4限目の終礼ベルが鳴る。
僕は乱暴に席を立つと、教室後ろのドアをガラリと開けて食堂へ走る。
後ろからもクラスメイトが続々と続く。
高校生の胃袋は大きい。
だから、昼休みの食堂はいつも激戦区なのだ。
「ちょっと!まだ挨拶しとらんよ!」
背中に教師の怒声を聞きながら、僕たちは走る。
高校三年生、だけど今この瞬間だけは受験よりも何よりも食欲が一番なのだ。
「おい、今日何食う!?」
走りながら後ろにいる利川に声を投げた。
「俺はチャンポンにするわ!」
うちの学校では、冬季限定で食堂のメニューにチャンポンが登場する。
概してあまり美味しくはないのだけれど。
「肉欲は?」
「俺は、うん、月見うどんやね!」
「またかいや!」
僕は春夏秋冬を問わず学食では月見うどんを食べる。
別にうどんが好きとかそんな訳じゃなく、単純に考えるのが面倒なのだ。それにうどんだとあまり咀嚼する必要もない。素早く食べて昼休みを長く使いたいのだ。
「オラ!どけや!」
目の前をてれてれと歩いている後輩を押しのける。僕ら三年生が授業を受けている棟は、奇しくも食堂から一番遠いところにあった。全速力で走るうちに脱げかけたスリッパを履き直すと、再び現れた学ランの脇をすり抜けた。
理科棟の階段を駆け下り、最後のコーナーを回る。ここから後数段、階段を抜ければ食堂はもう目の前だ。ぷん、とうどんのダシの匂いが鼻腔をくすぐる。ぐるるる。大きく腹の虫が鳴った。待ってろよ、うどん。
「うわっ!」
食堂を目前とした、その時。
僕はもう一度脱げかけたスリッパに足をとられ、最後の階段のところで派手にコケた。ずるるるる、と尻を滑らせ階段を落ちていく。布が擦れる音を遠くに感じながら、ドンと床に着地する頃には尻の辺りが鈍く痛んでいた。
「アホやなー!」
尻餅をついている僕、その脇を利川がするりと駆け抜けて行く。何て薄情なのだ。時に空腹は友情さえも凌駕する。僕は腰をさすりながら走り行く彼の背中に「月見うどん、頼むぞ!」と声を掛けた。彼は振り向くことなく手だけを上げて食堂のドアへと消えていく。どうやら彼が一番乗りのようだ。ううむ、頼もしい。
「痛いわ……」
立てないままでぽつりと呟く。十数段も滑り落ちたのだ、腰と尻が痛くなっても仕方がない。僕は舌打ちしながらくるりと首を回し、階段を上に見上げる。踊り場に設えられた窓から、溶けかけた雪が雫になって垂れているのが目に飛び込んだ。
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そんなような青春時代でした。イカス俺!
