寒くなるにつれてノスタルジックな気持ちになる。
そんな時、僕は決まって青春時代のことを思い出す。
人はひとりでは生きていけない。
常に何か頼るものを求めている。
自分を取り巻く状況、それが辛いものであればあるほど、何かに取りすがりたくなる。
受験勉強を考えてみて欲しい。
受験というものは、基本的に自分との戦いだ。
ストイックな態度で参考書を睨み、必死になって単語を頭に叩き込む。予備校に行ったり、家庭教師にアドバイスを受けたりという風に、他者と関わりあう場面もある。ただ、それはあくまでも "効率" の問題に過ぎない。実際に受験を受けるのは自分ひとりだ。代わりのきかない勝負、受験は人を孤独にする。
そんな時、人は心に『拠りしろ』を求める。誰かといたい、励ましあいたい、寄り添いたい!それは全ての受験生が、あるいは、孤独に戦う誰もが抱く、心のシャウト。
「うっわー、今日も図書館は人いっぱいだな」
「仕方ないよ、もう11月。みんな必死なんだもん」
「あっ、でもあそこ空いてるっぽい!ほら、急ごうぜ」
「もう、待ってよー」
「今日は数学の復習をしとくかな。何の勉強すんの?」
「日本史。この前の模試、散々な結果だったから」
「よし、じゃあお互い頑張ろうな」
「うんっ!」
競うでもなく、馴れ合うでもなく。男女二人の受験生は遅くまで勉強に励む。いつしか日も暮れ、用務員のおじさんが『今日はもう閉めるよ』と、生徒たちに声をかけた。
「寒いよね、すっごく」
「これからもっと寒くなるよな。風邪には気をつけねーと」
「あっ、もうバス来てる!急がなくっちゃ」
「おう、また明日な!」
「うん、明日――図書館で、また」
ニッコリと微笑み合いながら手を振るふたり。
くすぐったいような甘酸っぱいような、どこにでもある青春の群像。
人は弱い。
弱いからこそ誰かを頼りたくなる。
背中を預け合いたくなる。
それが若い時分となれば尚のことだ。
彼らは共に受験合格という志を抱き、その結果として "恋人関係" という選択肢を選んだ。とても幸せで、暖かな情景。だから僕はそんな彼らに、あるいはそんな選択肢を選んだ全ての皆さんにこの言葉を捧げたい。死ね。
もうちゃんちゃらよ。ちゃんちゃらおかしい。ワシもな、昔のことやから、こうやって心穏やかに語れるもんやけれども、ホンマに当時ときたら……そりゃ凄かったよ。ワイのことやない。周りや、周りにいる連中。もうワイの頭がどうにかなるんやないか!思ったよ、そんなことを。
時あたかも冬。身も心も寒くなるシーズン。それに加えて受験という極寒イベントが待ち受けているのだから、人々の顔は一様に暗くなる。
だからこそ、なのであろうか。
僕の周りで、突然。
夥しい数の受験生カップルが爆誕した。
「受験前だぞ!君たち、どうかしているんじゃないか!」
もちろん僕は叫んだ。が、大勢を前に、その声はあまりにも弱かった、遠かった。ヤツらは数を頼んだ勝負を仕掛けてきたのである。そう、カップルどもによる図書館の占拠だ。
『阿鼻叫喚の地獄絵図でしたね、ええ』
肉欲、後に述懐。向かい合い、あるいは隣り合って座る、不純異性交遊者たち。吼えろPTA!こんなことが許されていいのか!僕は天へと祈るのだが、PTAはいつだって肝心なときには役に立たない。オイルショックの反省が全く活かされていない――僕はバブル世代の不甲斐なさを呪った。
どうして『二人で勉強しよう!』などという面妖な結論に至るのだろうか。二人でやれば効果が二倍になる、という法はない。むしろ、効率の面から考えればマイナスですらある。僕は思うのだが――勉強をする時はね、誰にも邪魔されず自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ、独り静かで豊かで……分かるかね?お嬢さん分かるかね?
「えー、仮定法って全然分かんないー。英語きらーい。おしえてよー」
糞詰まりで死去しろ!アホか、と言いたい。こんなバカメスにはアドバイスの代わりにこの言葉を与えよう。
『読書百遍意自ずから通ず』(どくしょひゃっぺんいおのずからつうず)
他人に頼る前に、先ず自分でしなさいということである。
確かに疑問点を誰かに聞き、すぐに当意即妙な答が返ってくれば満足は得ることだろう。しかし、満足と理解とは決して同じ意味ではない。理解して、記憶した後にこそ、知的満足は得られるのである。いたずらに満足を求めていては学力は中々上がらない。その意味で言えばお嬢ちゃんに必要なのは彼氏なんかじゃない。ロイヤル英文法なのだ。

(これがロイヤル英文法だ!!)
