真実の意味での変態は "自分が変態である" ということに無自覚だ。
故に、変態と呼ばれるのである。
彼らはあくまでも
『自分は "普通" の上に生きている』
と確信している。
当然の如く彼らの認識する "普通" は "世間並みの普通" とは大きくかけ離れている。しかしながら、非常に観念的な話になって恐縮であるが、彼らのうちの多くは
(それぞれの主観において)「自分は普通の人間だ」
と信じているため、己が抱える "普通性" に関してなんらの疑問も抱かないし、だからこそ彼らは
『僕が変態だなんて、とんでもない』
という結論に至る。
それが、数多の変態たちが己の変態性について無自覚である所以だ。
"変態" という呼称は、栄誉や賛美でもなければ、誹謗や中傷でもない。変態という言葉、それはあくまでも 『人とは違っている』 と指摘しているに過ぎない。辞書的な意味とは異なっているかもしれないが、少なくとも僕はそのように解釈している。
『人とは違う』 という事実は、人によってポジティブにもネガティブにも捉えられる。とはいえ、『個性』 というものを過度に重視する昨今においては、割と肯定的な受け取られ方をされているらしく
【人とは違う=アイデンティティ】
と、このように脳内変換される傾向が強い。
その一事を以て、直ちに 「浅はかだな」 とは思わない。過度に没個性的になってしまった社会において "他人とは異なる" という事実はある種の強みとなり得るし、それを戦略的カードとして用いて社会的成功を目論む、というやり方も十全に理解できる。
ただ、再三になるが、"人とは違う" ということは単なる事実でしかなく、そのことに対する評価は必然的に相対的なものとなる。『寡黙である』 という現実は、図書館司書としてはメリットになるかもしれないが、営業職に従事する場合には致命傷になりかねない。実例は枚挙に暇がないものの、『社会的マイノリティに属している』 という事実が何を意味するのか、それは具体的状況に立ち入ってみないと判断し難い。
しかし、我々の多くが 『自分はマイノリティだよ』 と表明している瞬間、ある種の優越感に浸っているであろうことは、ほぼ間違いない。それは自虐風自慢という形で顕現することもあるが、専ら 『自身の性癖の特異性』 を表明する場面において発露するケースが多い。注釈を付せば、この文脈での 『性癖』 とは性的趣味嗜好のことではなく、本来の意味である "人間の心理・行動上に現出する癖や偏り、嗜好、傾向、性格" のことである。
「アタシ、スゲー口が悪いみたいでさぁ。結構とっつきにくいみたいなんだよねぇ〜。直したいわー」
一見すると自省しているようにも思われる発言であるが、この言葉の裏側にあるのは確実に 『毒舌なアチシ、マジかっこいい』 というしどけない自負である。
本当の意味で反省している人間は、誰よりも沈黙することの価値を知っている。また、これらの表明はある意味で
「明日から禁煙する」
宣言に近い部分がある。発言した時点で全てが完結してしまっているのだ。よって、発言の後に残るのは
『そういう風に自覚している自分、改善しようとしている自分を評価して!/フォローして!』
型のしょっぱい想いだけとなる。昨日は三時間睡眠でさぁ〜、ということを喧伝する人間は多くとも、昨日は八時間睡眠でさぁ〜、という宣言をカマす人間が少ないのは、そういうことなのである。
自身の変態性 (と思しきもの) をしきりと口にする人間の心理にも、同様の狙いが潜んでいる。自分はこんなに変態で……参っちゃうよなぁ〜、と困り顔を浮かべはするものの、その背後には
「こんなオレ、変態なオレって、周りと違ってなんかイケてね?」
というしみったれた本音が眠っている。変態を自称する全ての人間が 『高評価されたい!』 と願っているとはさすがに言わないが、いずれにせよ 『ねえ、注目してよ!こっち見て!』 と思っているであろうことは、ほぼ間違いない。
それはそれでいい。人の生き方は様々だ。自身の変態性(らしきもの)をシャウトすることで周囲の注目を浴びることが最善だ、と考えるのであれば、あなたはその道を行けば良い。
けれど、僕は思うのであるが、世に蔓延る 『自称・変態』 たちについて、一体そのどれほどが "真実の変態" であるというのだろうか。ファッション感覚で 『変態』 を自称する人間が、あまりにも増えすぎてはいまいか。