廊下にかけられたワックスがツルツルと滑って、よく転んでいたあの頃。昼休みの昼食だけが唯一の楽しみだったと思う。
年末はどうしてかノスタルジックな気持ちになる。
普段思い出さないような青春時代のアレコレがなぜだか思い出されるからかもしれない。
食堂で昼食を食べ終わった僕らは、螺旋状の階段の下にダッシュして全校生徒のパンツをチェキするべく階下で野営を組んだりした。
あるいは体育祭の練習時、僕らは誰ともなしに用意された双眼鏡を代わる代わるに覗き込み、女子の着替えをピーピングしたりした。
「カーテンかかっとるやん……」
着替え姿が見えたことは一度もなかったけれど。
水泳の時間、欠席している女子をチェックするのも当然怠らなかった。
「おい、あいつ休んじょるぞ!」
「ちゅーことは、オイ、アレか!」
「アノ日、やな!」
「どの日かや!ゲヒョー!!」
若さとは、概してそういうもんである。
彼女ができたりしたら、それはもう一大事だった。
僕らは進学校で、そんなに男女交際は活発な方でなかったので必然的に恋人ができたヤツにはキツーイ尋問がほどこされる。
「オウ!観念せえや!」
「ネタはあがっちょるんぞ!」
この時ばかりは、僕も鬼刑事になる。
購買で買ったコロッケパンを振り回しながら「吐け!吐け!」と地獄の追求を行なうのである。
「や、やっちょらんって!」
「貴様!やらんかったら無罪なわけやないんぞ?!」
「オウ!どこまでいったんか!?」
「き、キス?」
「青島、確保ぉー!」
踊る大走査線がリアルタイムだった頃だった。
被疑者は号令一下、あっという間に取り押さえられる。
「ギャー!離せや!」
「ええから委ねんかい……」
ペロペロ。
「いややーーー!!!」
乳首舐め係・刑事長は、僕の役目だった。
「ヤッたら、ちゃんと報告するんやぞ」
「あんま、おふくろさんを泣かすんやないぞ」
彼女持ちの野郎には容赦なく攻める。
鬼軍曹、当時の僕の姿である。
「肉欲くんって、ホモなん?」
たまに女子から聞かれたりもした。
「ち、ちゃうって!そんなわけないやん!」
「でも、男子のお尻触ったり舐めたりしよるやん!」
「肉欲はテクニシャンやけえのう……」
「違う!ホモやない!!」
巻き起こるあらぬ誤解。
鬼軍曹も楽ではない。
もちろん、情報収集にも余念がなかった。
「で、お前、中野さんとヤッったんか……?」
「ああ、ヤッった……」
ざわざわ。
周囲にどよめきが走る。
僕らの同級生、中野さん。彼女は器量よし、胸よし、足よし、肌はSKU、とフルスペックの女子だった。まさに三冠王、マンコ界の落合。僕ら男子にとって垂涎の女子だった。
「で、で、ど、どうやったんか?!!」
「あいつも結構、好きもんやけえね……」
そう言ってS岡はニヤリと笑う。
「ど、どこでヤッたんか!?!」
「……まあ、部室?」
S岡は不敵に語る。
僕らのボルテージがマックスに達した瞬間だった。
「か、確保ぉー!」
再び僕の号令一下、S岡は黒山の人だかりに囲まれる。
「ちょ、やめ!やめろっちゃ!!」
「後ろと前、どっちか選びな!」
鬼軍曹は冷たく迫る。
「か、勘弁してえや肉ちゃん!」
「やかましい!選べ!」
「ま、前?」
「うるせえぇー!両方やボケェー!!」
オオオオ!雄たけびが3年2組の教室に響く。
鬼軍曹はS岡の学ランをブチブチと引きちぎると、そこにはピンク色の乳首が露になった。
「こんな風にされたんか!されたんか!」
「やめて肉ちゃん!そこは花園じゃないよ!」
「やかましあ!」(クリクリクリ)
「やめて!乳首は堪忍!」
乳首サージェント、それが僕に与えられた称号だった。
「うっ、うっ……」
「部室でヤッたら、いかんやろ……」
僕は泣き崩れるS岡にふぁさっ、と学ランを掛けると、暖かい言葉を掛けた。軍曹たりとも、厳しいだけではやってられないのだ。
「やっぱ肉欲くんって、ホモなんだねー!」
「違う!違うんだこれは訓練ではない!繰り返すこれは訓練ではない!」
あまり理解はされなかったけれど。
僕の高校三年間は、そういう感じで過ぎていった。
あまりにもイカ臭い青春。
願えども願えども、あの頃の僕は、この手にオマンの花を手にすることはできなかった。
だから僕は、下関に戻るといつも青春の息吹を感じる。
けれどそれは、切ない色となって僕の胸を締め付けるから、いつもいたたまれない気持ちになる。だから僕はそれに耐えかねて、すぐに実家からは去ってしまうんだ。
「肉ちゃん、キャバクラ行こうや!」
鬼軍曹は、とっくに退役した。
今では友達の誰がどんな人とセックスをしてようと、それほど琴線が動くこともない。それを成長と言うのならば、果たしてそれは喜ばしいことなのだろうか?僕には未だに分からない。
「延長は、無しやけえの?」
「同級生とか働いとったら、マジ気まずいやろー!」
「大丈夫やろ!キタキュー(北九州)から出稼ぎに来とる女ばっかやし!」
僕らは軽口を叩きながら、赤らんだ頬で飲み屋街を歩く。
遠くから関門海峡の潮騒が聞こえた気がした。
けれどそれも一瞬のことで、すぐに大通りを走る車の音が鼓膜を揺らす。
死ぬほどセックスがしたい!と願った17歳のあの頃。
女の柔肌を想像し、鬼のようにマスをかく日々ばかりの青春時代。
「どうせ知り合いもおらんし、どっかでナンパでもするか?!」
酔った頭でそうシャウトする僕は、友人の乳首を舐めていたあの頃から少しは成長できたのだろうか?
