早速ではありますがお便りを紹介します。
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[件名]
お暇があれば回答願います
[本文]
本日十年来の友人と席を挟み飲んでいたところ、一つの議案に対し口論となりました。互いに而立を超え、若かりし頃のようにはいかず、いざ行為に及ぶに至って中折れした際に取るべき男の有様について、友人は言い訳無用、一言詫びて寝る。私は責務を果たすべき(ク○ニしろよオラァ!)。と互いの意見の相違に歩みよりは無く、結論には至りませんでした。お暇があれば肉欲殿の意見を伺いたく、メールさせていただきました。
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肉体と精神との距離は、悲しいことに、年々乖離しがちである。両者が同じ速度で成長・衰退していってくれれば……とは誰もが願うことだ。だが、実際は精神よりも早く身体の方が老いてしまうことが多い。
心の在り方はフォーエバー・ヤング。
しかし身体は、完膚なきまでに中年期。
辛くて切ない相違である。いつまでも若い気持ちでいたいと願うのは自然なことなのかもしれない。それでも現象は止まらない、止められない。魂が老いの速度を緩めても、細胞の老いは少しずつ、でも確実に、進んでいくものだ。
もちろん皆様におかれましても、 "一般論" としてそのことは認識されていることだろう。人は誰でも歳をとるーー手垢が付きすぎて、最早誰も見向きもしない概念だ。
だが、具体論としてはどうか。それは要するに 『自らの問題』 として "老い" と向き合うことができているか、という話である。
「言うても俺、まだ若いし……」
認めない、認めたくないものなのだ。それは誰にも卑近な精神作用である。
『他の一般がそうであったとしても、自分だけは、違う』
思い、願ってしまうところだろう。在りし日の記憶が華やかであればあるほど、自らを客観視できなくなってしまう。
かくして悲劇は量産される。
かつての滾る情念と共に、かつてより老練されたテクニックでもって、異性を口説く。無事に "こと" の前段階にまで駒を進める。そして迎える本番の刻ーー男ははじめて知る、はじめて、至る。
「あ、あれ……おかしいな……?ハハッ」
最早自らの身体が、かつてあった "それ" とは、遥か遠い地点にあることを。
「なんか、今日は調子が悪いみたいだなあ……」
男は琵琶法師ばりのピック捌きで三味線を弾くだろう。『今日は』という文言に熱いイントネーションを置き、事態の矮小化を図るに違いない。切なくて苦しい、哀愁のエピソードだ。
もっとも、こんなのは女性の側からすればたまったものではない。あれだけ情熱的に口説いておきながら、いざ決戦の地に赴かんとした刹那、対戦相手が中折れした……そもそも勃起すらしていない……陰惨なる詐欺事件である。
「ふざけろ!!」
叫んで、鎌を片手に当該男性のイチモツを切り落としたとしても。僕が判事であれば余裕で情状を酌量する。事ここに至っては、どちらが被害者なのか分からないからだ。
ベストな解決策は、やはり "自らの身体状態をつぶさに把握する" というところにしか存在しない。
迸る情熱は若かった頃と同じく、この胸にある。
しかし現状、勃起は難しいのではないかーー
このラインの見極め。
男女の営みにも 『ハインリッヒの法則』 を導入すべきだ。
【参照】ハインリッヒの法則
ハインリッヒの法則 (ハインリッヒのほうそく、Heinrich's law) は、労働災害における経験則の一つである。1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するというもの。
インザベッドに際し、唐突に勃起不全になる……ということは考えづらい。その陰には29の軽微な素因があり、またその背後には、300の因子が隠れているはずなのだ。
「ん?何か違和感があるな。でも大丈夫だろ!俺もまだまだ、若いし」
ダウトなのである。負け戦はその時点で始まっているのだ。
「気持ちはいつまでも若いつもりだけど……無理は、やめておこう。今日は穏当に帰るとするかな……」
肉体が老いるに任せるほかない性質である以上、僅かにでも 『ヒヤリハット』 を覚えた瞬間、あなたは即時撤退の決断を下した方が無難である。
「今日は帰るよ(ニッコリ)」