変態という言葉は単なる事実である、と先に述べたが、一言だけ付け加えさせてもらえるならば、変態とは "その人の生き方" でもある。それは宗教観、人生観などに並び立つレベルの価値基準なのだ。ある人が変態を自称するならば、その人は 『これからは周りと違って生きる』 と表明しているに等しいのである。
その見地に立ちながら、世に溢れる 『オレ、変態でさぁ〜』 式の発言に耳を向けて見れば、どうなるか。
「オレ、変態でさぁ〜」
「具体的には、どういう?」
「この前彼女と目隠しプレイしてさぁ〜^^」
表に出ろ、の世界である。目隠しプレイの存在を否定したわけじゃない。けれども、その程度の着想・行為を以て直ちに 『自分、変態っスから』 と結論付けるその精神性が気に食わない。
「昨日の夜中に両親が目隠しプレイしてて、それを見ていたらマジ興奮した」
このレベルにまで至れば、文句なく変態の高みに達しているといえる。だが、己の征服欲を満たすがためだけに彼女に目隠しを、それを指して 『オレ、変態だから』 と述べること……甚だ噴飯ものである。結局のところそれは "いつか、どこかで見たAVのプレイをトレースした" という意味でしかないし、新規性などどこにもない。
「目隠しするのが面倒だったから、彼女の眼球を抉り出して眼窩に射精した」
紛れもなく変態である。胸を張って 『オレは変態だ!』 とシャウトして良い。それ以外のケース、たかだか目隠しをカマした程度で 『僕は変態でさぁ〜』 なんてアピールすることは、到底許されない。別に僕に許しを請う必要もないが。
ただ、眼窩射精レベルの高みに至ってしまった益荒男であっても、結局のところ 『自分は変態だ』 と周りに喋ることはないだろう。あるいは、自身が変態である……という認識すら欠落しているかもしれない。冒頭でも述べたが、彼らの多くはそういう性的傾向について
「極めて普通である」
と考えている、あるいは、信じきっているからだ。かかる人物に対して変態性を自覚しろ、と申し向けても、生半には叶わない。
僕の旧友に "吉田" というチンポ側の人間がいる。以前ブログにも書いたと思うが、僕が高校生の時分、一度だけ彼と 『理想のオカズは、何か』 というテーマで激論を戦わせたことがあった。結論として吉田は、(当時の価値観における)理想のオカズとして
「月の美しい夜、俺は一本の大木に縛り付けられている。俺の目の前には美しい草原が広がっていて、そこには立派なグランドピアノがある。するとそこに美しい少女がやってきて、軽やかに交響曲を弾き始めるんだ。俺は激しく欲情するだろう。しかし、少女に手を出すことは能わない。なぜなら木に縛り付けられているからだ。俺はその幻想的な風景、不可避な無力感、抑え切れない興奮、等々が相まって、たまらない愉悦を覚えるだろう――」
非常に残念な話であるが、この発言は史実である。10年前のあの日、1年2組の教室で吉田が放ったハードパンチがこれだ。僕は浅からぬ驚愕を覚えたのであるが、彼は構わずに続ける。
「それは、普通のことだ」
普通って何なの?なんていう生ぬるい問いかけをカマしてくる輩が稀にいるが、彼らは吉田のこの発言から大切な何かを学び取るべきだ。"普通" の正体は、『それが普通である』 と強く信じ込む行為と深い関わりを持っている。それが普通だ、という強い確信を得られるのであれば、少なくとも当人にとってある種の事象・価値観・行為云々は "普通" と成り果てる。
「でも、俺は全然興奮しないんだけど……」
「それは、お前がおかしい」
故に、彼らからすれば "普通" を自認する我々の方こそが奇異な人物・変態の人、という風に分類される。そうでもしないと彼らの自我が保てないから……という分析も可能であるが、ここでは置いておこう。少なくともあの日、あの瞬間、変態だ!と認定されたのは他ならぬ僕の方だった、というのは確かなことである。
「あとさあ、俺たぶん……西日本の神なんだよね」
続けざまに吉田が放った神託がこれだ。これには僕も反発を覚え、すぐさま 『お前何言ってんだ?マジで頭がどうにかしちまったのか?』 と詰問したのであるが、激昂した吉田は
「じゃあお前は、俺が西日本の神じゃないって証明できるの?!できないんだろ!?だったら俺は神、西日本の神なんだよ!!」
と叫んだ。僕は半ば呆然としながら 『何で西日本限定やねん……』 と言うのが精精だった。すると吉田は 「いや、さすがに全国的な神を自称するのはおこがましいわ」 と、よく分からない基準を僕に示した。またも心苦しいが、これらの発言は全て史実に基づいている。そんな吉田も現在では某一流商社に勤め、エリート街道を驀進しているというのだから、人生とは分からないものである。
