人が『カッコよく見られたい、可愛く見られたい』と思う気持ちはすごく自然なことで、それは彼氏・彼女がいようともどれだけ歳をとろうとも、ある種とめどない欲求だろう。こういう気持ちは春に高まる傾向にあるらしい。春。そう出会いの季節。
この季節には女子の化粧は通常の3倍濃くなり、男子の髪の毛は日常の45%増しで外ハネする。
『第一印象を少しでも良くしとかないと!どこに出会いがあるか分からないし!』
誰もが抱く心のシャウトだ。
そんな気持ちが負の係数の二次関数の如くスローダウンしていくのが秋。この季節になると、大抵新しい出会いなんて望めない。自分の環境に慣れてダレる。周りの人間に関しては趣味や家族構成からアヌスの皺の数まで知っているものだから、今更別段カッコよくも可愛くも見られようとは思わない。男子は寝癖ばっちりパイルダーオンで登校してくるし、女子の眉毛はアマゾンの破壊された森林よりもぞんざいになっている。自分のコミュニティーの中で性別の垣根が瓦解する季節、それが秋。
「今更周りの女どもに何思われてもいーよ。どうせマンコ臭そうだし…」
これも、秋になると男の誰もが抱く心のシャウトだ。
そんなもんだから生活の全てがぞんざいになる。身だしなみが崩れていくのは当たり前、オナニー後のティッシュが皮のあたりにうっかりしていることもあり得るし、コンビニに寝巻きのまま赴くこともしょっちゅうよ。とかく異性の目を気にしなくなった人間というのは豪放になる。法に抵触する行為以外ならなんだってやる。
ただ、心がぞんざいになっているものだから、思わぬ小さな落とし穴に盛大に転んでしまうのも、やっぱり秋。個人的な話で申し訳ないのですが、先日目覚めて喉の渇いた僕が、そのまま在りし日のTOSHIのように壮絶な寝癖ヘアーで近所のコンビニに赴いた時のこと。
僕はジャージのような半パンの中に手を容赦なくブチ込み、下腹部の下(大体チンコの辺り)を激しくチョーキングしながら商品を選ぶ。この土地に越してきて早幾年、このコンビニのラインナップも完全に把握していた。店長は地獄のようにワキガで、5時からアルバイト交代、深夜は学生のバイト……と、およそこのコンビニに関して知らないことはないという、まさに『コンビニ界のジェダイマスター』のような気持ちで店内をウロウロしていた。
そう、全ては過信・慢心のなせる業。ぞんざいになった心は、突然に不幸を運んでくる。僕はコンビニのカゴを携えレジに並ぶ。すると視線の先におかしな光景、というか、どう見ても見覚えのない店員、とてもキュートな、譬えて言えば有無も言わさずチンコを捻じ込みたくなるくらいの美貌、ロマン輝くエステールのような、とでも言えばいいのか……とにかくそんな感じでココ山岡のように輝かしい店員が僕の列のレジに鎮座ましましていた。
「ふざけるな!データにないぞ!」
帝国の逆襲。ぞんざいな僕の下に突然現れた戦士、アナキン。顔面偏差値およそ68。ふざけるな、金返せ!思わず僕は心の中でシャウトした。
ぞんざいな精神はこんな悲劇を巻き起こす。もしすこしでも己を律する気持ちがあれば、この店員さんにマシな印象を与えることも出来たかもしれない。けれど今の僕はTOSHI(髪型が)でHIDE(チンコのあたりの手つきが)だ。装備は『ぬののふく』だけ。オプションは『余った皮』。勝てねえ……。
とにかくぞんざいな精神はよくないものです。けれど道は前にしかないのであり、ここで後悔しても時既に遅し。良薬鼻に臭し。とにかく今は被害を最小限に抑える努力をするべきだと思う。僕は少しでもマシに見せようと、マックスマラな寝癖をペタペタと押さえつけ、かつまた、少しでも自分がカッコよく見える(であろう)表情の角度を作り出すべく微調整した。明日につなげる敗北、誇りある撤退。そんな騎士道の精神が僕の心で乱舞する。
「いらっしゃいませ!」
ようねえちゃん。オレな、今はこんなナリやけどな、ホンマはもっと力(リキ)あんねやで。今はこんなやけどな……。ホラ、銭だってあんねや。これ見てみ?カードも持ってんでぇ……VISAやでぇ……!見るなや……『TSUTAYA』の部分は見るなや……。
など、思いは千々に乱れながら僕は顔面を右斜め下(イチオシの角度)にキープすることに余念がない。もうこうなればサックリと支払いを済ませてラン&ガン、彼女の記憶に残るよりも先にこの場から風と共に去りぬ。それが僕の歩く道。
と思ってチラリと僕のカゴを閲すると、なんとまあOH MY GOD。カゴの中には100円パックの緑茶、これはまあ及第点として、なぜか朝食にチョイスしたバナナ。そして夜に食べようと思って放り込んだ魚肉ソーセージが惜しげもなくズドンと存在感をアピール。バナナとソーセージ、全力で棒と棒。西の大関東の横綱揃い踏み。
更に間の悪いことに、何となく『あ、面白そうだな』と思ってカゴの中に放り込んだブツ、『実録・本当にあったHな話』という本が逃げ場もなく鎮座ましましていて更に阿鼻叫喚。バナナ、魚肉、畳み掛けるようにエロ本。日独伊三国協定、ABCD包囲網の完成した瞬間だった。死にたい、心からの叫びだった。
「記憶される前に逃げよう――そういう風に思っていた時期が僕にもありました」
肉欲、後に述懐。
ここまでの破壊力(しかもAM7:30)に、さて、誰が耐えられるかな?彼女の胸にキラリと光るのは『研修中』のまばゆいバッチ。彼女は間違いなく、いい店員になるだろう、超えてゆけ!オレの屍を!なぜだかそんなことを思った。
「お会計は903円になります」
僕はお釣りの97円を受け取ると、募金箱に7円寄付し、残りの90円を握り締めながらバナナを静かに頬張った。
塩の味がした。
ぞんざいな精神、センチな季節に誰もが陥るスィートトラップ。
僕の経験を無駄にすることなく、どうか皆さんはしっかりと強く強く生きて下さい。
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■0:30 追記
『J( 'ー`)し<たかし、弁当できたよ』
J( 'ー`)し ごめんね、昨日より手抜きでごめんね
(`Д) うるさい しね オレの好きな卵焼きがねえ
J( 'ー`)し ごめんね、かーちゃん不器用だから ごめんね
(`Д) こんな弁当 まずくて くえるか
J( 'ー`)し ごめんね、油っぽいよね カロリー高くてごめんね
(`Д) だからオレがピザになるんだ しね ぼけ
J( 'ー`)し ごめんね たかし ごめんね
(`Д) ばばあ 金よこせ コンビニで食う
J( 'ー`)し ごめんね ごめんね
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というような心境で明日の分の弁当を作りました( ^ω^)

特に意味はありません。
コンビニ界のジェダイマスターの他にもアヌスマスターの称号も持っているんでしょうね。
いや〜,面白すぎて思わずブックマークしてしまいましたよ…(((^^;) おいおい全て読ませてもらいま〜す(>_<)
つか学校で童貞の僕を捕まえて
「ヤリチン」
なんて言う非道極まりない噂が…orz
に、手を叩いて爆笑しましたw
大好きです!!
それでもやるしかないじゃないか!
死ねる。
次に東京に来た時は麻雀オフか実況を希望してみる。
遅ればせながら、お誕生日おめでとうございました(*^_^*)