「あっ、チンコタワーが光っとるぞ!」
下関の玄関口たる関門海峡を眺めるようにそびえ立つ下関タワー。
僕らはそれを斜めに見上げながら、少しだけ青春の残滓を掬い集めた。
「そう言えば、肉ちゃんって結局ホモなん?」
「ホモやったらキャバクラ行かんやろ……常識的に考えて……」
社会人になった友人と肩を並べてホモトークをする僕。
青春の光はもうどこにもないけれど、郷里の空気はいつもその残光をまぶたに蘇らせる。
「でも乳首とか触りよったやん、彼女もおらんかったし」
「もうええけえ、飲もうや……」
こうして僕は毎年、下関の夜をベロベロに飾るのだ。
【道は前にしかない】、と言う人もいるけれど、【振り返った時に、道がある】というのも等しく確かだと思う。
そして僕は、前にしかないはずの道をいつまでも踏み外しながら、来た道ばかりに気をとられて、またあべこべな一歩を踏み出すのだろう。
「自戒を込めて言うけどさぁー!俺だって乳首触りたくて触ってたわけじゃねーよ?!」
「でも肉ちゃん、あの時、すげー楽しそうやったやん!」
「いや、楽しかったけどさぁー!」
人間、楽しいだけじゃやはりダメなのだ。
楽しいことだけしてたら、後々まで「ホモ」とか「ゲス」呼ばわりされることになる。これは僕の体験からして、紛うことのない真理である。
だから、願わくばこれを読んでいる人はそうなって欲しくない、おおよそ僕がブログを続けているのはそんな気持ちあってのことなのだろう。
―――それはほとんどウソだけど、とりあえずそういうことにして今年最後の更新としておきます。
皆さん、今年一年どうもありがとうございました。そして、よいお年を。
【肉欲棒太郎】
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ご了承下さい。
苦情は集英社までお願いします。
来年もマターリよろしく!そして僕の乳首なら…ヒヒ…(木田はぺろりと舌なめずり)
来年もたのむぜ!!!
来年も肉欲ワールドを展開しちゃって下さいb
良いお年を!!!
肉さん一年お疲れ!
来年もよろしくなんだぜ!
てか現在進行形でホモか^^
よいお年を…^^
良いお年を!!
なのに今年の更新はこれが最後って…
楽しみにしてたのに…ビクビクッ(´・ω・)
なんか肉欲サンの人生をそのまま歩いている高校生の俺がいますよ(´・ω・`)
来年も見るお( ^ω^)
「ゲス」とか呼ばれても人生は楽しいことだけしてればいいと思います。
俺も学校で少しホモと思われてます。
楽しいからやってるだけなのにねぇ(´・ω・)
一番の喜びですかね。
来年も肉欲節を前面に出して抱腹絶倒のネタ
を書きまくって下さいな。
では、来年も良いお年を!