話を戻して。僕の拙い経験則によれば、「あいつ、変態だなあ」 と思わされる人たちの大半は、その内心において 「自分が変態であるはずがない」 との確信を抱いている。
蓋を開けてみれば 「いや、その趣味はおかしいでしょ……」 という指摘がなされるケース (たとえば、オナニーの際に必ずケッパーを用いる、などの案件) にあって、彼らは激しい戸惑いと共に
「マジで……それが普通だと思っていたのに……」
と肩を落とすか、あるいは吉田のように
「バカ言っちゃいけない!おかしいのはおまんらの方やで!」
と憤るか、どちらかである。だらしなく笑いながら 「エヘエヘヘ、オレってば変態でさぁ〜^^」 などと抜かす輩はいない、否、いてはならないのである。
蛇足になるが、仮に周りから 『あなた、変だよ』 と指摘される状況が訪れたと仮定したとき。あなたは後者、すなわち吉田スタイルを踏襲して激昂した方がベターである。話術のレベルにもよるが、確信と熱意を持って 「オレは変態なんかじゃない!これは普通のことなんだ!」 と相手方を説得し続ければ、100人に1人くらいは
「もしかして……おかしいのは私の方なのでは……」
と洗脳されるケースが見受けられるからだ。手前味噌で恐縮なのだが、昔お付き合いをしていた方と初めてファックするとき、僕が手馴れた手つきで大人の靴下を着用していると、彼女はその行為にとても驚かれた様子であらせられた。曰く 『昔の彼は 「普通ゴムなんてしないよ?」 って言ってたから……いつもナマだったし……』――洗脳が奏功した好例である。僕がその夜、人知れず涙を流したことは言うまでもない。クソが!
逸れたが、とにかくも。本当の意味での変態は、自分を変態だと理解していない。あるいは、客観的に見れば変態的な行為であっても、本人は 『それが変態的だ』 との認識はあまりないのである。いや、むしろ――認めたくない!と言った方が適切だろうか。
自分の有する変態性を否定すること。
おそらく、それは自然な心の動きなのだ。
当たり前の話だが、いわゆる変態的な行為は、当人が自覚的であるほどに恥ずかしいものである。これはちょっとおかしいのかもしれない、こんなのバレたら生きていけない!……高い確率でそんなことを思うだろう。
そうであるにも関わらず、居酒屋などで
「オレ、変態だからさぁ〜」
などと吹聴するような真似は、いただけない。そこには "恥の美学" が著しく欠落しているし、また、変態であることはファッションである……という暴力的な勘違いにも通ずるおそれがある。そういう人に限って安全圏での発言に終始する (例えば 「この前彼女のアナルに指入れてさぁ〜」 など。普通入れる、否、入れなくてはならない) のだから始末が悪い。
だから僕は、そういうヤツを目の前にしたら、こう聞くことにしている。
「お前……小学生の頃、好きな女の子の上履きの臭い、嗅いだだろ?」
大抵の場合は言下に否定されるのであるが、その際でも僕は動じない。続けて、こう言う。
「いや、俺も嗅いだ」
「えっ」
更に続ける。
「それって、普通のことだろ?」
ことここに至ると、大抵のメンズは非常にバツの悪そうな顔をしながら、『まあ、一度くらいは……』 と犯行を自供する。しかしその表情は、先ほどの 「オレ変態だから」 発言の時とは180度異なり、ひどく所在無さげだ。
詰まるところそれが恥の概念なのだ。
本当の意味で己が有する変態性に気が付くスペクタクルなのである。
「うわー、キモー!!」
「ち、違うって!いや、マジで!皆やってるって!!上履きの臭いぐらい、なあ、好きな子のだったら、嗅ぐよな!?嗅いだよな?!」
そして彼も 『違う!俺は普通だ!!』 という人外魔境に足を踏み入れる。先ほどまではあれほど変態という言葉に優越心を感じていたはずの彼が、である。それは結局、彼と変態という言葉との距離感がその程度のものだった……という事実を雄弁に物語っている。
そんな風にして飲む酒は、存外に美味い。
今日もまた一人、正しい道を歩み始めた……という深い感慨が、打ち寄せる波のように胸へと訪れるのだ。
ただ
「じゃあ、肉欲くんも嗅いだの?」
「嗅いだよ。だって、それは普通のことだろ?」
「うん、アンタならさもありなん、って感じ」
何気ない一言が、誰かを深く傷つけているかもしれない――そのことを、全国の淑女の皆さんにはどうか忘れずにいて欲しい。それが僕からのちっぽけな、本当にちっぽけなお願いである。
