春、それは出会いと別れの季節。
これを読んでいるあなたにも、まだ見ぬ誰かとのステキな出会いがあるかもしれない。
春、それは誰もが浮かれポンチになる季節。
出会いそのものが素敵であっても、対象の人間性まで保証してくれる訳ではない。浮かれ狂ってしまったあなたの脳髄は、目の前の人間のクズさ加減を見誤ることも、しばしばあることだろう。
春に結ばれ、初夏に別れるカップルが多いのは、概ねその辺りに原因がある。
それを分かっていても尚、人の心は弱い。
『この感情は春の見せる幻想なのだ……』
理性の部分で認識していたとて、一度抱いてしまった恋心は、生半に消え去ろうとしない。
「私だけは違う!この人だけは、違う!」
誰もが一度は抱いたことのある魂のシャウトである。
通念は理解している、だけど自分は、自分だけは例外なのだーータフではない我々の心情は、自らの現況に対し、ソフランよりも柔らかい認識を与えることだろう。
だが、自分自身に優しくしてしまった結果、後に手痛いしっぺ返しを食らうこともあるかもしれない。私だけは例外だ、と根拠のない虚妄を抱いた帰結として、無為な時間と無残な別れ言葉を賜ることもあるだろう。
それ自体は仕方のないことだ。また、それでいいのだと思う。大切なのは傷ついてもなお立ち上がれるか?の部分であり、傷つかない方法を考えることではないからだ。あるいは、もう傷つきたくない!と請い願った挙句、自分以外誰も信じられなくなった……となれば、総体として人生を見たとき、より多くの損失を被ることだろう。
このあたり、実に微妙で繊細な按配である。僕個人としては、人間不信になるくらいなら、愚かしくとも同じ失敗を繰り返す人生の方を選びたいところだ。
それでも、いたずらに傷つきたい!などと願う人はいないだろう。ほとんどの場合 『穏やかで静謐なる幸福を得たい』と考えているはずだ。
「でも、付き合ってみるまであの人がそんな性格だなんて、分からなくって……」
いたし方のないことである。神ならぬ我々だ。相手のことを知りたいとあれば、どうしても相手の懐に飛び込まざるを得ない。裏を返せば
『相手の懐に飛び込むまで相手のことを知ることは難しい』
それが道理だ。
「もっと早く分かっていれば、付き合ってなんていなかったのに……」
けれども歴史にifはない。僕たちはいつでもヒリつくような今、ナウを生きていかなくてはならない。反省という名の燃料を糧に、未来へ向けて。
「だから言ったじゃん!あの男はやめとけってさぁ〜」
誰なんだ!?お前は。
偉そげな顔をして結果論を語る身分の人は、いつだって気楽なものである。
「やっぱりそうだったかぁ〜」
「そうじゃないかと思ってたんだよねぇ〜」
高確率で同時上映される文言であろう。
じゃあ言えよ!もっと早くに!!
「えぇ〜?アチシ言ったしぃ〜」
まあ、確かに言っていたかもしれない。そしてあの時、僕らはアンタの言葉を右から左に受け流していたかもしれない。そこは謝る。スマンコ。
だが、あなたが早い段階で 『あの男はやめとけ』 、そう断じた根拠は?
