、人によってそれぞれだと思います。

 
平均的な人よりも羞恥心の欠落している僕にあっても、やはり

「恥ずかしくて言いづらい、聞きづらい」

事項というものが一定程度存在します。気にはなってるんだけど、人に聞くのはちょっとね。そんな微妙なサジ加減。

それが僕にとっての乳首問題でした。やっぱりそっちの話?まあ、いいからお聞きなさい。たぶん役に立つから……。

・・・

変化、に気が付いたのはいつの頃からだったろうか?それはおそらく「いつから自分は言葉を覚えたのか?」という問いかけと同じように答の見つからない自問であり、だから『それ』は気付いたら僕のそばにあったのだ。

21歳の秋、肉欲。
僕の乳首周りが、なぜだか痛い。

(どないしよ)

彼女の家のベッドに横たわり、くすんだ空を眺めながら僕は自分の乳首を触る。そこにあったのは目の覚めるような痛みではないけれど、外から触れると乳首は中はじんわりと痛む。薄皮の一枚下。乳首の中身、約束の場所。そこには確かにしこりがあった。

女性の方はもしかしたらあまりご存知ないかもしれない。けれど「乳にしこりができて、しかもそれが痛い」――この症状は思春期の男子にはよくある症状なのだ(本当に)。しかしそれはあくまで思春期。僕は、自分の抱えた痛みに懐かしさとも違和感ともいえない気持ちを抱く。

多感な時期は、過ぎたはずなのに――。

これは成長痛なのかな?とも思うのだが、突飛な思いは苦笑いと共に消えていく。バカだ、俺は。21歳にもなって成長痛もあったもんじゃないだろう。そのまま、参ったな、という風に息だけの声で一人ごちた(重松清)。

僕は乳首触られたり舐められるすることが嫌いじゃない、否、むしろ積極的に好む主義主張の人間だ。もちろん快楽を得たいがために好きなわけではない。僕の内心にあるのはもっと複雑で微妙な気持ち。そう、乳首を舐められること、そして触れられること、それは何ていうかこう――すごく、気持ちがいいものだから。若者的に言えば、超気持ちがいい。ビクビク。だから、だから僕は。

そんなETS(エンドレス乳首触られたい)な僕は、この乳首を襲った突然の変化に大きく戸惑い、うろたえた。乳首を触られるのは好きだ。でも、そこに痛みがあったとすれば――分からない。今はもう何も。僕はその時、誰もが経験する『青春の袋小路』にはまっている自分を意識した。自我か、乳首か。胸に存在するのは、そんな切ない二律背反。

僕は法学部に所属していた。けれど如何に我が日本国法制度が優れているといえど、それは決して直接人生に明かりを照らすものではない。僕はこの切ない疼痛を解決する術がないものかとポケット六法をめくったのだけれど、民法典は曖昧に笑って首をかしげるばかりだった。チクショウ――

「ただいまー」

僕が乳首に深く懊悩していると、そこに彼女が帰って来た。ああ、どうしよう。僕は彼女にこの悩みを打ち明けるべきか、それとも墓まで持ち込むべきか。個人的な悩みなんて、外部に発露させなければそれは元から「存在」しなかったことになる。

世界には始めに混沌(カオス)があった。そして、言葉ができた。

言葉が概念を区分するのである。だから僕は悩む。自分の恣意によって、この悩みを彼女の内で共有させるべきなのか……彼女の中に不存在だった概念を、新たに生み出させるような真似をしていいのだろうか……そんな権利が僕にあるのだろうか?僕は、嗚呼、僕は……


僕には何も分からない。


―――――

「ペロペロ。ペペロン」

夜の張。セックスの好きな彼女だった。淫獣のような彼女だった。僕はいつも通り乳首を舐められていた。相変わらず、悩みは尽きない。ITN(いつまでも乳首を舐めていて)の僕のはずなのに、今、この瞬間のこの出来事を素直に受け入れることができない。なぜならそれは――