ホモ欲さんお疲れ様( ^ω^)
明日あたり『かまいたち』upでしょ?分かっとるけぇ。
周囲もゲイ欲さんを受け止め、受け入れてくれる人ばかり。
かえってウドンを食べる機会は減るものなんでしょうか?
私はミカンなんぞ100ミカン=1ペリカくらいの感じですが。
…テラチンコタワーwww
来年もモリモリお願いします
来年も…肉欲クオリティ!!
とにかく良いお年を!!
今年はお世話になりました。肉欲企画に出会えてよかったです!!!!
肉欲さんと同じクラスだった人たち羨ましい…!
みなさん良いお年を!
一年お疲れ様ですおショタ欲さん( ^ω^)
良い落としを
よいお年を
来年もよろしくおねがいします
よいお年を!
米書く様になったのは最近だけど、何気に永い肉欲生活でしたが、来年もよろちくびm(_ _)m
来年も肉欲クオリティ!
来年も肉欲クオリティに期待してますwフヒヒwwサーセンwww
来年もフヒヒwwサーセンwww
来年もいい年にしましょう
そしてやっぱりホモ欲なんだね^^
来年の更新、乳首洗って待ってるよ〜^^
来年も下ネタとカオスと少しの感動をくださいねwww
来年も頑張って!
説明がてらくそみそを見せたんですが全くもって逆効果でした。
来年も肉欲企画にとっていい年でありますように。よいお年を。
今年一年ありがとうございました。それでは、よいお年を。
今年1年お疲れ様でした!久しぶりにテキスト系ブログにハマれて幸せでしたww(読み始めたのは今年の半ば過ぎからでしたけどねw)
来年の更新も楽しみにしてますお( ^ω^)
そういえば肉欲企画に辿り着いたのも今年だったな
来年も毎日読ませていただきます( ^ω^)よいお年を
先輩に断定されてしまいましたが、
次からは鹿児島に本物がいるよと
言付けておくことにします(^ω^)
今年一年お疲れ様でした!
またのオフ会開催を心待ちにしてます。
来年も宜しくお願いします。
良いお年を(≧ε≦)
良いお年を!
お疲れさまでした。
来年は是非東北でオフ会など…是非参加しますゆえ
美術室で犯してしまった過ちを思いだす日記でした…
とりあえず乙です
これからもマターリ頑張てくだサイ(^ω^)/**
(・ω・)/
ところで年越し肉ラジの情報マーダー!?
ところで一部で噂される年越しラディオは本当?
ホモは堪忍や…。
来年も楽しみにしてます。
大晦日ですね、私はスペースワールドで花火を見ながら年越しの予定です。
肉さんの年越しはどんなですか。
兎に角、来年もよいお年でありますように
よいお年をm(__)m
来年も肉欲さんのブログ楽しみにしてます!
是非頑張ってくださいね!
関東圏ではアカギ総集編がやるので、徹マンしながら年越しの予定です。
来年は麻雀オフでもやりません?
来年もそのカオスぶりを世界に見せつけて下さい。
お疲れさまでした。
もうすぐ受験だけどこれを支えに頑張ります^^
来年もNO肉欲NOライフ♪
今年もがんばー
肉さんカッコヨス(´・ω・`)
応援してますよ
今年もアッーーーーー!!!!!
肉欲企画。の更なるご発展をお祈り申し上げます。
今年も肉欲企画にお世話になるお( ^ω^)
今年も良い年になりますように!本年もまったり宜しくお願い致します。
今年も毎日覘くから更新頑張って下さい!
肉欲さんの文章がみたいよ〜
今年もがんばってください。楽しみに待ってます!
今年も肉タソ大好き
ホモでも好き
今年も肉欲さんにとっていい年でありますように…( ^ω^)
肉さんは今頃、素敵なお正月ライフを満喫しすぎているんでしょうね。
たまにはゆっくりもいいですよね
今年もよろしくです
m(__)m
東京でオフ会はいつやるですか?
もう米欄vipブログみたく名無しにしたら?
どうせ前みたいに返信することないんだし…