「え?なんつーかその、雰囲気?」
ダイ、ライトナウ。現代語に訳すれば『急いで死ね』、五文字だ。この五文字を心からあなたに捧げたい。
雰囲気!こんな漠たる論拠もないだろう。全ての反論を封殺するマジカルワードである。
雰囲気、それは実に曖昧で、実に掴みどころのない概念だ。類義語は "空気感" "フィーリング" などの文言である。使い勝手が良すぎるがゆえ、誰もが気軽に使いがちなワードだ。
当たり前のことだが、いきなり 『雰囲気!』 だなんて言われても、こちらにはよく分からない。それは誰かの抱える "主観" の話だからだ。
A「これ、気持ち悪い!」(主観の表明)
B「そう?どこが気持ち悪いの?」(主観を客観的に説明して、との促し)
A「いや、気持ち悪いし!」(主観の表明、アゲイン)
猿である。エテモンキーのやり口だ。主観は主観として尊重する。だがそれを外部に発露するのなら、理解を得んと欲するなら、目の前の相手に伝わりやすいよう "客観的に" 説明する努力をするべきなのだ。気持ち悪いから、気持ち悪いし!気持ちは分かるが、それではまるでイクラちゃんレベルの問答である。
A「だから言ったじゃん、雰囲気で分かんなかったかなぁ〜」
B「雰囲気って、どういう?」
A「だから……雰囲気!分っかんないかなぁ〜(笑)」
僕が某国の総書記であれば、Aさんをコルト・アナコンダで仕留めたとしても余裕で無罪判決を下すだろう。相手の過去を否定するなら、相応の言葉を持ちあわせて然るべきだからだ。主観を主観のまま乱暴にぶつけるようなやり口は、あまりにも悪辣である。それは誰かの傷口に塩辛を塗りたくるような行為なのだ。どうか気をつけて欲しい。
A「やっぱりねえ。最初から嫌な予感はしてたんだよ」
B「えっ、どういうところで?」
A「色々あるけど……あの人と初めて会った日、爪が伸びっぱなしだったの見ちゃってさあ。『あ、雑だな』って思ったの。その前提があったから、とにかく色んなところに目がいっちゃってねー」
主観を客観的に説明する、とはこういうことだ。別に間違っていてもいい。ただ
『自らの感情と向き合い、分析し、それを体系的な言葉に翻訳する』
他人のためにこれが出来る方は、紛れも無く優しい。
B「爪、か……確かに見落としてたかもなあ」
A「ま、個人的な意見だけどね……」
B「ううん、ありがと!次からは気をつけて見てみるよ!」
結果として "学習" が生まれる。浮つく心は消えねども、全く同じ場所で躓くリスクはグッと減ることだろう。また違う場所で転ぶこともあるかもしれない。その時はその時で、違う角度から学習をできれば、それで良い。人生とはきっとそういうものの繰り返しなのだから。
「話は分かりました。これからは自らの混沌なる気持ちにロゴスを与える努力をしてみます。それはそれとして、『こういう男はよしておけ!』みたいな客観的な基準、そいつは存在するのでしょうか?」
難しい質問である。当意即妙な解答を打ち出したいところだが、同時に煩悶も覚える。
「単純な言葉で提示できてしまう画一的な基準で、とある誰かを判断してもいいのか?」
懸念を拭えないからだ。人はそれほど単純なイキモノではない。
最大公約数的な視点からすれば
『爪の手入れもしていないような男は、雑』
おそらくこれは正しい。
ただ、もしかすると
『単純に女性経験に乏しく、そういうところまで頭が回っていなかった』
この可能性もあり得る。
もっとも 「そういうところにこそ頭を回して欲しいんデス!」 と言われれば、それまでなのであるが………。
まあ、しかしながらだよ。爪の話は一例に過ぎず、かかるチェックポイントは枚挙に暇がなくわけなんだけれども、例えば水まわりを綺麗にしておくだとか……色々あるにせよ、だ。ある程度の場数を踏めば、そんなもんは打算と理性で上手く取り繕うからな。
『こうしときゃええんやろ?』
かかる小賢しい考えのもと、テンプレートを踏襲しているに過ぎないっつー話だ。
それは集合知から逆算された、男サイドによる "嫌われない努力" である。もちろんその努力は尊いし、それをするな、とは言わない。だがそれはあくまでも対面的な "装い" に過ぎない。つまり
爪が短い→安心
水まわりが綺麗→安心
こうはならない。それはただ、
『爪が短かった』
『水まわりが綺麗だった』
