それは、酷く暑い夏の日のことだったように、僕は思い出す。
田舎町で育った少年少女たちにとって、盛り場の存在というものは砂漠におけるオアシスの如く貴重な存在だ。本州の片隅で育った僕にしてもそれは例外ではなく、休日になると癒しを求めるかのように町唯一の歓楽街へと足を運んだ。
若年期における外出とは、得てして無目的になりやすい。
『とりあえずどこかに行こう』
全ての動機はそこに尽き、喜びや楽しみの殆どは出先にて見つける。
何も持たずに公園に出かける幼児のように。
無心で海へと駆けていく児童のように。
ただ点けられたテレビを無心に眺める小学生のように。
『それをして何の得になるの?』
未知への猜疑ばかりを覚えてしまうのが、大人なのだとするならば。
『それをしたらどうなるんだろう?』
未知に対して興奮ばかり覚えるのが、子供なのかもしれない。
だから僕らは駅前へと向かった。低くて狭い世界の中で、そこにはいつも輝きが満ち溢れていた。行けば必ず楽しい何かが待ち受けていたし、何がなくとも『大人の世界』じみたものを垣間みるだけで、自然と心が躍った。
駅前には大きなデパートがあった。
全国平均でみれば随分と寂れたデパートだったし、今考えればおよそ "大きい" とは形容し難いものではある。が、田舎町が世界の全てだった僕たちからすれば、そのデパートは『世界で一番大きい』デパートだった。
大人がいた。
子供がいた。
不良がいた。
お姉さんがいた。
教室の中では決して出会えない様々な人の姿、そのひとつひとつが僕たちの心をたまらなく揺れ動かし、落ち着かなくさせた。
デパートの中に入る。首を90度近くに曲げても見上げきれないほどの高い天井。ドーナツ屋とハンバーガー屋の香しい匂いに出迎えられ、喉の奥の方がムズムズとしてくる。もちろん、買い食いができるだけの小遣いなんて持ち合わせてはいない。僕たちはウィンドウの外から店内をじっとりと眺め、いつかくるであろう "そのとき" に思いを馳せ、そっとその場を後にする。
小遣いの少なかった僕らは、万事そんな風にしてデパート内を歩き回った。玩具屋でゲームのデモ画面を見つめ、書店で漫画雑誌を立ち読みし、ゲームセンターで他人が遊ぶのを後ろから眺め、シアターの入り口で繰り返し流される映画の予告編を何度も瞳に映し込む。
そんなことを何巡かしていると、時間は音よりも速く過ぎ去っていった。明るかったはずの空は赤く鈍く染まっていて、僕たちは誰ともなしに駆け足で家路へと急いだものだった。
金も使わずに、何も食べずに、何も手に取らずに、でも遊ぶ。
あの頃の僕たちは、確かにそんな感じで、遊べていたのである。
ショーケースの向こうに鎮座しているドーナツを眺めながら、ビニールで装丁されたコミックを手に取りながら、肝心な部分はちっとも映そうとしない予告編を見詰めながら、いつもラスボスの手前で負けてしまうゲームのプレイ光景を窺いながら、僕たちは
「その先には、一体何があるんだろう」
そのことばかりを考えていたのだ。
考えて、たまらなく心躍らせていたのである。
その日も、僕は友人のケンジくんたちと連れ立って、駅前のデパートへと赴いた。巡るルートは一年365日を通して変わらない。シアターに行き、玩具屋をひやかし、本屋に立ち寄ってゲームセンターへと行く。まだファッションには少しも興味のなかった時分であった。
夕闇が迫り来る頃、僕たちだけのシンデレラタイムは終わりを迎える。人並み程度に素行の良かった僕たちには 『門限を破る』 なんてことは思いつきもしなかったし、ひとたび誰かが 「帰ろう」 といえば、みんな揃ってそれに同調した。
過ごした時間が輝かしいほどに、帰りの足取りが重くなる。僕はいつでも伏し目がちになりながら出口へと向かった。
帰り着く家は、暖かく心地よくも "予定調和" だけが待ち受けた世界だ。寝て、起きて、学校に行って、また帰って……その繰り返しばかりなのである。
もちろん、その当時に高尚な哲学的思弁を抱いていたわけではない。ただ、帰宅の折りに、漠然と重い灰色の気持ちがいつでも胸に湧いていたこと、それは確かなことだった。
階下へと向かうエレベーターの手前。
そこでは、フロアの四階までが吹き抜けになっていた。
どうしてなのだろうか。
瞬間、僕は伏し目がちだった自分の頭を持ち上げ、フロアを上に見上げた。
だから、その時なのである。
僕の瞳に、見ず知らずの女性のパンツの御姿が――
飛び込んできたのは。
愕然とし、立ち止まる。
あれは一体何なのだろう?
