それは
「眼鏡をクイクイする人間」
と
「眼鏡をクイクイしない人間」
だ。』
――ジョン・AF・ケネディ

有名な言葉です。秀才のトレードマークともされる眼鏡クイクイ。インテリメガネ達だけが持ち得る至高のアビリティ。ケネディは言った。世界はそれを為す人間と為さない人間に分かれる、と。
しかしケネディは重要な部分を隠した。それは彼なりの配慮だったのかもしれないが、しかしそこを隠して世界を、いや人生を、そして真理を語ることは、できない。
ケネディが隠したかったことって、なに?なんてことは聞くことなかれ。彼の本音が
【眼鏡クイクイ=勝ち組
非・眼鏡クイクイ=負け組】
というものであったことは、最早議論の必要すらありませんね。
・・・
例えば僕の青春時代。モテる奴はみんな眼鏡をかけていた。みんな眼鏡をクイクイさせていた。
【青春=童貞】
というクリアな定義を僕の人生に代入してみると、僕の青春時代は大体高校生の頃になる。背中に精子臭さを貼り付けていたあの頃、僕は教室の真ん中でヤングマガジンのグラビアを見ながら
「ギャアア!この姉ちゃんすごい乳!この乳は人を殺せる!キラークイーン・パイツァダストやで」
なんて声を限りに叫んだりしていた。健気に、あるいは得意気に。女のことしか考えられなかった追憶の日々。
18歳になっても【キープオン・マンコ原理主義者】だった俺。けれどインテリメガネどもは、そんな僕の様子を冷笑的に、あるいは侮蔑的に眺めていた。その冷たい眼差しと平行して、彼らは眼鏡をクイクイさせつつ呟く。
「ふ……ん。でもさ、それって何かの役に立つの?」
乳のデカさに意義を求める。彼らがメガネをクイクイさせる所以であろう。
「その乳、役に立つの?」
クイクイ野郎は、シリアルを啜りながら語った。
あるいは眼鏡をキラリと光らせながら、輝かせながら、僕に向けて残酷な言の葉をジャイロボールしてきた。その鋭い直球に僕の胸は鋭く抉られ、後にはただただチンポが勃起するばかりだった。
「クイクイ君って、ステキだよね!」
憎いことに、その様を見た女どもはクイクイ野郎の冷淡さに逆発狂、全ての女生徒の性器部分(丁寧な言葉で言いますとマンコの辺り)から洪水が発生した。
「まあ、価値観はそれぞれだけどさ(クイクイ)」
「カ、カッコイイ!」
再び女どもの股ぐらからバルトリン腺液が間欠泉のように噴き出す。教室の湿度は5%上昇した。たおやかに潤ったそれ(≒マンコ部位)はあたかも、日本に突如として現れたネス湖にも似ていた。女がメスになる瞬間、古来から伝わる言葉でいえば『ネス湖の刻(とき)』。そしてその湖に突入するUMAは、もちろんインテリメガネ野郎どもの黒光りしたネッシーよ。
インテリメガネどもはセックスの時でも眼鏡を外さない。眼鏡をクイクイさせながら腰もクイクイ。女の腰もクイクイクイ。止まることなく動く腰、元気があれば何度もできる。1・2・3、アッー。
「ああっ、康文のネッシーが……すごく、白亜期です!!」
インテリメガネの上で激しく乱れながらそう叫ぶ中川さん、それは僕の愛する人(ラ・マン)。小さい頃、お弁当に入ってたウィンナーを僕に分けてくれた中川さん。彼女の大好物は、康文のジャンボフランクフルト。あるいはアメリカンドッグ。だから康文は彼女の憧れ、ハムの人。
「お母さん、お届け物、ハムの人からだよ!」
お中元のシーズン、僕はテレビから流れ出したCMを耳にするや否や光よりも速くブラウン管を粉々に破壊した。破滅しろ、世界。
酷い話だとは思いませんか。寒い時代だとは思いませんか。
眼鏡をクイクイさせるかさせないかでこうも絶望的な差が生まれるだなんて。
だから僕も眼鏡をかけたかった。
眼鏡をクイクイさせたかった。
――でもできなかった。
眼鏡をかけるには、僕の視力はあまりにもよすぎたのだ。僕の視界を通しての世界は、あんまりにも鮮明だった。真実の世界、それは残酷で汚いものだ。世の中なんて、本当は見たくもないもの、見えない方がいいものばかりなのに。そこにあって視力2.0なんて、拷問以外の何者でもないさ。
憎い。この両の眼が、世界が、インテリメガネどもが。僕は憎くてたまらないんだ。
でもその中で、いつしか気付いた。いつまでもこんなことじゃいけない、ってね。砂を掴んで立ち上がらなきゃ、世界は何も変わらないんだ、ってね。
だから僕は今年の始めにダテ眼鏡を買った。
あの頃、あれ程やっかんだクイクイ野郎になるため。
男らしくない、と笑わば笑え。俺は一足先に勝ち組になるんだ。
そして装着。一回、二回、三回……激しい縦揺れをカマす黒縁のメガネ(税込1000円)。僕は長年の鬱積を晴らすかのごとく、狂ったように眼鏡をクイクイさせたんだ。世界に。そして中川さんに向かって。
するとどうだろう。
僕が眼鏡をクイクイさせ始めたら、世界は恐ろしい早さで変わっていった。
眼鏡をクイクイした次の日、身長が50cm伸びた。
安田のクロちゃんみたいだった声は突然ジョン・トラボルタのようにダンディになった。
目の彫りは平井堅みたいになった。
蛇口をひねったら石油が出始めた。
ボールを投げてみたらいきなり160kmを超えた。
朝起きたらジュリアロバーツが隣で寝ていた。
チンポを見てみると、裏筋のあたりに『天皇』と書き殴られていた。
数え上げるとキリがないけど、これが眼鏡クイクイの効果だ。ハッキリ言って予想以上だった。もう眼鏡クイクイなしの生活なんて考えられない。母さん。僕は、僕は勝ち組になったよ。
そんな夢を見た朝、僕がまず取った行動は当然の如く素早いリストカット。初春の空は驚くほど綺麗で、僕はその向こうからテポドンがやってくるのを心待ちにした。ライフ・イズ・ソービューティフル。
【fin】
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笑わす気だ。
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だけど噴かずにはいられないwwwwww
腹イテェwwwwwwwwwwww死ぬwwwwwwwwwwwwwww
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