という外面的な事実の表れでしかないのである。相手の繊細さやマメさ、誠実さを担保する素因では一切ないのだ。
故に、"この男はやめとけ!ポイント" みたいなものを摘示するのは、同じ男である僕からしてみても、不可能に近い。見えやすく分かりやすいポイントは、それが見えやすく分かりやすいがゆえ、簡単に修正をかけられるからだ。そしてあなた方が知りたいのは、おそらくもっとディープな部分、軽々に修正をかけること能わない、泥臭く生々しいスウィートスポットの話の筈である。
そいつを簡単に知ろうとすること。
それこそ、神の領域に片足を突っ込む行為だ。
ともすればそれは、バベルの塔をぶっ建てんと試みるくらい冒涜的なマインドなのかもしれない。
だが僕は、永年の男としての経験の末、一つの仮説を抱くに至った。仮説、と書くのは、未だ有意な統計結果を集積していないからである。よってこれから書くことは、正しいかもしれないし、間違っているかもしれない。
あくまでもその前提のうえで読み進めていって欲しい。
『男がオカズを選ぶ時の真剣味と、恋人を選ぶ時の真剣味は、正比例する』
この学説を提唱したいのだ。いわゆる "オカズから読み解く男ゴコロ" というヤツである。
男は手淫をする生物だ。そのことはかつて当ブログでも何度となく触れた。好きな人がいようと、恋人がいようと生涯の伴侶がいようと、男はオナニーをする。
『それはそれ、これはこれ』
どれだけ異性に詰られても、僕たちは強くそう主張するだろう。違うのだ、と。お前と手淫とはまるで別ステージなのだ、と。ブロッコリーとカリフラワーくらい違うんだぞと、男は切々と弁明するに相違ない。
男は手淫をする生物である。それは確かだ。だが、誰もが同じような気持ち、決意で以てオナニーに臨む訳ではない。
『射精』
ゴールは一つだろう。誰もがそのゴールに向かって邁進する。けれど、そのゴールへの至り方、そいつは正しく千差万別なのである。だからこそ、そのプロセスにこそーー生々しい人間性。これが立ち現れてくるのだ。
さてニック、それを前提としたとき、君の歩み方は如何ほどだ?
「えー?まァー適当にxvideoで探して?5分くらいで『オッ!いいじゃん』ってのを見つけてェー?そいでまァ、シコシコッ……と」
デデーン!ニック、アウトー!お察し頂けるだろうか、こういう男は異性の選び方も確実に雑だ。適当に知り合った人と、適当な気持ちで、適当に付き合う。快楽へのプロセス、歩みの進め方が、極めてダイレクトであるからだ。
ではニック、君はそのオカズをリユース(再利用)するのか?
「まちまちッスね。気に入ればスルこともあるけど……他でいいのが見つかれば、そいつでシコシコっといきますよ!シコシコっとね!」
デデーン!ニック、アウトー!このやり口なのだ。全てが使い捨てなのである。後にはぺんぺん草も残らない。使っては忘れ、使っては捨てと、まさに大量消費社会の申し子のような無慈悲な行い。きっと異性についてみても
『他でいいのが見つかれば、そいつにいきますよ!』
憚りなく宣言することだろう。
ではボウ、君はどうだ?
「ぼ、僕は……納得がいくオカズを見つけるまでだったら、何時間でもかけますね……あれでもない、これでもないと、試行錯誤するの、嫌いじゃないし……そういうのも含めて、っていうか……」
成程。して、それでも見つからないときは?
「頑張ります……!きっとこの世には、僕に抜かれるために待ってるオカズが、絶対どこかにある筈だから……どこにいても、必ず見つけ出して……抜く!」
マーベラス!素敵!A+をあげよう。オカズ・サイドの気持ちも忘れない、熱いパッションを持った男の言論だ。彼の生き方には、抜き方には丸ごと "真実" が詰まっている。
ではボウ君、その抜いたオカズは、どうする?
「紙媒体なら実用分、保存分と2冊用意します。デジタルデータなら最低でもパソコン本体、外付けのHDDには保存します。また、デジタルデータの場合、抜く毎に回数をカウントして、ファイル名の後に星印を付けるようにします。『緊縛母さん、あんたまるでお歳暮のハムだよ!★★★★★』といった具合に。こうすることで、自分がそのオカズで何回抜いたのか……そいつの可視化を図るわけですね」
麒麟児は得てして野に眠るもの、か。ボウ君、過不足のないアンサーだ。満点をあげよう。
ボウ君、他に気をつけているところはあるかい?
