肉欲企画。

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2006年11月26日

天下一武道会 5

最後です。

475 名前: 1 投稿日: 02/10/25 17:48 ID:???

シャアはジオング完全版の高機動性に満足していた。素晴らしい。あの時とは比較にならない。
この機体ならば、どんな奴が相手でも勝てる。そう確信していた。


エンジェル・ハイロウはコアの部分に艦がドッキングしている、おそらく主催者はあの中にいるのは間違いない。
そう拡大モニターで確認しながら近づいていったシャアは、仲間割れしているジムの姿を見つけた。
その姿に酷く嫌悪を感じたシャアは右手のメガ粒子砲を撃ちだした。正確にメガ粒子はジムの右足を吹き飛ばす。
「仲間割れなどせずとも私が貴様らを殲滅する!」
「ジ、ジオングだと?乗っているのは赤い彗星か!」
慌ててこちらを向いたガトーがライフルを撃ちながら尋ねる。片足が吹き飛んだせいか、ジムの動きは鈍い。
「かつてそう呼ばれたこともある。だが、そんなことはお前には関係の無いことだ!」
「むぅぅ!私は軟弱で腐敗堕落しきったお前とは違う!これは全てジオンの再興のためだ。」
「戯れ言を!貴様はそうやって自分の欲望を満たしているだけのムシケラだ!己の欲望をジオンの所為にするな!」
そういってシャアはジオングの両手を発射する。オールレンジ攻撃。
「な、なに・・全方向からだと・・か、かわせん・・グォォォ!!」
メガ粒子砲がガトーの機体を貫くのを見てハサウェイは、クェス・パラヤの最後を思い出した。

478 名前: 1 投稿日: 02/10/25 17:50 ID:???

シャアはガトーの爆発を確認しつつ、微動だにしないもう一機のジムに近づいた。
「君は・・ブライト艦長の息子のハサウェイ・ノアか?」
「そうです・・あなたは赤い彗星・・シャア・アズナブルさんですね。通信が聞こえてました。」
「そうだ。・・君は私とたたかう意思はないようだな?」
「ええ。もうなんかどうでもよくなっちゃたんです。」
「・・それでは君はどうするつもりだ?」
「別に・・しばらくここにいようと思います。父と母の事を考えたいんです。この場所で。
今なら冷静に考えられるんです。不思議ですよね。・・シャアさんはどうするんです?」
「私か?私はコアに行く。あわなければならない人物がいるのでね・・・。」
「?・・誰です?それは?シャクティ・カリンですか?」
「君には関係が無い・・いや、あるかもしれないな。だが、それは後で話そう・・それでは」
そういうとシャアはリングの上に立っているハサウェイのジムを置いてエンジェルハイロウのコアに向かった。
ジオングをエンジェルハイロウのコアに横付けすると、シャアはマシンを降りて船内に侵入した。

480 名前: 1 投稿日: 02/10/25 17:54 ID:???

コアの部分に進入したシャアはまずシャクティ・カリンを探した。
主催者がどこにいるのかは彼女に聞くしかないと考えたからだ。そしてそれは間違いではなかった。
予想以上に広い船内で、少しシャアは戸惑った。どこにいるかわからない。
しかし、少しするとこの船内がある部分を中心に円形の形を取っていることに気がついた。
この中心におそらく彼女は、いる。シャアは走った。




shacty.gif
シャクティ・カレンはシャアがコア室に入ってきたとき、反射的に拳銃を彼に向けた。
「動かないで下さい。私は本気です。」と彼女はシャアに叫んだ。
シャアはその姿を認めると、手をゆっくり挙げながらコア内を見渡した。シャクティとの距離は・・ざっと10メートル。
澱んでいるな・・シャアはそう感じた。部屋のカラーはオレンジで統一されている。さほど大きい部屋ではない。
シャクティのいる場所を中心に管のついた小さなカプセルに入った人間がざっと50人はいるだろう。
不気味な光景だ。リング全体には更に多くの人間が眠っているのだろう。
この部屋はシャアに母親の胎内を想像させた。もっともここで生み出されるのは陳腐な理想論なのだが。
「もうやめたまえ・・子供のお遊びはここまでだ。」
「動かないで!本当に・・撃ちますよ!」
「誤解してるようだが私は君になにかしようというわけではない。君の後ろにいる人物・・彼に用があるのだよ」
「嘘!あなたはロリコンで危険な男だって、あの人はいってたわ!」
やれやれ、ここでもロリコンが仇になるのか・・。シャアはため息をついた。
「確かに私はロリコンと呼ばれる存在かもしれない・・だが今はそれどころではないのだ!アイツはどこにいる?答えろ!」
シャアはそういうとゆっくりとシャクティに近づいた。

482 名前: 1 投稿日: 02/10/25 18:01 ID:???