「ペロペロ。杉本ペロ」

「い、痛い!」

「え?」

意識してのことではない。しかしいつの間にか、思いは言葉となって外の世界に現れていた。僕はハッとして口をつぐむのだけれど、現象は止まらない。彼女は作業の手を止めて、はたと僕の目を見つめた。

「痛い、って……」

「……痛い、痛いんだ。乳首が、痛いんだ――」

「ウ……ソ……」

一秒が永遠のように長く感じる。乳首が、痛い。そのあまりにも凄惨過ぎる現実に、誰もが息を呑んだ。やり場のない沈黙が部屋を支配する。そして最初にその状況に耐えかねたのは、他でもない僕だった。

「だ、大丈夫だよ!別に大したことないしさ。すぐに治ると思うし――」

「そんなの、分からないじゃない!」

楽観的な僕の声に、彼女が怒声を上げる。え?何で?どうして?ちょっと乳首が痛いだけじゃん。そんなに怒んなくてもさー。

「大変な病気だったら、どうするんね!」

いや、そんなことを広島訛りで言われても……つーか、『乳首に重大な疾患が存在』とか想定しにくいだろ常識的に考えなくても……。

「乳癌やったらどうするんね!」

えっウソ、そこまで飛躍すんの?そりゃ確かにそういうことも絶対ないとは言わないけどよおー、それにしてもさっきまで「ペロ……これは乳首の味!」みたいなプレイしてたのに、何でいきなりこんな深刻な雰囲気になっているのだろうか。果たして僕にはそれが分からない。

「ふええええ……癌やったらどうするんよ……」

振り返って思う。この日は僕の乳首が女を泣かせた日。ていうか泣くなよ。いや、おかしいだろそこは。泣きたいのは俺の方だ、そこにいられたら泣けないだろ?!ウエェ?!と脳髄のあたりで藤原基央が16ビートでシャウトする。仕方がないので僕は

「大丈夫、大丈夫、大丈夫」

と頭を撫でて彼女をなだめながら、そのまま『大丈夫、僕は乳首の疾患で死なないよセックス』という新境地すぎるプレイに確変突入した。ハッキリ言って燃えたね。

・・・

「肉欲さーん。肉欲棒太郎さーん」

「あ、はい……」

薄暗い待合室、僕はそこで自分の名前が呼ばれるのを聞く。どうしてこんなところに、とは思わなかった。前夜、僕はあまりにも新機軸すぎるセックスに取り組んだあと、彼女から

「明日きちんと病院に行くこと」

という約束を無理やり押し付けられたのだから。そして丁度都合のいいことに、彼女の家の近所にあった病院に堂々と存在していた張り紙。

『乳癌検査 承ります』

できすぎだろ、これはあまりにも。しかし往々にして真実は小説よりも奇。僕は甚だ不本意ながら、保険証を握り締めて乳癌検査場へとまさかの突入を大敢行。痺れるぜ。

「で?今日はどうしたんですか?」

こんな時に限ってよー、看護婦が可愛いってどういうことなんだよ?!もっとこう「ホームベースに突っ込んだ時にクロスプレイで右足首が少々」とかそういうタイミングで出て来いよこのアバズレ!よりにもよって「乳首が少々」のタイミングで問診してくれてんじゃねーよカス!あークロスプレイだよ、クロスプレイで乳首が少々ニップルしてんだよこちとら。オンカッカコラ!

「じゃ、こっちに来て下さいね」

髭面の先生が優しく僕を導く。ジュン。体のどこかが熱くなるのを感じた――気がした。これがもしかして、恋?僕はそのままベッドに横たわる。先生は戸棚からかちゃかちゃと薬品を取り出した。僕はそのままベッドに横たわる。

「ちょっとヒヤっとするけど、我慢してね」

言葉が終わるか早いか、先生は僕の乳首の本丸及びその近辺にゲル状の物体を塗った!塗った!塗りたくった!らめぇ!らめなのぉ!僕はそんな気持ちを伝えようと潤んだ目で先生の顔を見つめた。先生はそんな僕の視線を右へと受け流す。先生は僕の右乳首にゲル状の物体を塗りたくる。僕はそれを左乳首へと受け流す。