知覚に理解が追いつかない。
僕は思わず二度見する。
そして僕はようやく知る。
あれはパンツなのだ、と。
まさにパンツそのものなのだ、と。
瞬間的なスペクタクルを切り取れば、その刹那の僕の心には激しい興奮も、深い喜びもなかった。ただ "パンツを見た" という事実がそこに横たわった、それだけのことだ。けれども同時に、本能のレベルで
『これは、重大な、何かだ』
ということを察知していた。
10秒、1分、それとも1秒ほどのことだったのであろうか。分からないが、呆然としていた僕の意識を呼び戻したのは、不意に友人が肩に手を触れてからのことだった。ハッとして、すぐに顔を横に向ける。
ケンジくんが立っていた。
ただ、立っていた。
『話は、後だ』
瞳の中でそう訴えかけながら、ケンジくんは、ただ。
僕とケンジくんの家は隣同士で、だから必然的に遊ぶ回数も、一緒に家路につく回数も、一番多かった。その日も他の友人と別れた後、最後に残ったのは僕とケンジくんだけだった。夕景、蝉時雨、包み込む沈黙。人もまばらな田舎の家路、足音だけが二人の鼓膜を包み込む。
「また、見ようや」
出し抜けの一言、5W1Hが完全に欠落した一節。
それでも僕は、頭ではなく "心" でケンジくんの真意を理解する。
「また、見ようよ」
深く頷きながら、僕は言葉を返す。
何も足さない、何も引かない。
そんな僕らの関係は、この日、より高みへと向かってアウフヘーベンし始めたのである。
それからの僕らはツーマンセル(two man cell、二人一組)での行動をとり始めた。それはきっと、僕らの "目的" にどこか後ろ暗いものを感じていたからなのだろう。あの日あの時あの場所での、あの情景。それは僕ら二人だけの秘密だったし、またこれからの二人の目論みも、やはり二人だけの秘密であった。
「駅、行こうや」
ケンジくんが、あるいは僕がその言葉を発したとき、それは言外に
『駅のデパートにおパンツを見に行きましょう』
ということを述べていたし、ともすれば
『明日、駅に』
という短さだけでも、百万言を超える情報量を伝達することもあった。
僕たちは変わった。
書店で、玩具屋で、シアターでゲームセンターで喜びを得られた、そんな多感な時期は終わりを迎えてしまったのだ。眩く輝く世界の全ては、等しくパンツへと帰納していったのである。
一度気が付いてしまえば、『どうして我々はこれまで見過ごしていたのか?』との憤りを覚えざるを得ないほどに、其処はサンクチュアリだった。見上げたときの仰角は完璧なまでに階上のパンツを崇められるそれとなっており、僕たちがするべきせめてものことは、視線を少し上に持ち上げることだけだった。
吹き抜けの二階から、三階四階を見詰める。
設えられた手すりの向こうで、何枚ものパンツが浮かんで消える。
白、赤、青、深緑、あるいは、黒のパンツ。
『パンツには、色がある』
世界が色どりに満たされていることを、初めて知った。
白一択しか知らなかった僕の心に、その事実は大きな衝撃を与えた。
世界のカオス(混沌)がロゴス(論理)によって、整理された瞬間である。
僕たちは暇を見つけては駅前へと向かった。
折よく、当時は夏だった。暑さに後押しされ、多くの女性は短めのスカートを着用していた。また当時のムーブメントとして、『ミニスカートを着用するのがお洒落』 とされていたのも大きかった。卑近な言い方をすれば、毎日が大漁だった。
全てが順調だった。
しかし順調であり過ぎることは、ときに人の心に疑心暗鬼を生じさせる。
だから、それを裏付けるかのように、ある日ケンジくんがこんなことを言った。
「もしこんなのがバレたら、逮捕されるんやないか……?」
暗くて重い一言。
僕の脳内に電流が走る。
そんな、アホな――
一笑に付したかったが、これまでも行為に対して名状し難い罪悪感を覚えていたこともあってか、僕の頭に "逮捕" という言葉が何度も何度もリフレインする。