「イ、イヤァァァ-!!!!!!!!!」
シャクティが怯えて拳銃を乱射する。慌ててシャアは避けようとしたが間に合わない。
右腹部に熱い塊を感じた。
たまらず、シャアはその場にひざまづく。
「あ、当たった・・私・・わたし・・」
そう呟き呆然とするシャクティにシャアは膝をついて、激痛をこらえつつ言った。腹部から血が滴り落ちる。
「ウ・・人を撃った・・ショックで正気に戻った・・か・・さぁ教えてくれ。アイツは・・どこだ・・」
「あ、あの人なら・・そこのドアの向こうにいます・・」
シャクティは拳銃を見つめながら、部屋の奥にある古ぼけたドアを指差してそういった。体が小刻みに震えている。硝煙の臭いが手にこびりつく。
シャアはシャクティが示したドアを確認すると穏やかに、だが少し苦しげに言った。
「わかった・・君はもう・・地球に帰れ・・外にハサウェイがいる・・」
シャアはそういうとドアにゆっくり歩いていった。血の跡が影のように床について残る。かなりの出血だ。
シャアはそのドアの前に立つと、おおきく息を吐き、勢いよくドアを引いた。


鍵はかかっていなかった。
部屋の中は純和風の作りで初老と思われる男がコタツに入ってテレビを見ていた。
この大会の主催者で黒幕である彼の頭は見事に剥げていた。


483 名前: 通常の名無しさんの3倍 投稿日: 02/10/25 18:02
なんとー!!!

484 名前: 通常の名無しさんの3倍 投稿日: 02/10/25 18:03
マイトガイソの最終回を思い出しますた。

485 名前: =○= ◆NqAcguy9YM 投稿日: 02/10/25 18:04
ま、まさか・・・!!

486 名前: 通常の名無しさんの3倍 投稿日: 02/10/25 18:04
そうきたかー(笑)

487 名前: 1 投稿日: 02/10/25 18:05 ID:???

「やはり・・主催者はあなただったのか・・トミーノ」
シャアは静かに、そして哀しげにいった。不思議に脇腹の痛みはもう感じなかった。
六畳一間の部屋の中でコタツに入ってテレビを見ていたトミーノは振り返りシャアの姿を認めると、笑いながら言った。

tomi.jpg
「キングゲイナー最高でしょ?」
そういいながらビデオを巻き戻す。
「君のせいでちょうどいいとこ見逃したじゃないかぁ。まったく。用があるなら早くいいたまえ。」
そういうとトミーノはまたテレビを見つめる。剥げた頭が鈍く光る。
トミーノの冷静な反応に、シャアは苛立ちを隠せない。
「あなたはそんなにガンダムが憎いのか?いや、憎いのは肥大しすぎた市場なのか?世間か?スポンサーか?その全てか?」
シャアはそういいながらトミーノに詰め寄る。脇腹の血が流れて畳に跡を残す。
「とにかく・・あなたは!ガンダムに縛られた自分が憎い!トミーノ=ガンダムに耐えられなくなった。ガンダムを捨てたかった!そのために努力もした!
しかし!もはやそれは不可能だった!大衆の欲望を満たすためだけの無意味な続編が生み出されていく!
あなたはガンダム・・更にそのファンも憎かった!そう!とても憎かった!全ての人が愚かに思えた!
それで天下一武道会を開催し我々に殺しあいをさせた。大衆にもだ!それは復讐だった!いや、正しくは自傷行為だったというべきか!違うか!?」
そこまで一気に話すと、シャアは拳銃を取り出しトミーノの額に押し付けた。
「答えろ!トミーノ!」
「うるさいなぁ・・そんなに知りたいのなら11月2日に上智大学にこいよ。」
まったくもう、とトミーノはポテトチップを食べながらそう言った。ビデオのリモコンを持ちCMを早送りする。
「答えろ!」
シャアはテレビのモニターを拳銃で撃ちぬいた。部屋に銃声が響きわたる。

489 名前: 1 投稿日: 02/10/25 18:14 ID:???