先生に、そして僕に。2人の間に右から、右から、右から何かが来てぇるぅ〜。





「はい、じゃあこれから検査するからね」

僕は身も心も右から左へレイプされたような気分になってベッドに横たわっていた。これ以上何があるっていうんだ?そんな言いようのない不安に打ち震える僕だったけれど、皮肉なことに心の奥底に湧き上がっていたのはそう、逆説的な期待感で――なわけねえだろ。まさかこの歳になって男から乳首ローション塗りたくられるとは思わなんだわ。

「ちょっと痛いから我慢してねー」

やっぱりプレイなの?と、そんな楽観的なことを言えるのは最早そこまで。その言葉のすぐあと、先生は僕の乳周辺を一気に絞った!絞った!絞り上げた!

「痛あああああああああ!!」

「はいはい、我慢我慢」

僕のシャウトを無視し、鷹揚な声で僕の乳をギリギリと痛めつける先生。どうも、乳腺の様子を調べるにはこのようにして乳の肉を一手に集め、しこうして後に超音波診断を施さなければならないらしいのだ……って、理論は分かるけどさあ!こりゃお前、痛いってレベルじゃねーよ!

それにつけても悩ましいのは性別よ。男だから貧乳、これは仕方のないことなんだけど、だからこそ余計に超音波診断は困難を極める。後ろから前から、縦から横から、何とかかんとか乳の肉を寄せ集めようとして、だからそれが非常に痛い。憎い!貧乳が憎い。

(男性の皆さん、このようにして乳の検査は非常に痛いものです。もしパートナーがそんな検査を受けるようなら、しっかりといたわってあげましょうね^^)

「うーん。やっぱり何もないねー。まあキミくらいの歳ならそうやって乳腺が張ることもよくあるんだよね。気にしなくていいよ」

先生は何かを喋るのだけれど、既にボロボロにrape(ラペ)されたような状態になった僕の耳には、最早言葉も届かない。つーか、分かってたんなら先に言えよ!?!思わずそんな理不尽な怒りすら覚えてしまった。

「あの、薬とかは?」

「あー、放っときゃ治るよ」

じゃあ医者って、何のためにいるんですか!!僕の心に潜む斉藤英二郎が叫び声を上げた。こんな業界、腐ってる――。

それでも、誰かが言った。

No news is good news。
何もないのは良きことかな。

(早く、彼女に伝えないと!)

僕はこの慶事を少しでも早く彼女に届けようと、家路を急いだ。走った!

「ただいま!俺、別になんともないってさ!」

「あらそう」

4文字。フランクですね。


その日のセックスは、別に燃えなかった。
状況、環境、悲劇。それらのものが相まって、セックスというのは構成されるのだな、だからそれはあたかも劇場のような――この日、僕は乳首というフィルターを通してそんなことを悟ったのだった。

・・・

勇気を振り絞って乳首の痛みを訴えたあの日。
言わなければわかんないじゃない!女性はそんなことをよく言うけれど、じゃあ言ったら分かってくれるのだろうか?この辺りの問題は、非常に難しくて繊細だ。僕は乳首の痛みを相談したけれども、別段それが何か良い方向に進んだかといえばそうではなかった。

とりあえず僕は今、2年ぶりにまた乳首が痛くなっている。
これを誰かに相談するかどうするか?――そんなことに激しく頭を思い悩ませながら、苦しみながら。

みたいなことを考えていたら、母さん。もう2時です。

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posted by 肉欲さん at 01:55 | TrackBack(1) | 日記 このエントリーを含むはてなブックマーク

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ムーディー勝山ワロタwwwwwwwww
Excerpt: ムーディー気になってたので助かりまんた(^ω^)
Weblog: 1人ぼっちの妄想大会
Tracked: 2007-02-11 18:29

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