日記サイトの管理人にとって何が一番辛いか、と言われれば、そいつぁ『消したはずの過去ログを晒されること』に他ならないわけで、我々管理人たちはそういった凄惨な事態を避けるため、日々必死になって過去ログを埋葬する作業に勤しんでおります。
僕がウェブ上で日記を書き始めたのは6年前。
現在ではケータイ小説作家を大量生産している『魔法のiらんど』なる無料ホームページ作成サイトにて『TANKTOP』という全般的にノー・センスな名前のホームページを開設いたしました。言わばこの肉欲企画の "はしり" のようなサイトです。
そのサイトのログが、今日見つかってな……。戯れに魔法のiらんどに赴いて、記憶を頼りに管理画面にログインしてみれば、日記や掲示板などの全てのデータが丸ごと残ってた。電脳世界の成り立ちというのは、本当に残酷です。6年前の過去ログを発見した瞬間、思わず「っざけんなよ!!!」って叫んでしまったもの。軽めのパニックに襲われたもの。
ということで、本日は皆さんと共に、6年前に僕が綴った日記の数々を振り返ってみましょう。ただ、この文章をタイピングしている今も指先がプルプルと震えております。そんな大げさな……と思われる向きもありましょうが、さすがに6年前の日記は心臓に悪いわ。
【ウェブ上で綴った記念すべき第1回目の日記】
■2002/07/05(金)
タイトル:完成
できた!一体自分に何が書けるのかという、素朴かつ根源的な理由は置いといて…。七月でがす。夏が来ましたね。思えば、去年の夏、それは冬でした。受験戦争真っ只中にいた私は、遊んだ日数僅かに3日という過酷なスケジュールと共に夏休みを終えてしまいました。だって受験だもの!遊ぶ暇なんてなかったもの!! でも今年は違う。そう、僕は大学生という肩書きと共に「自由」という名の翼を手に入れた!歩いた、歩いた、クララが歩いた!!照りつける太陽は僕の物。夜空を彩る十尺玉の花火も僕の物。抜けるような青い空も僕の物。白いビーチを裸足でかける君も僕の…僕の…僕のも…妄想?あれ、ハハ、変だな、悲しくもないのに、何で涙がでちゃうの…? 姉さん、今年の夏も 冬 み た い で す ・ ・ ・ 。え、この文章どこかで見たって?うるさいよ。
・・・
自刃したい。
扼殺して欲しい。
当時は未だ童貞の喪に服していた18歳だったのですが、この日記は実にパンチが効いております。オレイズムのヨッピーさんあたりが読んだら「何このクソ日記?どこで笑えばええのん?」と詰め寄ってきかねない勢いよ。何で一人称が『私』なんでしょうか。クララが歩いた?いやはやこの表現力は凄まじい。思わず背中を蹴られたい。
早くもHPが0に近づきつつあります。
ちゃっちゃと次に向かいます。
■2002/07/06(土)
タイトル:ホモ・セクシャル
七月ですね。 僕が大学に入学してはや三ヶ月が過ぎました。 慣れない生活環境に最初は戸惑い、一人枕を濡らす夜を何度越したことでしょう。でも最近やっと今の環境に順応してきて、「本当の自分」を少しずつ出せるようになってきたように思います。かますボケ、はずむ会話、笑う友人達・・・。 順調、全ては順調…かに見えました。 しかし最近…。 何で僕がホモ呼ばわりですか?笑えない。ちっとも笑えない。 僕は健全な男の子だのに!人並みに性欲あるのに!僕は失意のズンドコにいます。早く地元に帰りたいです。地元のお好み焼き屋で鯛焼きかっ食らいたいです。え、好きな芸能人?もちろんケイン・コスギですヨ!
・・・
タイムマシーンがあったら、航時機があったら。
こいつを殺しに行けるのに。
確か当時はいわゆる『非モテ系』の日記が流行っていた頃であり、このような感じで自虐的なテイストが全盛だったかと記憶しています。日記の上ではあんな風に書いておりますが、当時の僕が「ホモ!」とか呼ばれていた事実は全然なかったわけで、もう何ちゅーかな……ケイン・コスギですヨ……。
■2002/07/12(金)
タイトル:グローバライゼーション
大学には色んな人間がいる。水商売をしてる奴、AVに出る奴、日本人じゃない奴から平凡な奴まで、まるでごった煮だ。それが大学の長所でもあり、僕自身良い影響を受ける事も多い。ただ、ハッキリ言おう、僕は帰国子女が嫌いだ、と。許せない、どうにも許せない。彼女らに問いたい。「なぜ日本にいるの?」口を開けば向こうは、向こうは。ちょっと待て、いつから「向こう」がアメリカになったんだ?「向こう」は山口県のことです、間違えないで下さい。そして最も虫唾がはしる言葉、「日本の男はちょっとね…」アハハ、死ねよバーカ。それなら大学に着飾って来んなよ、もんぺで来いもんぺで。大体何が違うってんだ。太さか?長さか?あ、両方だ…。お前らさぁ、アメリカの大学に行けなかったんだろ?日本しか行き場がなかったんだろ?じゃあもっと日本に順応しろ。中途半端な自己主張、殺意が湧きます。いつまでもアメリカアメリカうるせえ!アナルが小っちぇえことぬかすな!最後に今日の日記。女友達に僕の缶コーヒーの最後の一口を奪われたので怒ったら、相手は憮然として100円を叩きつけて帰っていった。ん?今年の風邪は鼻から?脳から?