古今東西、常勝不敗の秘訣は 『負けない』 ことだ。勝てない戦に臨まなければ、あなたは自然と無敗の兵(つはもの)となれる。中折れの憂き目になど遭おうはずもない。
しかし、そんなのは限りなく理想論でしかないだろう。
男「何か違和感が……いやいや、いける、いけるはず!」
女「どうしたの?」
男「なんでもないよ子猫ちゃん。さあ今夜、俺たちの紡ぎ出す肉体言語的熱量で京都議定書を根底から蹂躙するとしゃれ込もうぜ」
それ故、冒頭紹介したメールの如き事態が巻き起こってしまうのだ。賢将たりえない我々は、己の実力を見誤った挙句、意気揚々と負け戦へと出陣してしまうのである。
男「うん?あれ、おかしいな……ハハッ、ちょ!ちょっと、待ってね……」(スコココココ
男「あ、あれれ……エイッ、エイッ……!」
男「アハッ……い、いつもはこんなはずじゃあ……ぐぬぬ……!」
女「な、舐めようか……?」
死なせて欲しい!自害も厭わないひとときだ。『舐めようか』、その響き、その調べ。平時であれば無上の喜びをもたらしてくれるはずの5文字であるが、この時ばかりは中性子爆弾もかくや!の殺傷力である。そして、事ここに至った頃。ようやく愚将は気付くのだ。『端からこれは、負け戦であったのだ』とーー。
さて、質問内容から鑑みれば、ここが分水嶺である。
どうしても勃たない、中折れしてしまった。内心、忸怩たる思いでいっぱいだ。
ではその時、僕らは、どう動く。
A 言い訳無用、詫びて寝ろ!(≒とあえず不貞寝)
B 果たせよ責務、いざ暁の刻満つる迄!(≒事務的に愛撫)
難しい塩梅である。質問された方におかれましても、議論の錯綜したことは想像に難くない。どちらにも一分あるし、どちらも不完全であるからだ。また、A・Bのいずれをチョイスするにせよ、相手側からの
「じゃあ、どうして誘ったのよ……最初からしなければ良かったのに……」
不平不満は糊塗しきれないところだろう。敗戦処理とは、それだけ難しい案件なのである。だからこそ、先に僕は 『己を知り、勝てぬ戦には臨むな』 と提言するほかなかったのであるがーーしかし、議論の段階は既にそこを過ぎ去っているので、再び触れるのも詮無いところだ。
よって、僕はここで第3の選択肢を提言したい。
C とりあえず入れてみる
YOUたちさあ、もう好き勝手やっちゃいなよ!どうせ負けなんだから、いっそ相手の予想を超えて見るのも手よ手。いや分かるよ。そりゃあ人だもの、どうしたって 『とりあえずこの場を穏便に済ませたい』 と思うのは性だ。結果として提示される選択肢は "非を認めて謝る" ないし "とりあえずの快楽を与えんと、前戯だけは果たす" かかる二択になるだろう。それはそれで大事なことだし、優しいと思う。輝いてるぜ。ジェントルだ。
でもさあ、そんなことしたとしてもな、その後絶対に吹聴されるんだよ。『この、中折れ太夫!』 みたいなことを、知人の間で、確実な意味で。
実際中折れした事実がある以上、その蔑称は仕方ない。いわんや中折れした後に謝ったり、消費税みたいな愛撫をした場合、それは取りも直さず
『ごめんね、俺、中折れしちゃったよね、ごめんね』
当人が認めることになるからだ。まあ、中折れしているのは事実なんだから、認めるもクソもねえわけだけども。
そこから逆算しての新提言。謝るでも愛撫するでもない、新たな角度からのキレある攻め、"とりあえず入れてみる" 、これ。これはクルよ。
女(あ、コイツ中折れしたな)「ん……大丈夫……?」
男「え?何が?」(パンパンパンパン)
女(ハ?いや、こいつマジか……!?)「いや、だから……その……」
男「ん?だから、何が?」(パパンパンパパンパーン)
先に勝負の理を申し上げたが、所詮戦いの帰趨など水ものなのだ。たとえイチモツ折れようとも、自らの心が折れなければ、心が負けを認めなければ……勝負の結末、そいつは未だ宙空を揺蕩うしかないのである。負けねば勝ち、否、
『負けを認めなければ負けではない』
そうであればあるほど、先に挙げたAB両案、そのいずれも廃案とせざるを得ない次第だ。分かるか?分かるな。分かったフリをしろ。
だから答えは "強気たれ" 、その一言である。
老いも中折れも、軽率な判断も。全ては過ぎてしまったことだ。考えるべきは目の前の状況をどう掻い潜るか、それだけである。問題をいたずらに矮小化させるべきではないが、さりとて無闇矢鱈に複雑化させる必要も、同じくない。
中折れした事実を前に。
これは相手に対し失礼なのでは?
