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お名前
鹿児島の底辺
件名
聞いてください。
本文
始めまして。いつも楽しく拝見させていただいてます。鹿児島の底辺と申します。
早速ですが肉欲さん!実はわたくし、先日彼女をNTRてしまいまして!
『記憶がなくて気付いたら…』
なんて、んなアホな!どんだけ相手短小やねん!な言い訳をされまして!
それでも好きだ(キリッ という私の願いも虚しく、『あなたはもっと幸せになれる…』とか言われてフられてしまいました。
それでも嫌いになれないんです。女なんて謎過ぎます。
肉欲さん、教えてください。愛を。
※何故か肉欲さんに聞いて欲しかった私の愛を受け止めてください。
心を鬼にして結論から述べておくが、件の彼女の発したとされる
『記憶がなくて気付いたら…』
これが真実のことであれば、僕は即座に自害しても構わない。要するに純度100%のピュアモルトなウソ、口当たり濃厚、脳にガツン!とくるフレイバー、絶対零度の完全犯罪。
「か、彼のより大きい

コミコミ。ここまで込みで!あなたの元・彼女は野望と欲望の大車輪、心の地獄車、にノリノリで跨り、夜を夜とてグルーヴ!していた筈なのである。
僕としても、敢えてまでこんなことを書くのは非常に辛い。だが、まずは我々の認識を一致させておかねばならない。どうか気軽に許して欲しい。
許して頂いたついでに言わせてもらえれば、僕は詳細に拘る人間である。一口に寝取られた、といっても、その内実は様々だ。同じ寝取られは2つとして存在せず、全ての寝取られには、各々、激しいソウルが宿っているに違いない。大きなカテゴリとしては 『NTR』 というそれに帰納していくのだとしても
「では、果たして、どんな寝取られだったのか?」
因果を背負った身としては、その辺りも看過できない。野に咲く花の名前に意味があるのなら、寝取られの全てにも、意味が眠る。
花の名前、その由来。
寝取られのディティール。
愛の意味を語る前に、今日は、そこのところに思いを馳せよう。
・・・
鹿児島中央駅。
この名称を自然と受け入れるようになって、一体どれくらいの時が流れたのだろう。幼い頃、私の耳に馴染んだそれは、確実に『西駅』であったはずだ。
ニシエキ。
その響きは、実際、未だ懐かしく馴染みのあるものだ。
だけど、耳朶に蘇るニシエキ。
それは西駅でも、にしえきでもなく、ニシエキ。
いつの間にかそうなってしまった。
それが一体、何を意味するの
自分に向かって問いかける。
答えはどこにも見つからない。
「待った?」
瞬間、当て所のない思索が立ち消えた。戸惑いを気取られないよう笑顔をつくる。彼もまた、鷹揚に微笑んでいた。どこにもある、どこにもない、彼の体温、その息遣い。私はそれに惹かれ、それが好きで、それを慈しんでいた。愛していた。
そう、愛してすらいたのだ。
確かに、私は。彼に、愛を。
「かき氷、食べる?」
いづろ通の電停を降り、ドルフィンポートに向かう道すがら、彼はそう聞いた。桜島を正面に据えた通りの右手には製氷店がある。そこでは夏になるとかき氷が売られていた。
「いちごにする?メロンも美味しいかもね」
私が答えるより先に、彼はあれこれと思案を巡らせる。優しい人なのだ。それは、本当に、不器用なほどに。優しくあることが何よりも優しいことだ、彼はそう信じて疑わない。素朴で、真っ直ぐで、ときとして痛いくらいに、優しい彼。
破砕された氷が青く彩られてゆく。
私はそれを手に取り、スプーンで氷を突き刺す。掬って、食べる。
「おいしい……」
その言葉に、彼は嬉しそうに頷いた。
でも私の口内に、氷はもはや、どこにもいない。確かにそこに氷はあった、そんな実感だけを残して、青い氷は儚く消えた。
「今日も噴煙がすごいね」
錦江湾を望みながら、ポツリとそんなことを呟く。その言葉には何の感慨も潜んではいない。雨を雨というように、晴れを晴れと認めるように、夜を夜として過ごすように。事実の確認、現象の推移。
火山灰。桜島から降り注ぐ、灰。それは灰とは名ばかりのもので、ほとんど砂利のようだ。目に入れば痛いし、どれだけ窓を閉めていても、家に帰れば床がざらつく。遠くにあって、風に舞い、近づくと見えなくなり、だけど確かにそこにある、灰。桜島の火山灰。
目の前に映る桜島の噴火も、そのことを口にしたのも、だから、私にとっては意味のない、本当に下らない、言葉未満の発声でしかない。
気づけば彼は、私の肩の辺りを優しくはたく。