テレビが撃ちぬいたシャアは再びトミーノの額に拳銃を突きつけた。
「答えろ!答えないか!」
そう怒鳴る。シャアの怒りは限界に達していた。引き金に指がかかった!
そのとき!
「オーバーマン!イデオン!ブレンパワード!」
突然トミーノが叫びだす。コタツをひっくり返す。ポテトチップスが畳の上に散らばる。
「ザンボット!ダンバイン!エルガイム!」
狂ったように大声で叫ぶ。そこには先ほどまでの冷静さはなかった。シャアは動揺した。
トミーノはシャアの胸元を掴みながら涙を流していた。
「もういい!終わりなんだよ!ガンダムは!終わらせてくれよ!」
と叫ぶ。それは絶叫だった。心の底から搾り出した・・そんな感じの声だった。
「もともとファーストで終わりのはずだったんだ!それをお前らが!無理矢理!」
くそ、と泣き叫ぶトミーノをシャアは見つめた。さらにトミーノは続けた。
「ニュータイプ?あんなのは幻想だ!でまかせだ!信じるなよ!」
そういうと彼はシャアの胸の辺りに顔を埋めながら掠れる声で言った。
「もう・・いいだろ・・二十年・・間・・・・頑張ったんだ・・・二十・・年・・」
彼は嗚咽を漏らした。シャアには彼の声は自分にではなく他の人物に叫んでいるように感じられた。
シャアはそんなトミノに困惑しつつ、ふと足元に落ちてある新聞に目をやった。
新聞は土曜夕方六時の番組表の欄だけが黒く塗りつぶされていた。


491 名前: 通常の名無しさんの3倍 投稿日: 02/10/25 18:21
ほ・・・本人か!?
期待上げ・・・!

492 名前: 。 投稿日: 02/10/25 18:23
>新聞は土曜夕方六時の番組表の欄だけが黒く塗りつぶされていた。
ワラタ

498 名前: 1 投稿日: 02/10/25 18:44 ID:???

シャアは泣き崩れているトミーノを残し部屋を後にした。
彼に掛ける言葉は何も浮かばなかった。酷く彼が哀れに思えた。この場にもう居たくなかった。
最後にドアを閉めるときもう一度部屋を見渡した。
部屋にはガンダムのポスターが貼られていたが、全てカッターナイフで切り裂かれていた。
プラモデルは全てハンマーで打ち砕かれていた。
トミノはまだ何か叫んでいるが掠れてて聞こえない。
シャアはドアを閉めた。

もうトミーノを殺す必要はなかった。彼はこの先なにもできないだろう。
ガンダムは彼の意思とは無関係に生まれつづける。これから先も・・ずっと。
「彼も・・結局地球の引力に縛られていた・・」
そう呟くとシャアは宇宙に浮かぶ地球の青さを思った。
気が緩んだのかシャアに激痛が蘇る。脇腹をそっと手でなぞる。血が・・止まらない。
よろめきながら来た道を戻りつつシャアは苦痛に耐える。
なんとか元の場所に戻ってきたシャアは、バーストをふかし上昇するとゆっくりとジオングに乗り込んだ。
既に意識が朦朧としている。力を振り絞りジオングを起動させる。船内から脱出すると、宇宙の闇が眼前に広がった。
そこで、シャアは深いため息をついた。
そこにハサウェイのジムが近寄ってきた。どうやらずっと待っていたらしかった。
「無事ですか、シャアさん!シャクティは私が保護しました。ひどく落ち着きがなかったのですが今は寝ています。そちらはどうでした!」
そうこちらに質問するハサウェイに、
「ハサウェイ君・・・全ては終わったよ・・結局何が悪いのか・・私にはわからなくなった・・だがこれだけはいえる・・。
全ては終わりこの大会は二度と開かれることは無い・・・が、私もいささか疲れたようだ・・・君に・・勝利は譲ろう・・」
とシャアはゆっくりと答えた。
「え?何を言ってるんです?シャアさん、どうしたんですか?」
いぶかしむハサウェイの声をききながら、シャアは一年戦争を思い出していた。
あの時アムロ・レイには帰るところがあった。現在の私が帰るべき場所は・・一つしかない。


ララァ、そうシャアは呟いた。

501 名前: 1 投稿日: 02/10/25 18:49 ID:???

気がつくとシャアの目の前にはララァがいた。以前と少しも変わらない姿。
U.C.0079.12月30日・・・シャアのもとから姿を消したあの時と全く変わっていない姿。
ああララァ・・、今まで長いこと待たせたな・・あれからもう何年たったのかわからないよ・・。
君の・・元に・・戻りたい。話したいことが・・たくさん・・ある・・
シャアはそう目の前のララァに話し掛けた。涙がこぼれた。
ララァが微笑んだ気がした。シャアはそっと虚空に手を伸ばす。