逮捕、勾留、裁判、有罪、入牢、一家離散……
一旦生じた負のイメージは、止まることなく拡散していく。それが物を知らない若い時分のこととあれば、尚更のことだ。
僕たちは駄菓子屋でチューペットを購入し二つに割ると、近隣の公園に緊急対策本部を設置した。
それまでの僕たちの行動パターンはシンプルだった。
二階のフロアに赴くと、そこに設置されたベンチに座ってアホの子のように階上を見上げる。それが全てだった。
しかしよくよく考えてみれば、フロアには必ず警備員が立っていた。
このままでは、いずれ司直の手が僕たちの身に及ぶのが必定だ。
自らの脇の甘さを初めて呪った。
「やり方を見直そう」
僕の言葉にケンジくんは深く頷く。
どれだけの脅威を感じても、パンツを手放す道理はない。
いままでと同じことを、いまよりも上手に。
僕はこの時の会議を通じて、初めて "建設的" という言葉の意味を知った。
爾来、動きは明確に変化した。
一カ所に留まるという愚行は即時中止し、とにかくも動き続けた。僕たちは買い物に来ているのですよ、パンツなんか見ていませんよ……と、そう装うことに執心したのである。
結果としてこのムーヴメントは大きな成果を上げる。
偶然のこととはいえ、受け身一辺倒であった我々が能動的な行動を開始した。そして、その先に待ち受けていたのは、より多くのパンツ・シーンであった。
ひと所で待ち続けるよりも、自らが主体的に動いた方がパンツを見やすいというのは、ある種当たり前のことだったのかもしれない。
とにかくもこの頃、僕たちのスタンスは "守りのパンツ" から "攻めのパンツ" へとフェーズが移行したのある。
こうして僕たちは、たゆまぬ努力と研鑽の末、"形而上のパンツ泥棒" へと成り果てた。まだインターネットもない、AVも借りることのできない、いわば "オカズ弱者" の頃合いのことだ。あのときのパンツの一枚一枚が、僕たちの心にどれだけの潤いを与えたか。それは現在の貨幣価値では到底計ることができない。
――そうこうしているうちに、夏休みも終わりに差し掛かった。
僕はカレンダーを閲しながら、瞳を閉じる。
1996年8月24日
いよいよだ。
待ちに待った、下関夏の陣が、はじまる。
玄関を開け、二、三歩してから隣家のチャイムを押す。
ほどなくしてケンジくんがその姿を現す。
気力が、生気が迸っていた。
おそらく僕も同様なのだろう。
それほどまでに、この日の訪れを希求していたのである。
・・・
パンツというものは、生き物だ。そして野生の生き物であるがゆえ、その生態分布図をこちらの側でコントロールすることは著しく困難だ。
いくら僕たちがその到来を渇望したとて、見えないときは見えない。
悲しいことであるが、どうやらそれがこの世における最大公約数的な結論なのだと、当時の僕らは知るに至った。
「もっと見たいのう……」
この言葉の行間を読み解けば、それは『もっと(パンツが)見たいですね』 ということになるのであるが、兎に角も当時の我々の欲求は天井知らずなのであって、一枚や二枚程度のパンツを見たからといって、それで満足ということには決してならなかった。どれだけのパンツを見てもまた新たなパンツを求めたし、ともすれば見れば見るほど、知れば知るほど、新たなパンツへの期待は高まった。
いま考えてみれば、それはあたかも、喉の渇きに耐えかねて海水を飲み続けるが如き行いのようだった。渇きは決して癒えることなく、否それどころか、飲むほどの渇きは激しさを増して行ったのだ。
『パンツ・ジャンキー』
あの頃の僕たちは、確実に下着中毒の状態へと陥っていたのである。
学校で見るブルマなんかじゃあ足りない。
グラビアで見る紛い物の水着なんてもっての他だ。
俺が、俺たちが欲しているのは、そんな代用物なんかじゃあない。
欲しいのは、ヒリつくような生命力
弾けるようなライブ感
唯一無二のいま、ナウだけなんだ!