見えない灰を叩いて濯ぐ。
大丈夫だよ、とでも言うように、柔らかく笑う。
緩やかに、穏やかに、曖昧に確実に、笑う。
彼は、私の隣で笑う。
笑う。私も、それにつられて。
・・・
「まだ飲むの?」
ここは何軒目の居酒屋なのだろう。浅くない酔いが、頭の中で理性と秩序とを駆逐してゆく。弛緩しきった表情を垂れ流しながら、目の前に無言で佇む焼酎を飲み干した。
「えっへっへ……へえっへ……ええへ」
想いが言葉になろうとしない。しかし、そもそも言葉にしようとした想いなど、どこかにあっただろうか?痺れ摩耗する思考の中、どうして自分が笑っているのか、考える。だが記憶は、思念は、芋と黒麹の渦の中に飲み込まれていくばかりで。
「送るよ」
左頬に伝わるカウンターの感触。ひんやりとしていて、やけに気持ちがいい。右目を開いて相手の顔を見遣る。丁寧に整えられた眉が、白目がちな眼が。努めて冷静な色で私のことを射抜いていた。
カウンターの表面が時間と共に温くなる。
地肌と木目とが感覚の中で同化していく。
最前まで確かにあったはずの温度差は、もう、どこにもない。
「おくっ、て?」
その男は、私の腰の下辺りに手を差し込んだ。どこにでもある、ここにしかない、無骨な感触。私は男の脇の辺りに頭を預け、深呼吸をひとつ。好きでも嫌いでもない、饐えた匂いが。鼻腔を貫き、呼吸に消えた。
・・・
適度に優しく、適度に乱雑に、身体を貫かれながら私はそっと、考える。目の前の相手に『私のこと、好き?』と言問えば、一体どんな言葉が返ってくるのだろうか。そんな益体もないことを、無意識的な喘ぎの中で、そっと、考える。
雑念の中、男が口を近づけてきた。その意味するところはひとつだろう。私は、彼と何度となく交わしてきた行為を、その幾百度を行ったこのベッドの上で、彼以外の人間と、その初めてを刻むべく、男の口を招いて受ける。唾液と、アルコールの残滓とが混じった、名状しがたい味わい。好きも嫌いも形容できない、不明瞭な口当たり。
「気持ちいい?」
バカがバカである所以は、きっと、バカだからだ。ただその対象、いわゆるところのバカが、目の前の男なのか、あるいは自分なのかは、よく分からない。確かなことがあるとすれば、そんな簡単なことすら分からなくなるくらい、私が人事不省に陥りつつある。そのことだけだった。
「…もち…い……」
暗がりの先、明かりのない中空の向こうで。
男が満足気に笑う顔が、束の間。見えた気がした。
・・・
起きて、窓を開ける。晩夏のねっとりと湿ついた空気が全身に降り注いだ。頭全体に疼痛が纏わり付く。その原因は敢えて探るまでもない。
遥か遠く、建物と建物の合間に。桜島の噴煙が見えた。いずれあの煙も、灰も、風と共に流されて私のところへやって来るのかもしれない。
その時、私は、いまこの目で見るあの噴煙のことを。
少しでも思い出すことがあるのだろうか。
あの噴煙と、来るべきその灰とは、同じだ。それは距離が違うだけで、私も、あれも、何も変わらない。いま、この瞬間、確かに、ここに、あすこにある。
私は笑う。
笑ってそっと、目を瞑る。
いつかどこかで見た、でもイメージの中にしかない噴煙を思い出しながら。火山灰を瞳に迎え、痛み中でじんわりと、泣いた。
・・・
鹿児島ニシエキ、現在の、鹿児島中央駅。洋服店の前で、私はぽつねんと彼を待つ。
彼、かれ、カレ。
あるいは、もう、どの呼称も相応しくはないのだろう。
西駅が中央駅になって、西駅は、ニシエキになった。あの日、青く、青すぎたかき氷は、もうどこにもない。
それらのことと、私の決心の正体とには、何らの関係もない。
ただ、関係ないということだけが、ひたすらに関係しつづける。
「待った?」
私はそっと顔を上げる。
彼は曖昧に笑い、私は鷹揚に笑い返す。
「大丈夫」
いつか、彼と見た桜島の噴煙は。
今ごろどこを、さまよっているのだろうか。
(終)
・・・
たぶん、こういうのが、愛の断片です。
後は察して下さい。
では!
これも一重に愛の形だったんでしょうか
肉さん凄いです
今ほどあなたと一緒に酒を呑みたいと思った時は無い
と言っても彼のほうが浮気したのですが
彼にとっても私にとっても初めての恋人同士でした
私もまだ彼のこと好きなのですが、彼は私といるとずっと一緒に居てしまうと思ってそれが嫌なんだそうです
まだ冒険したいんだそうでなんだそりゃ
相手は後輩で私はいたたまれなくてコミュニティを去ろうとしています
男を信じられなくなりそうです
パンツとのギャップがありすぎる…
でも何回も読み返したくなります。