・・・
キチガイの日記ですわ。これはねえ、やっぱり狂ってますよ。この人は。顔見てご覧なさい。目はつり上がってるしね。顔がぼうっと浮いているでしょう?これキチガイの顔ですわ。
当時の僕が何をそんなに怒り狂っていたのか皆目見当がつかないわけですが、こんなに語気強く日記を綴っていてはいけない。見る人を不快にさせてしまうし、これによって救われる人なんて誰もいやしない。人に読んでもらうのを前提として日記を書くならば、もっとマイルドに、かつ、愛に溢れたものでなくてはならない……そんなことを六年越しに、僕は感じているのです。
・・・
『グローバライゼーション』
「ヘーイ!ニィーク!」
後ろから陽気な声が聞こえる。振り返ると、キャンパスの真ん中を颯爽と走ってくるクリストファーの姿があった。
「アーユーファイン?」
クリスはいつだってこんな調子だ。雨の日も、雪の日も、風の強い日も晴れた日も。一番最初に口にする言葉は "元気かい?" 。こういうのがきっと『お国柄』ってヤツなんだろうな――そんなことを考えながら、僕は静かに『ファイン、センキュー』と呟いた。
「クリス、今日もステキね」
突然、脇からクラスメイトの裕子が現れた。裕子と僕とは同じクラスなのだが、留学していた彼女は僕より一つだけ年が上だ。だからなのだろうか、彼女と僕との距離は何だか少しだけ、遠い。
「日本の男の人って、女性と話す時、少しだけ"照れ"とか"気恥ずかしさ"とかあると思わない?」
その言葉の裏に『クリスと比べて……』という色があること、それは僕にだって分かる。いつでも無邪気で明るい笑顔を浮かべているクリスの姿は、同性である僕からしても眩しく見えるからだ。
「そういう日本的な奥ゆかしさって、俺、嫌いじゃないけどな」
「ううん、ダメ。だから日本は遅れてるのよ」
大げさなジェスチャーで語る裕子を見ているうちに、名状しがたい憤りが胸の中に沸いた。だったら、君はどうして日本に――喉まで出かかったその言葉を慌てて押しとどめる。ここで議論をしたって仕方がない。彼女の価値観と、僕の価値観と。そのそれぞれが少しだけ擦れ違っているだけのことだ。どちらか一方が正しい、という話ではない。
『日本の男は、ちょっとね』
ただ、それでも――どうして裕子はこの大学にいるのだろう。その考えは、いつまで経っても僕の頭から抜けようとはしない。明るい調子でオレゴン州でのことを語る裕子、パブの一席で欧米人のことを褒め称える裕子、てんで英語なんて話せない僕のことを侮蔑するような顔で見る裕子、裕子、裕子……。
裕子、君はどうして、日本にいるんだい。
「そんなに……」
「えっ?」
「そんなに海外がいいのなら、さっさとアメリカでもどこでも行っちまえばいい!日本に来たなら、日本にいるのなら、もっと、もっと!日本のことを好きになるべきじゃないか!」
「ちょ、ちょっとNICK!!何をするのNICK!!」
「こんなレギンスなんて……僕は認めないんだ!日本に居るなら、日本の女性なら――古式ゆかしく、もんぺを履くべきなんだ!!そうに決まってるよ!!」
「NICKやめて落ち着いてNICK!!そこは治外法権なのよNIIIIIIIIICK!!!!!」
「うるさい!マン州はどこだ!!」
「ノー、NICKそこはパール・ハーバーよ!!」
「ウアア、ウオオオオ!!」
(うっ……!)
トイレの、個室の中。
脳内でナショナリズムを主張しながら、僕はひっそりと、果てた。
「最低だ……俺って……」
遠くから予鈴の鳴る音が聞こえる。
僕はパンツを上げようともしないまま、いつまでもいつまでも、曖昧に届いてくる鐘の音だけを聞いていたのであった――
・・・
これ以外にも夥しい数の過去ログが存在しているのですが、ひとつひとつ読んでいるうちに割とマジで死にたくなってのでここらでストップ。土曜だというのにシャレになんねーもん見つけちまったわ。本当なら『どうして人は恋人に尿をぶっかけるのか』という日記を更新するはずだったんですが、衝撃のあまりこちらを優先しました。尿についての日記は明日あたり書きます。
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次回の日記が気になって眠れません
次回の日記期待してます。
僕はかけない派がマイナーだなんて信じられない・・・
へー、肉さんにもこういう時期があったんですね( ^ω^)
でもこの日記もまた6年後に見たら心臓ビクッ指先プルプルになるのでしょう?
今も未来も過去も恥ずかしがらず肯定してあげて下さい。
言いたい事は同じでも伝え方なんだと感じました
で、肉欲企画。を30歳になった頃に見て死ぬんですかね
続けてるってのが1番面白いんですが
さて、肉さん、六年です。
タイムスリップです。スリップノットです。ピポイコシです。意味不明です。
貴方は元気にしていますか?
今も日記を書き続けていますか?
これを見てもんどり打っていればそれは、肉さんが成長したという事ですよ。
これからも頑張って下さいね。
<六年前の肉欲棒太郎さんへ>
貴方には六年後不幸があります。
それを乗り越えれば神──所謂変態──になれます。
御健闘御祈りします。
では、また六年後に。
だって肉さんは肉さんだもの!!!
ほんとに六年前の文章?痛すぎたから流石にちょっと書き直したんじゃないの?笑
シンジ君がそこに、いた
でも内容は変わってないですよね。
今までで一番あなたを遠くに感じました。
高名な作家さんとか、過去のボツな作品
マジでこの世から消したくなるんじゃない
でしょうか?