私にも・・・時が見える・・・時が・・



「シャアさん!どうしたんです?シャアさん、返事をしてください!」
ハサウェイの声がシャアのコクピットに響きわたる。が、シャアが目を覚ますことはもはや無い。



ジオングのモノアイが消えたのをみてハサウェイは、全てを悟った。
そのころ、地上では荒れ狂う観客に機動隊が突入していて、ファはその光景をガラス越しに見つめていた。
ふと、遠くで人の話し声が聞こえた気がしてファは耳をすました。けれど彼女にはもう何も聞こえなかった。
空耳かしら・・ファはそう呟くとまた外に目をやった。暴動は終焉を迎えようとしていた。
宇宙は相変わらず静寂と漆黒の闇に包まれていて、全ての存在を貪欲に飲み込んでいた。
その中に青く浮かぶ地球はまるで揺り篭のようにハサウェイには思えた。
    




512 名前: 1 投稿日: 02/10/25 19:17 ID:???

みなさま。本当にありがとうございました。長かったですがこれで大会は全ての戦いを終えました。
優勝はハサウェイ・ノアに決まりました。感想戴けるととても嬉しいです。
皆様に励ましのレスを戴いて嬉しかったです。本当に。
これをかく間に、逆襲のシャアを二回見直しました。
それでは
よんでくれた皆様、キャラクター案を出してくれた皆様に感謝の意を表明しつつ・・・



(終)
posted by 肉欲さん at 12:59 | Comment(21) | TrackBack(0) | 日記 このエントリーを含むはてなブックマーク
この記事へのコメント
ほんとに長い・・・。
Posted by uwaaa at 2006年11月26日 14:44
2ゲト
おもしろかったー
Posted by かなぶん at 2006年11月26日 15:12
不覚にも涙してしまった
Posted by at 2006年11月26日 15:44
トミーノ!!

初めはおふざけかと思たけど、ちゃんと納得できるラストがスゴスw
Posted by ラーメン飛行隊 at 2006年11月26日 16:00
感動した。
Posted by at 2006年11月26日 17:33
ガンダム好きで、最近のガンダムの悲惨さを見ると、なんか染みるね。。。
Posted by at 2006年11月26日 18:14
不覚にも感動した
Posted by at 2006年11月26日 20:56
すげ……

こういう、人をはっとさせる、原石があるから2chって好きだ
Posted by at 2006年11月26日 20:59
すげぇ…。
ラストのシャアの幻がカコイイ!!
Posted by 肉好き男 at 2006年11月26日 21:14
楽しめました!!!
Posted by 豚足企画 at 2006年11月26日 21:45
この時代の2chはハカロワといい完成度の高い二次創作が溢れていましたね。
Posted by てん at 2006年11月26日 21:46
凄い
Posted by at 2006年11月26日 22:28
スパコー+SEED+ニュータイプのキラが爆死とかワロスwwww本編3話の時点で西川のジンより強かったのにwwww
Posted by you at 2006年11月26日 23:37
ネタコメとかもちゃんと採用してまとめてるのはすごい
戦う前から戦力差ありすぐぎな試合とか
書いてるほうも読んでるほうも波乱を期待しがちだけど
独自設定で逆転勝利とかギャグにも走らずに淡々と納得できる結果をだすのが良い

>これでは虐殺じゃないのかと。
で本当に虐殺勝利とか
>ドモン(生身)
で本当に生身で戦って死んじゃうとかゾクゾクするね
キャラが死んだときに「うわ、マジで死んじゃったと」って思ってしまうほどリアリティーがあったし1の情熱はすごい
Posted by ニィト at 2006年11月26日 23:55
ガンダムそんなに知らないけど素直に面白かったです。
Posted by UK at 2006年11月27日 00:28
最初は笑えるだけの文章かな、と思ってたが最後まで読んで感動した。よかった。
Posted by M2 at 2006年11月27日 02:09
中身のある、しっかりした書き手の方ですね。長かったですが、それも楽しめました。肉欲さん、ありがとう
Posted by ヒカル at 2006年11月27日 05:14
感動したぉ(。´д⊂)

途中、カミーユに肩入れしてんのかと思ってハラハラしたけどw
最終的にシャアの人生をうまく用いてトミノのヤミ(闇・病み)に迫る辺りは圧巻。
点が線になる瞬間。
収束されていく快感。

ここで出会えたことを本当に嬉しく思う。
Posted by さかな at 2006年11月27日 15:45
感動しました。今日も2回くらい読み返してました。
Posted by at 2006年11月27日 17:54
あ、ここ肉欲企画だったんだ。忘れてた。
シャアGJ!
Posted by oui at 2006年11月27日 18:22
笑いとか、そんな感じのラストかな、と思っていたけれど、凄いな、コレ。
リアルに、感動した。
Posted by at 2006年11月27日 18:52
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