男として認めるところは認めるべきでは?
先々のことを考え、真摯に話し合う方が良いのでは?
様々な想いが巡って消えることだろう。
だがそんなものは俺からすればまるでクソだ。
『いかに事実をねじ曲げるか』
全開の思考力をベットすべきはその点だけである。相手に誠実である意味・必要など、どこにもない。肝心なのは自分に誠実であること、それのみだ。
男「俺は立っている!立っていた!」
女「え、な、何言ってんの?!」
男「立っていた!立っていた!」
女(そ、そっとしておきましょう)
かように脳味噌を騙すことができれば、あなたは立派な賢将だ。
まかり間違っても、他ならぬあなたが
『中折れしてしまった……俺は思慮浅い人間だった……』
などと認めてはならない。負けないこと、投げ出さないこと、逃げ出さないこと、信じ抜くこと。駄目になりそうなとき、それが一番大事なのだから。無茶苦茶な論法に聞こえるかもしれないが、かつての日本人が100万人単位でその言説を支持した事実があるのだから、僕の言い分は滅茶苦茶正論である。文句があったとしても、それはKANサイドにお願いしたい。
【2012年1月20日AM8:28訂正】
KANではなく大事マンブラザーズでした。ご指摘ありがとうございます。いずれにせよ責任の所在は僕にはない、という部分を明確にできれば本懐なので、さしたる問題はありません。
それでも自らの力量を知り、相手を知り、状況を知った上で。分の悪い戦いを避けることができるのなら、やはりそれに越したことはない。どれだけ詭弁を弄したとて、中折れなんていうのは、する方もされる方も気分の良いものではないからだ。
『じゃあ、その分愛撫で補うから……』
そういう話でもない。あるいはそれは "ちょっとアンタ、イカせればそれでいいとか思ってるの?" という、新たな諍いの火種にもなりかねないだろう。不貞寝するよりはマシかもしれないが、結局のところ泥仕合の様相が浅いのか深いのか、その違いでしかない。泥仕合は泥仕合でしかあり得ないのである。
人は長じる。
長じて、老いる。
それは止めどのないことだ。だからこそ、心だけでも若くありたい!そう願ってしまう精神の在り方を単純な良し悪しで論ずることはできない。過ちを犯してしまうことも、あっていい。
だが過ちを犯すことと、過ちを繰り返すこととは、まるで別問題だ。心の若さゆえに過ちを犯すことはあっても、過ちの再発を若さのせいにすることは、あってはならない。
それは "若さ" という抽象的な問題ではなく、"あなた" という具体的な問題だからだ。
"あなた" にだけ顕著な事象を "若さ" というテーマにすり替えること、それこそ不誠実で卑怯な話なのである。
故に、もしもあなたが今日語ったような問題に遭遇することがあるとして。そのときに A、B、C、いずれの解決策を選ぶのかは、実のところ大した事柄ではない。
肝要なのは
『同じ過ちを繰り返さない』
ただそれだけのことなのである。
「さすがニク……良いこと言うぜ……じゃあニク、ニクはどうやってその辺りのところを克服したんだい?」
してないよ。全然してない。もう何度も同じ過ちを繰り返しててなあ。僕の場合、大体こう、酔っ払った挙句にセックスに臨むことが専らなんですが、そうなるとまあ、立つは立つんですけども、これがもう全然、ビクともイキやがらない、微動だにしないというか……これでも昔は 『下関の三こすり半』 『馬関のウサイン・ボルト』 という二つ名を欲しい侭にしていた筈なんですが、昨今は専ら駄目でなあ、遅いとか遅漏とか、そういうレベルを超越して、動いている最中 「あれ?これはもしかして、こういう動作のヨガか何かかな?」 などと思ってしまう始末でよ、そんなもんだから、大体の場合は途中で 『じゃあ、今日はこの辺りで……』 みたいな感じで終わるわけなんだけども、外面だけ見れば殆ど茶道とか華道の領域。『では、ここらで……』 そんな終わり方、もののあはれ、って感じなんだけれども、それでも、そのことを分かっていてもなお、ミートする感覚を覚えてしまえば、やはりミートしにいってしまう、過去の反省を全く活かせない、いけないニクだよ。
散りぬべき
時知りてこそ
世の中の
花も花なれ
人も人なれ
時知りてこそ
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花も花なれ
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【肉欲より】
失礼いたしました。
マジ向かうとこ敵なしだわー
本当に敵どころか人っ子一人いねーわー
男性は大変ですな