11月から12月に至るこの短い間に、僕におかれましては
『「チンポ美味しい?」とか、間違っても女に訊くなよ』
並びに
『女に対し「ヘヘ、こんなにも濡れてるじゃねえか」とか、絶対に宣言するなよ』
という、人生を生きるにあたっては比較的どうでも良い類の進言をカマしてきたのですが、一応間もなく年の瀬を迎えますので、今日はその辺りの議論に対する暫定的総括を行なってまいりたい、そう考えております。
なお、上述した議論に類似して、過去 『確認を迫る男たち』 という日記において「どうして男たちは『どこに入れて欲しいの?』とか聞いてきやがるのか」 この問題に対し鋭いメスを入れたこともございますので、お時間に余裕のある方は、そちらも併せてご確認下さったうえ当日記を読んで頂ければ幸いです。
それぞれの状況について、問うている内容は微妙に異なれど、我々メンズの抱えるマインドはそう変わらない。それは一体どういう精神性なのか?結論から述べよう。自らの内にある興奮を高めたい、そんなチープな欲求だ。
興奮して、バカになってるんだから、そんな陳腐な台詞を投げるのでしょう?画面越しにそんな声が聞こえてくるようでもある。もちろんその意見も一面において正しい。だが最適解ではない。正確を期するなら、こう表現するべきである。
『興奮してバカになった男は、もっと興奮しようとして、新しい言葉を継ぐ』
興奮しているからその言葉を吐く、ということではないのだ。
興奮していて、だからもっと興奮したい!と請い願った結果、あれらの言葉を投げかける。
前者と後者は似ているようで、実際は微妙に違っている。
前者の場合、男がある一定の興奮ラインに達したら、ほぼ自動的に一定の言葉を吐く、という結論を導く。
しかし後者の場合、一定の興奮ラインに達したが、更に大きな興奮が欲しい!と思った結果、言葉を選び、紡ぐ。
現象の表面だけを見れば、違いの理解しにくい話である。だが、その抱える心情の内実にまで立ち入ってみれば、やはりその両者には厳然たる差異が横たわっている、と言わなくてはならない。
(前者の例)
フェラチオをされて→「超気持ちいい!」
(後者の例)
フェラチオをされて→「超気持ちいい!」→「オウ、美味いか?」
この図式である。
これらの問答に対し、女性諸氏から 「そんな、美味いとか聞かれても、困るし……」 という声が寄せられた結果、過日僕は『愛のエッセンス』という日記を綴り、男性サイドに謝罪を促した。そんなこと訊かれても、女の人だって困るでしょ、と。美味しいわけないでしょ、と。もちろん、あの日記において書き連ねた言葉に嘘偽りは一切存しない。
だが、僕は気づいてしまったのである。
理屈の部分で、どれだけ『ああ、あの行為・言動は、とても荒唐無稽なものだったのだな……日本におけるAV文化の弊害だったのだな……』という事実を認識できたとしても。僕たちの一部は、おそらく永年、手を変え品を変え言葉を変え、ああいう言動を続けていくであろう……と、その事実に。
それはなぜか。
先に僕は『一定の興奮を覚えた先、更なる興奮を求めんとして、あれらの言葉を投げる』と論じた。そしてそのとき、これが今回の日記の肝なのであるが、僕たちは残念なことに……『その言葉』を吐いた瞬間、既に興奮を得てしまっているのである。
『濡れてるねぇ』と投げ、そのリアクションを得たとき、はじめて興奮している……のではない。『濡れてるねぇ』という情念が外部に発露した瞬間、まさにその刹那!我々の興奮の閾値は、MAXに達しているのだ。完全無欠な自己完結なのである。
その意味からすれば、その瞬間における相手の、相手による、相手のための感想など、まるで聞いちゃいない。どんな返答だって耳には届かないだろう。だから、僕は思うのだ。
もしあなたが彼に対し
『チンポ美味しい、とか聞かないで』
『濡れてるねえ、とか一々確認をとらなくてもいいから』
『どこに入れて欲しいの?とか、お前はアレか、知恵遅れか?』
などの諫言を向けたとしよう。
