久しぶりに絶妙な色彩を放つ変態が世に放たれた。
ここに雑感を記したい。
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【「お母さんを縛っている。助けてほしいか」と20代女性を脅して「歌を歌え」などと強要 横手市の男逮捕】
http://www.sakigake.jp/p/akita/news.jsp?kc=20121024q
横手署は24日、強要と強要未遂の疑いで横手市朝日が丘、無職後藤繁幸容疑者(46)を逮捕した。
逮捕容疑は、今年8月上旬、横手市の20代女性の勤務先に電話をかけ、女性の母親の声色を装い「帰って来てほしい」と訴えた後、「お母さんを縛っている。助けてほしいか」と脅して「歌を歌え」などと強要、電話口で歌を歌わせるなどした疑い。
また今年4月中旬、同市の40代女性宅に電話し、女性の息子の声色を装い「知らない人に連れて行かれた」などと告げた後、「息子を誘拐した。返してほしかったら俺に抱かれろ」などと強要した疑い。女性の家族は、息子が通う小学校に連絡し無事を確認、女性は要求を拒否した。
同署は携帯電話の通話履歴などから後藤容疑者を割り出した。容疑を認めているという。
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>歌を歌え
実に素敵な響きだ。詩的ですらある。歌を歌う、その行為は我々人間にのみ許される。想いの丈を歌に乗せ、夜に届け、忘れ得ぬあの人に。
>お母さんを縛っている。助けてほしいなら、歌を歌え
0.5秒で陰惨なリリックに変貌。少し文脈をいじるだけでネバー・エンディング・ディストピアが爆誕。縛る、という言語チョイス。助けてほしいなら、という限定されたシチュエーション。いずれも実にスリルフル。かつ、その対案が「歌を歌え」。常人にはたどり着けない、いや、たどり着いてはならない人外魔境の地平、脳にガツンとくるフレイバー。
>電話口で歌を歌わせるなどした疑い
マイナスにマイナスをかけるとプラスに転じるのと同様、有り得ない状況に有り得ない事情が介在した瞬間、有り得ない結論を導く。これはその好例である。母を助けるには、歌を歌うしかない!まともなシナプスを形成していては到底理解を許さない煉獄の如きロジック。高野山真言宗の阿闍梨であれど、彼の方の狙いを解きほぐすことは不可能。
余罪にも着目したい。
後段で紹介されている案件における犯人の要求は、もっとストレートに『抱かせろ』、すなわちセックスをさせろ、の意である。
こちらの方は常人でも理解が可能だ。
しかし、前段の事件との対比において、ひとつだけ腑に落ちない点がある。お察しの通りそれは被害女性の年齢、その一点。
20代女性→歌を歌え
40代女性→抱かせろ
普通は逆なのでは……と思った方、気持ちは分かる。記事が間違っているのでは……との懸念を抱いた方、お察しする。だが
>女性の息子の声色を装い
このクレバーな計画性、無慈悲なやり口から察するに、彼の40代女性に対する要求は極めてピュアな下心であったと言わなくてはならない。『ママ!』くらいは電話越しにシャウトしたと推察される。往年の銀幕のスターたちもかくや、の役者魂。46歳男性が小学生の声色を装う、という天衣無縫のダイナミズム。
では、犯人は熟女マニアだったのだろうか?そのように結論づけるのは、いささか早計だ。ここで二つの事件にもう一度着目したい。
@歌を歌って欲しかった
A小学生の声色を真似た
B40代母親を抱きたかった
この三要素を並べたとき、おのずと『母性』その単語が立ち上がってくる。考えてもみて欲しい、面識もクソもないズブのトーシロに歌を歌わせる、その時彼が求めるのは歌唱力か?あるいは、感動か?いずれもNO、その一言。
彼が望んでいたのは、自分という存在たった一人のためだけに歌ってくれる人物。俺のために電話越しに歌ってくれた!という稀有な事実。だから、求めていたのは、彼の・彼による・彼のためだけの、ニルヴァーナ。
『お母さん、子守唄を歌ってよ』
蘇るのは在りし日のノスタルジー、戻らない無垢な日々。母性を介在し母の口から生成された慈悲深い一曲。うさぎおいしかのやま、こぶなつりしかのかわ、鈍色に輝く星空を眺めながら、繁幸今夜は寝かせないよ、繁幸今夜は寝かせたくないよ。
故に、40代女性の方にこそ肉体関係を求めた。彼にとっては40代でなくては、ならなかった。キメ打ちのようなピッチングに見えるかもしれないが、諸般の事情を総合考慮すれば、極めて素直なロジックである。
形而上の母性を20代女性に求めることは出来れど、形而下の母性(すなわち肉体的な情緒)、これは相応の加齢を要する。
在りし日に過ごした小学生の日々、その時の母、40代の繁子。垂乳根のけしからん体に身を委ねながら、天井のシミを幸せに数える。子供の声色を真似たあと、繁幸今夜は寝かせないよ、繁幸今夜は寝かせたくないよ。
時計の針は戻らない。時間の遡行はできない。思い出は思い出であるゆえに美しく、そのぶんだけ、儚い。おそらく犯人にしても、それは十全に理解していたのであろう。なればこそ、一面において女性の母親の声色を真似、また別の一面において小学生男児の声色を真似る、という阿鼻叫喚の荒行に打って出た次第である。
電話を介して性別、年齢、立場の全てを超越するかの如きボイスチェンジをカマした野生のコナン。頭脳は大人、体も大人、理性は獣、その声帯には夢の未来技術が満載だ。
それでも、悪の栄えたためしなし。一連の騒動は犯人の逮捕、という結果で以て幕を閉じた。石器時代であれば許されたかもしれない行為も、現代法治国家においては『強要罪』という無慈悲なタームでパッケージされジ・エンド。彼に待ち受けるのは、一連の犯行に及んだ経緯を屈強な警察・検察官から尋問される、という極度のマゾのみ喜ぶこと許された地獄の日々。
だが、それは自らの欲求を隠すことなく発露したことに対するリスクの顕現であり、甘受すべき義務なのだ。
>容疑を認めているという
警察による自白の強要が問題視される昨今。彼の方が冤罪ではないことを心から祈りつつ、結びの言葉とさせて頂く。
リスペクト:『変態さん、いらっしゃい』
【野生のコナン】にやられました(^O^)
もし冤罪だとしたら大切な何かを失いそうです。
今回も私のニューロンを刺激してくださいました。ありがとうございます。
マスク・ド変態さんが忍ばれます。彼は何処へ・・・
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。