……僕たちは確かにそう願っていた。
あるいは、祈っていたのだ。
だから――
「祭の日を狙おう」
慎重に、言葉を選びながら。
ずっと前から練っていた計画を、ケンジくんに伝えた。
「8月24日、25日の両日。県下最大級の祭が駅周辺で催される。そのとき、きっと野生のパンツは、行き場を失ったパンツたちは、あのデパートへと訪れるだろう。僕たちは、そこで……」
僕は多くは語らない。
語る必要もない。
語らずとも、僕の想いは、"心" は確実に、ケンジくんへと達するからだ。
だからケンジくんは、そっと口角だけを持ち上げて、笑っていた。
(パンツ・カーニバルだ)
僕たちはその日のために、渇きに苦しむ日々を過ごしてきたのである。
見えざる牙でパンツを穿つ、そのためだけに。
・・・
予想通り、駅前には夥しい数の人間が溢れ帰っていた。僕たちは人ごみに流されながら、それでも確かな足取りで、目的地へと向かって行く。辿り着いたのはデパートの二階フロア。見慣れたはずのその場所は、なぜだか妙なヒリつきを僕たちに与えた。
ゆっくりと周りを見渡しながら、現況を確認する。
クラスメイトの姿はないか
親類の影はないか
ガードマンの立ち位置はどこか――
それらを冷静に分析しながら、ポイントオブノーリターン(帰還不能地点)をじっくりと導き出した。そして至る、これで勝てる!僕はケンジくんに目配せをする。彼も段取りを終えたようで、僕にだけ分かる笑顔をこちらへと向けた。
酷く暑くて熱い、夏の日
物語が、はじまる
「にくちゃん、あそこ……」
「うん……」
ケンジくんがそっと僕に呟きかける。今さら言葉の意味を確認するようなことはしない。僕たちはなるべく視線を落としながら歩みを早めると、ハンターにだけ知り得る独自の感覚を頼りにして、目的の場所へと急いだ。
勝負は寸時に決まる。
いじきたなく顔を上げてキョロキョロすること、そんなのは下劣なアマチュアの行いだ。
(一瞬……だけど、閃光のように……!)
二人はほぼ同じタイミングで顔を上げた。
そして見えた!
至った!
瞳に収めた――パンツの、園を!
刹那の陶酔感が全身に駆け巡る。
溢れ出すドーパミン。
始まりが終わり、終わりが始まる。
ことの帰趨はファースト・パンツで決まる。
僕たちはファースト・パンツに関するお互いの感想を述べるべく、フロアの端に駆け寄った。
「どうやった?」
「ジャンゴー(森林)、やったな……」
「うん、ジャンゴー(森林)、やったね……」
束の間に見えたパンツ、その色彩は紛れもなく迷彩柄のそれだった。僕たちがパンツ・ビギナーであったらば、その衝撃のあまり心が折れてしまっていたかもしれない。しかし、僕とケンジくんは既に知っている。世界が、色彩に満ち溢れていることを。黒も橙も紐もアミも、どんなパンツもパンツであるということを。
「迷彩柄は初めてやったね」
「ああいうのを履くんも、おるんやねえ」
僕たちは口々に感想を述べ合いながら、再び死地へと足を向ける。こんなのはまだプレリュードに過ぎない。二人の求める平地は、もっともっと高い。
すべての出来事はこれから始まる。
これから、始める。
そう思っていた――
その時だった。
「ねえ、何しとるん?」
突如浴びせかけられた頭上からの声。
突然のことに、僕たちは雷に打たれたように立ち止まる。
そして見上げる。
少しの好奇心と、多くの恐怖心を、携えながら。
視線の先にあったのは。
最前に見たはずの、見覚えあるジャンゴーだった。
「何しとん?」
その女の子は、年齢でいうと大体僕たちと同じ暗いの風貌だった。
ミニスカートからスラリと伸びた、まだ幼い足。
でもその先にあるのは、威風堂々とした、確かなるジャンゴー。
僕の心はパニックに襲われた。
慌ててケンジくんの方を見る。
彼は彼で、「どうしてこうなった……」 的な顔色を隠せずにいた。
詰まるところ僕たちは攻撃面にだけ長けた一方通行(アクセラレータ)でしかなく、防御面はてんでからっきしだったのだ。初めての経験に、なす術がなかったのである。片手落ちもいいところだった。