「動画の場合、早送りなどは厳禁。これは絶対です。最初から最後まで、まずはきっちり見る。しこうして後、己の中で "オナニーの全体像" をイメージする。僕はこの作業を 『組み立て』 と呼んでいます。組み立てが終わっても、すぐに本番に臨むわけではありません。出来る限り身を清め、リラックスします。涅槃型のポーズで横たわり、右斜45度にティッシュを用意します。枚数は、4枚から5枚。リモコン、ないしマウスは、左手に添えるだけ。そこまでの作業が整ってから、初めて行為がスタートするわけです。まずは、一擦り。次いで、二擦り。次第に時間は濃度と粘度を増し、感覚の全てが画面と右手と、荒い呼気と。それに収斂されていくのです。僕の精神は画面の向こうの男優と同期します。世界が一つになり、一つが世界になる感覚。分かりますか?分かりますよね、当然。漸次高まっていく射精欲、しかしまだ "組み立てた" 射精ポイントには到達していない。出すか?出すべきか?否、断じて否。決して易きに与することなかれ。汝、真実の涅槃に達せんと欲する可き也。形而上の釈迦がそう語りかけてくるのです。だからこれは単純なオナニーではなく、己に克つための洗礼、克己の行い、いわばコキニー。コキニーなんですね。そしてコキニーは、自らの組み立てていたポイントに至った瞬間、寸分違わぬタイミングでーー精を放出します。だがそこで終わりではありません。武道の世界には "残心" という概念があります。手淫道も同じことなのです。終わりは終わりにして終わりに非ず、僕はそう考えます。果てたあとも緩やかなる余韻を楽しみ、かつての青かった自分のことを想起する。それは納得のいくまで何十分でも、何時間でも。そして真実の意味で満足を得られたとき……僕のオナニーは、コキニーは、正しき終わりを結ぶのです。以上です」
オーケー、ありがとう。ニック、どう思うね?
「マジきめぇっすね」
ニック、言葉が強いぞ。そういう時は 『こだわりの強い人ですね』 と言うんだ。
おそらく、そのこだわりの強さは等しく一般生活にも敷衍していくことだろう。前者が雑に恋人をチョイスするように、後者は強い愛情と強い執着とを以て、どこかの誰かに接していくに違いない。
そしてこれは生き方の是非の問題ではなく、自分と他者との向き合い方の問題である。どちらに優劣があるという話ではないことを、念押ししておきたい。
季節は間もなく春を迎える。
春、それは出会いと別れの季節だ。
「もう、男選びで失敗したくない!」
そう願う人もいるだろう。だけど人間性は外からは中々見えてこない。従って僕たちは何度でも迷い、立ち止まり、ときに躓く。
だから、躓きたくないあなたにおかれましては。
是非訊いてみて欲しいのだ。
「ねえ、あなた……どんなオナニー観、持ってる?」
厳しい冬の向こうに、確かに春は待っている。
その春が、あなたにとって彩り豊かなものでありますように。
僕は心から、そう願っている。
賞賛の一言だ。
自分の場合は一度使ったオカズのリユースを絶対にしない人間なのですが、これは肉さんの評価としてはニック以下、ということになってしまうのでしょうか?
【肉欲より】
そこに矜持があるか否か、ですね。
感動した。
ただボウ君は2次エロは守備範囲なのか否なのか。シコシコーッ!ってね。
論証すれば意外と売れるかもな、と一瞬思ってしまった
前日高校生の性別分類上メスと呼ばれるナオンと別れたばっかりの男ですが、
とりあえず、悲しさだけしか残らない結末に、
潰されそうな感じだったんだけども、
少しだけ、頑張れるような気がしてきたよ。
おかず云々は別な話として、
誰かにたいして腹くくる位の意気込みとか、その対象にぶつける思いだとかが、
大事にしなきゃいけないんだよね。
でも、文章の流れからいって
A「爪、か……確かに見落としてたかもなあ」
B「ま、個人的な意見だけどね……」
A「ううん、ありがと!次からは気をつけて見てみるよ!」
AとBが逆な気がします・・
勘違いだったらごめんなさい(/ω\)
(単に最初に発言した人をAにしたのデスカ?)
【肉欲より】
ミスでした!ありがとうございます。
後はそこから考える。