おそらく彼は、その時々に海よりも深く、山よりも高く反省し、その記憶を次に活かすことだろう。その意味からすれば、彼は二度と『チンポ美味しい?』などというファックなタームは投げかけてこないに違いない。
だが、残念なことに、それは『経験則における消去法』でしかない。彼は、あるいは僕にしたって、あなたからの意見を帰納し、抽象化し、一般論的な見地から自らの心情、動機や欲求、などをつまびらかにしようとまでは、思い至らなかった。
『チンポ美味しい?はダメ……と。メモメモ』
せいぜい抱くのはこのくらいの感慨である。だから僕たちは、本質のところで、軽々に同じ過ちを繰り返すだろう。
『(チンポ美味しい……って、バカ!それは言っちゃダメなんだ!ハイ我慢した!俺は我慢した!偉い俺!次に活かせる俺!ステキな、俺!)いやぁ、オマンコが濡れ濡れだねぇ〜(^3^)』
実際の精神作用はこんなものである。なぜなら、僕らからしてみたって『チンポ美味しい?』という問いかけそれ自体に、大した意味など見出していないのだから。
【そんな言葉を言っている、言えている、言うことが許容される】
そのシチュエーションに興奮しているのである。言葉を放った瞬間、全ての情念は興奮として結実してしまうのだ。場当たり的なアンサーソングなど求めていないのである。
その意味からすれば、この戦いには終わりがない。
『○○とか言われても、萎えるんだけど』
と説かれたとして、表面的にその想いは理解できても、話はそこで終わりだ。彼は彼なりの言葉で、再びあなたをゲンナリさせる言動に打って出るだろう。なぜならこの話は『抽象的に、自己完結的に興奮したい』という、実に難儀な病を患ってしまったオスたちへの、切ないレクイエムなのだから。
「乳首、めちゃ立っとるがな!」
「腋毛、剃り残しとるでぇ!」
「とんでもない量のマンカスが出てきおったぞ!」
「アナルがひくついておますなー!」
「見てみい!湿度計の示す値がうなぎのぼりやで!」
「ワイの避雷針もこんなに大きゅうなってしもた!まさにエネループや!ガハハ」
お察しの通り、これらの言葉について、僕らはあなた方からの返答を求めていない。終わりがないのが終わり、これはそういう悲劇なのである。ひとつひとつの文言をたたき潰したとて、すぐさま第2、第3の魔王が現れるのだ。
濡れとるな!
美味いか!
どこに欲しいのんや!
ーーそれらは、並べて自らの世界の中においてのみ結実する名も無き花、虚無の世界にだけ存在を許された、煉獄のおしべ。特効薬は、ない。
「だ、だったらせめて!せめて、ムーディーな表現を、心がけてくれたらば!」
俺たちの定義するムーディーがそれなんだからしょうがねえだろうが!!!それともアレか?お前らはフランス書院の世界の住人にでもなりてえのか?それなら別にそれでいい。俺たちだって優しさの意味は分かっている、親身になって協力しよう。その際、丹念な愛撫の果て、俺はあんたに次のような言葉をギフトするだろう。 『今、私の滾った肉槍が、あなたの熱く濡れそぼった花芯へと、切なくも大胆な侵入を試みんとしております……怒張した私の肉傘は、時あたかも梅雨を迎えられたあなたの熱帯低気圧へと、アメダス……』 オーケー、いくらでも言葉を紡いでやるだろうよ。ムーディーにな!それでもダメか?ムード、違ったか?面倒くさいこと極まりないなマジで……妥協って言葉の意味を考えろよ……。
「つかさー、何もそんな難しいこと言わないから、せめて黙っててよマジで!」
あーそうですか!分かったよ黙っててやるよ!その代わりなあ、いいか!俺らはスケッチブックでカンペ作って、そっから指示出してやるからな!ADのような気持ちで!『そこで舐めて』とか『もっと丹念に』とか『ん?美味しい?』とか、逐一書いてやるからな。モールス信号でもいいぞ。ワイルドさが好みだったら、狼煙だって俺らは厭わん。海上でのセックスとあれば、手旗信号でお前らにメッセージを贈るね。農地でのセックスだったら?その瞬間、どこかの田園風景にミステリーサークルが現出するだろう。俺たちはそのぐらいの気概で臨んでるんだ。お前らももっと、真剣になって欲しい。