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寝てない自慢とか勉強してない自慢とか…
記事の内容は共感そのものです。
特に最後の3行;;
「リコーダーを舐め回す」
「体操服を匂う」がありますね。
この程度なら許されるよな? 結構似たようなこと言ってる奴いたし
部課長の仕事見てれば入社数年で意気揚々とそう話す姿は非常に滑稽だなぁ、と。その忙しさがどれ程のものかを問い詰めて、忙しいと発言することが恥ずかしいことを思い知らせる。そんな時に飲む酒もまた僕にとっては格別だったりするんですが。肉さんのとはちとニュアンスが違うかもしれませんね…
100人中100位だった私には非常に納得出来ました
自分ではごく普通だと思ってたし…
同じ人と1000回ヤるより違う人と100回ヤるほうが上手くなるだろ…JK
って事が多いですね。
あとSの方よりMの方のほうが変態が多いと思うんですがどうなんでしょう。
流石に吹聴するようなことはしないが、隠しつつも自分の変態性を自覚し且つプライドを持って変態を貫いてる人間に失礼だと思わんかね
そういう人が見たら怒るだろう。俺は怒ってる
そんなあなたが変態じゃないかもよ?と言っているわけだよ。日本語読めない=変態ってことならいいんだけどさ。
ネタにマジレス云々〜
この言葉を発すると、世間はおおよそ「きめぇwwww」ないしは「キモッ・・・」という反応を示してくれますよね。
僕は後者の言葉を投げつけられると非常に興奮するんですよ。
だからこそ僕は不本意ながら変態だと吹聴してまわっているのであり、本当に自分が変態だと思ったことは一度たりともありません。
今夜はいい酒が飲めそうです
現実世界で変態行為を暴露するなんて自殺行為だろ
そんな風に言う子ほどたいてい変わっても無いし、面白くもないし、天然ぶってるだけだったるする気がします。
「あたしは普通だよ」と言い張ってた中学の同級は、クラスの全女子から自分の体が狙われてるって言ってました。
ちんことかおっぱいって言っただけで変態扱いされる……
昔、病んでいた時は好きな人をヌッコロス妄想でオナヌーしていた小生ですが最近は丸くなり素直に縛りプレイをしています
一般的な女性なら一度は男の口に詰め込みますよね?
へえ、それを履くからにはそこは、足みたいなものだと言い張るわけですか、的な言葉がよぎりました。
そっかそっか、私は変わり者だと自覚していたけど、それは普通と思っていいんだね。
だが、それがよくない。
ドキドキしてました(^^ゞ
変態の反対は、また別の変態なのですね
行き着くところ、
普通の反対は、また別の普通であると
Q.E.D(爆
自分が普通だと思っているからこそ普通と変態との線引きが自己の内で出来るのであり、完全にそのラインを越えたと自信を持てる話をした時の相手のリアクションが楽しみで仕方がないのです。
一般には不味いとされてる物が好きな人がいるとします。その人は知識としてそれは不味いと知っています。しかし、心からその食べ物が不味いとは思えない!
同様に心から自分が変態とは思えない!
他人から変態と初めて指摘された人はどうして自分が変態かは分からず、自分が変態という知識だけが残る。
こういう感じですかね?
人から見たら変態的行為と言われることありますね。
これまで変態という言葉を簡単に使いすぎていたように思います。反省。
エリート吉田氏のような方とお付き合いをしてみたい今日この頃。
何をもって変態を定義するかですが
肉さんには、wikipediaの「変態性欲」のページを
ご一読されることをお勧めいたします。
あれが正しいとするならば、あなたも私もみんな変態
自虐風自慢もしくは『俺この前こんな事しちゃったんだけど普通だよね?!』発言。
後者の方が『俺変態なんだよね^^』より質が悪いです。
私達はある種“変態”を売り物にしている職業ですが、まわりがほんまもんの変態ばかりなのでいつも『私こそは普通だ』と思っていますし、『何この人ヘンタイ…私はまだまだまともだわ』て大半の人間が思っています。
皆少し変わっているようにお見受け出来るんだけどそれは私の主観であって本人達がどう認識しようと勝手ですもんね。
人と少し違う趣味を持ってるくらいの意味だろう。
ところで、女の子が放尿してる姿(特に和式にまたがってるような格好で)にいたく興奮するんだが、これって普通だよな?