そして頭上から更なる言葉が降り注ぐ。
「良かったらさあ、一緒にお祭り行こうやあ」
――ああ、そうか。
――今日は、お祭りだったのか。
僕はこの瞬間まで、今日が "正しい意味でのお祭りである" ことを、完全に忘れていた。要するに彼女たちは、デパート内でたまたま見かけた僕たちに興味を抱き、そして果敢にも 『一緒に祭を楽しまないか』 という趣旨の言葉をかけてきたのである。
ある意味でそれは、ひどく幸福な情景だったのかもしれない。
同い年くらいの少女が、積極的に僕たちをデートに誘ってくれる。それは俗な言い方をすれば 『逆ナン』 と称される行為であり、世の男性の多くが渇望しているシチュエーションでもある。世が世なら 『リア充よ、滅せ』 との号令一下、打ち首獄門の刑に処されても不思議ではない体験談。
だが、我々はどう在ったか。
こちらとしては 『ひたすらにパンツを見る』 というカードしか用意していないのであって、まかり間違っても 『偶然に出会った女の子とキャッキャウフフ』 というシチュエーションは有り得ない、否、有り得てはならないのである。それが田舎で育った少年の有する演算能力の限界なのだ。
付言するならば、このとき僕の脳内には
「パンツを見ていることがバレた→逮捕→勾留→裁判→有罪→入牢→出所後、路上生活→孤独死」
という因果経路が明確な未来予想図として構築されつつあったことも、併せてお伝えしておきたい。悲しい話ではあるが、これもまた田舎で育った少年の有する演算能力の限界だったのである。
――結果として、僕たちは。
脱兎の勢いでその場を後にした。
肉欲棒太郎、12歳。
暑くて熱かった、夏の日の出来事である。
結論からいえば。
僕たちは、その日を境にパンツを見に行くことをやめた。
パンツを見たい、という欲が霧散したわけではない。
それ以降も僕らの心に 『パンチラ=グッドイナフ』 という方程式が燦然と輝き続けたこと、それは事実だ。
ただ、あの場所で、フロアを見上げてパンツを見る。
その行為から完全に足を洗ったのである。
8月24日の、あの日。
僕たちは図らずも、各々のメンタルの弱さに気付かされた。
パンツを見ているのは自分たちばかりではなく、向こう側からもこちらの姿が見えているのだと、そのことを忘れていたことを深く認識したのである。
"汝が深淵を覗き込むとき、深淵もまた汝を覗き込んでいるのだ"
ニーチェが遺したとされるこの言葉。
僕はあの夏の日、そのことを頭ではなく "魂" で理解させられた。
そしてそれを知ったとき、そうまでしてパンツを見ようとする自らを省み、かつ『もう、いいかな……』 という帰結を胸に抱いたのだ。
なぜなら、あの頃の僕に。
パンツの方から覗き返されるまでの覚悟は、なかったのだから。
こうして
僕とケンジくんの
パンツを通した、切なく儚い夏休みは
終わりを告げた
古い、古い話である。
・・・
「にくちゃん、にくちゃん!」
「どうしたん!?」
「3組の柴田がさぁー!後ろから見たらブラジャーが透けちょるんよ!」
「マジで!?」
「ちょっとこらしめちゃらんにゃあいかんやろ!行こうや!!」
「応!」
そして、また。
少年たちの間で――
新しい物語が、はじまる
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さすが肉欲さん b
【肉欲より】
柴田さんは過去から現在にわたるまでエロ要因です。
ありがとうございました。
チラリズムは大切ですよね!
小学校とか同じかもしれない…。
肉たん抱いて!
でも面白いからいっか!
今さっきも階段チャンスを狙ってしまった結果、仕事に遅刻しそうになっています。
こんな僕が肉さんのようにさわやかにパンチラから脱するためにはどうしたら、よいでしょうか。
あなたの力がほしい。これはひやかしではなく、本当にそう思うよ。
素敵です
パンチラを通じて少年の成長を語るとは…
肉さん、なんか抜けましたね。素晴らしい作家になってきたよ…