自分たちも予期していなかったような言葉、そいつが口を衝いて出しまう瞬間ってのは、確かにあるのだ。マジで。それを積極的に許容しろ、とは言わない。だが、出来れば忘れて欲しい。あんな言葉には何の意味もなかったのだと、努めて無視して欲しいのである。
もちろん、言うべきところはきちんと忠言してくれて構わない。美味しい?とか質問してくんのってマジウザい!と言うのなら、俺たちは黙って従う。
だけど、それを投げかけたときの気持ち、欲求、パッション。そいつを消せ、というのは、どうしても難しい話なのだ。それは、これまで耕した人生史そのものを見直すレベルの、一大事業となってしまうからである。培った、出来上がってしまった価値観は、生半には覆しがたいのだ。これはもう、すまぬとしか言いようがない。
そして僕たちも、苦しいながらも努力しなければならない。圧倒的な射精欲を前に、肥大してしまった精子脳を持て余してしまった我々は、軽々にファンタジックな言の葉を吐いてしまう。だがこれからは、いま一度立ち止まってみたい。その言葉をつぶやく前に、もう一度自らに問いかけてみて欲しい。5W1Hは遵守しているか?と。いや、違う。文法の話じゃない。その台詞は、相手をドン引きさせるものではないか?と、その辺りのところを。
「この前、彼氏とセックスしているとき、『好きだ!愛してる!』って言われて、マジすげえ冷めたわ」
これは先日、昔付き合っていた方と会話しているときに放たれた、驚愕の供述である。彼女に対し好きだ!愛している!と叫んだら、音の速さで冷められたーー最早、何が正しくて何が間違っているのか、まるで分からない世界の話だ。
が、僕には分かる。
「あんたそれ、単純にあんたが彼氏のこと、好きじゃないってだけじゃん」
「あー、そうかもしんない」
結局、あばたもえくぼであったり、坊主のことは袈裟まで憎かったりと、そういうチープな結論だ。大抵の場合、問題の根源は『何を言われるか』にあるのではなく、『誰に言われるか』、そこにしかない。身も蓋もねえ話であるが、それでもそうとしか言いようがないので、仕方ない。
もちろん、大抵の場合だ。かなり好きあっている間柄においても『これだけは許せない』という単語の一つや二つ、あってもおかしくない。俺の話をしよう。あれは遡ること9年前、雪の降らんとする12月のことだったと思う。当時の彼女はドMで、俺はといえば言葉攻めが大好きだった。セックスが大好きであった彼女は、大抵の言葉は体の南半球で勃発する謎の大洪水と共に受け止めて下さった。だからその夜、俺は叫んだ。『この、アバズレが!』 その5分後、俺は半裸で土下座した。アバズレはいかんと、アバズレだけは許せないと、奈良出身の彼女が鬼の形相で説教するシーンを前に、半裸で土下座する俺の姿が、そこにあった。2002年の寒い、寒い冬の夜の話である。
まあ、聡い皆様であればお察しの通り、このエピソードは本筋とはあまり関係がないというか、好きな彼女に向かって嬉々として『アバズレ!』と叫んだ僕の精神状態が、常人のそれと大きく異なっているのだ……という部分、ここを念押ししたかっただけのことである。すぐに忘れて下さって構わない。
奇しくもこの日記を書いている今も、寒い寒い、12月の最中である。
もし、これを読んでいる方の中で。
半裸で土下座をカマすコツ、そいつを知りたい日がきたら。
気軽に俺に訊いてくれ。
肉欲棒太郎…末恐ろしい男よ…
ちんこイビョンホンですわい!
半裸で土下座をカマすコツじゃなくて?
【肉欲より】
修正しました
何か言葉を紡がなきゃいけない、そうじゃなきゃ気まずいと思った挙げ句にでる言葉が、美味しい^^?なんですけど……
あいつらは少し喋りすぎる。
自分が何も考えずに言った事が、相手にとって割と重い事だったりするだろうし。
だから、あくまでもそのパッションをより興奮させる質問は自己完結的で、相手置き去りだから、反感を買うのではと。出来れば相手も興奮させる質問が出来たら素敵なんですけどね
この日記読んでよくわかりました。
自分的興奮したいだけなんだからほっといてほしい。
個人的には『愛してる』より名前を呼ばれるのが一番嬉しいわー