
「キテレツー。サッカーW杯ナリよー」
「黙れこの傀儡が」
「喋ったことなんてないナリ」
俺の名前は奇天烈。字名だ。本名は捨てた。
またこの季節がやってきやがった。
ハッキリ言って俺が勝負するべきフィールドは科学すなわちサイエンスであり、サッカーなんていう猿みたいな行為に携わることはありえない。
故に現在独逸国で行われている蹴球世界大会には微塵の興味もないのだけれど、ご覧の通りこのガラクタ機械ですら興奮の坩堝に巻き込まれているというクソのような状況だ。
「キテレツー。我輩の名前もロナウジーニョとかが良かったナリー」
「散れ」
ドカン。ボタンを押した瞬間にコロスケは塵と舞った。これでもうヤツも七代目である。僕は八代目を押入れから引っ張り出すとメモリーに
『サッカーとかそういう話題出したら無条件で勉三さんすごくあったかいなり機能』
を書き加えて街に出た。
「キテレツさーん」
「ああ、みよちゃん」
交差点の所にはクラスで一番ハクいスケ、美代子がいた。苗字は河原と言っただろうか。その圧倒的な存在感が僕の心を惹きつける。
「ついにW杯の開幕ね!宮本さんとか本当にカッコイイわー」
こいつも同類項か。オフサイドとイラマチオの違いも分かってないような面して何が「宮本さん」だ。したり顔してこのメス豚が。黒い憎悪がキテレツの内面を覆う。
「キテレツさんもトンガリくんの家で一緒にサッカー見ましょうよ」
「行け、からくり武者」
ギャアアアア!美代子は血まみれになって星と散った。なに、僕が手を下したわけじゃない、全ては機械が勝手にやったことさ。それにつけても少年法はいつだって僕を味方してくれるしね。
「お、おいキテレツ!お前みよちゃんに何したんだよ!」
そこには豚とゴリラの合いの子のような醜悪な顔面の児童が立っていた。同級生の豚ゴリラだ。このアダ名に関してはさすがに軽いイジメなんじゃないかと思う。教育の現場はいつだって日和見主義だ。
「なんだよ百姓」
農作物を売って口に糊をする生活。全く前時代過ぎてサイエンティストたる僕には見ちゃいられない。第三次産業に従事する哀れなブルーカラー、それが僕が豚ゴリラに抱く印象だ。
「サッカーの話題なんてするスベタは世にいらないんだよ」
「て、てめえ!」
ドカッ!バキッ!豚ゴリラの熱い拳が炸裂する。そうだ、それでいい。
「痛いなー。本当に痛い。そう、死を予感せざるを得ないほどに痛い」
「ハアハア・・てめえ、何言ってやがる」
「刑法第三十六条、急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するために、やむを得ずなした行為は、罰しない」
「はあ?」
「正当防衛ってことだよ、ゴリラくん」
ズドーン。懐に隠していたRPG-7(歩兵携行用対戦車擲弾発射器)が火を噴き豚ゴリラを火達磨にする。豚ゴリラは一瞬で消し炭となり、豚ゴリラ「だった」空間には虚しく炎が燃え盛る。ハハハ、燃えろ燃えろ、それでこそ祭典も盛り上がるというものだ。
「みよちゃん・・豚ゴリラまで・・・ま、マンマー!」
目をやるとそこにはトンガリがいた。こいつには浩二という立派なファーストネームがあるのにいつまで経ってもクラスメイトからは尖(トンガリ)の苗字で呼ばれている。全くよそよそしいことこの上ない。
「どうしたんだよ、そんなに怯えて」
「ぼ、僕はサッカーなんて興味ないよ!興味ないんだからね!」
そう宣言したトンガリの服装は青く染まった代表ユニフォーム、胸に踊るジャパンの文字。背中には「キングカズ」の写真。僕はニヤリと笑うと、そうか、ならいいんだ、と呟いてトンガリにRPG-7を手渡した。
「な、何これ?」
「おまわりさん、こいつです、こいつが全部やりました。僕は見てました。フーリガンです」
おまわり「これはひどい」
トンガリは音速で逮捕された。
暮れなずむ街を一人歩き、家に着いた時は既に晩御飯の支度ができていた。
「あら、おかえり。トンガリさんが捕まったそうよ」
「いつかはやりかねないと思ってたよ、僕も」
「怖いわねえ、少年犯罪は」
「キテレツー、サッカーするナ」
グシャ!僕はコロスケの頭を勢いよく蹴り上げた。
「やはり子供は少しくらいワンパクじゃないとな。ハハハ」
「ありがとう、パパ」
僕は十代目のコロスケを押入れから引っ張り出す。
サッカーボール柄にペイントを施した。今度のコロスケは特別製だ。何せプルトニウムでできてるのだから。
「よし、コロスケ。ちょっと金やるからドイツまでコロッケ買いに行ってくれよ」
「はいナリ」
「着いたらこのボタン押すんだよ。そしたらすぐ帰れるからさ」
「分かったナリ」
そうしてコロスケはドイツに向かって旅立った。
ニヤリ、とほくそ笑む僕。
ドイツが世界地図から消える日もそう遠くない。
僕は高らかに笑いながら、十一代目のコロスケ作成に着手した。
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肉欲企画はサッカーW杯を応援しています。

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ハクいスケバロスww
っつーか文章見てたらトンガリの声がふっと浮かんでなつかしかったっす。
「スープって言うのはこうやって飲むもんなんだよ。うぅうん〜」
とか言ってた小金持ちのトンガリの声が。
ブタゴリラの声は浮かばなかったけども。
僕のクラスにも豚ゴリラと(僕の脳内で)あだ名される人がいますよ。
9代目は…wwwww
法律に精通した未成年ほどやっかいな輩はいませんなぁ(^ー^)
あったかいナリで吹いたwww
肉欲さんのような肉欲で、
オージーが大進撃。
せめて食べてから逝ってもらいたい限りです。
騒音ババアの名前じゃんw
面白い。