「でも、ロイヤル英文法じゃ心のスキマは埋められない。彼氏だからこそ受験に励むことができるっていうか」
じゃあ聞くが、お前はロイヤル英文法によるオナニーを試したことがあるのか?一度でもある?――ない、ですよね。そうやって試しもしないうちに 『ロイヤル英文法じゃあ心のスキマは埋められない』 とか決め付けて、逃げ出して、耳を塞いで。
恥ずかしくないんですか?ロイヤル英文法の著者の一人であり、また著名な英単語『ターゲット』を生み出した宮川幸久氏に顔向けできるのですか?

(これが宮川幸久氏だ!!)
詰まるところ、現実逃避なんですよ。受験直前になって彼氏彼女を作るだとか、あるいは恋人を保持したまま受験に臨むとかね、その行為そのものが。全部 "逃げ" よ。およそ勝負に向かう者として相応しくない――とは言わないけれど、少なくとも 『恋人と一緒に図書館で勉強すること』 、これはいただけない。これを応仁の乱以前の日本法に当てはめれば、どうなるか?もちろん即死罪だ。乱世とはそういうものである。
「そんなこと言いますけどね、ウチらは二人で勉強し始めてから効率上がりましたよ?おかげで、揃って現役合格できたし」
あのなぁ……確かに君たちはそうだったかもしれない。でもね、こちらとしても一部の例外を、さも全体の傾向であるように語られても困るんですよ。あなたたちは合格した?あっそう、良かったね。ホント良かった。ハイハイ良かったね!
言いたかないけどね、例外は例外に過ぎないの。他の99.73%の連中は非常階段などで腰が砕けるようなファックをしてるの。そうなの。ソースは同級生の門田さん。あと、卓球部の関岡くん。もしくは、器楽部の城下くん。あるいは、後輩の小中さんとか。その他もろもろ全部そう、もうぜーんぶそう。ちなみに全部実名だからググるなよ。絶対ググるなよ。
それでも、寂しくなる瞬間は誰にでも訪れる。人は感情を有する生きものだ。言いようのない寂寞感や虚無感を抱くこと、それは誰にだってあるのだ。そこから逃れる術をどこに求めるか?非常に微妙、かつ繊細な問題である。
僕の場合はオッパイパブに通うことで寂しさを誤魔化していた。しかし、これは中々難しい選択肢だろう。まず金銭的な問題、そして法の壁がある。それらをクリアして初めてオッパイパブの門は開かれるのであるが、行ったら行ったで別種の絶望感が胸に去来することもある。僕のように三回死んでも三回生き返ることのできる体質なら別だが、オナニー後の虚しさが半端じゃない方には厳しい選択肢やもしれない。
じゃあどうすればいいか。
僕は言いたい。
寂しい者同士で寄り添えばいいのだ、と。
同好の士を募り、傷をペロペロ舐めあえば良いのである。
負の感情をぶつけるターゲットはカップルたち。闇のエレメントで身を固め、カップルひしめく図書館に向かい、命を賭した詠唱破棄を。
「見ろよ、楽しそうな顔してやがる。『日曜日はイクイクワイマールだね』とか話してるに違いないぜ。落ちろよ……」
「チャート式問題集とかやるフリしながら『ねえねえ、タンジェントって何だか示唆的じゃない?私たちも……』とか囁いてるんだろ。願書提出し忘れろよ……」
「ノートの端に "おしべ" って書いたらその日はOK、とか決めてんだろうなぁ。マークシート塗り損ねろよ……」
「『ねえ、チンポの摩擦は何ジュール?』『おいおい、トンチ問題かい?』『ううん、チンポ問題よ』とかやり取りしてんだろうなあ。コンドーム破けろよ……」
この手の結束は非常に硬い。あるいは、得も言われぬ満足感すらある。僕はこの "負同盟" と "オッパイパブ" を主軸として受験期を乗り切ったものである。
放課後、馴染みのタイヤキ屋に集まった盟主たちは 『カップルどもはなぜ許されないか』 というテーマで熱く語り合った。カップルたちが破局していく様をイメージする作業にも余念がなかったし、あるいは恋人の存在がいかなるデメリットを生むか?どれだけの無駄を発生させるか?そんなこともしばしば議論の的となった。
恋人なんてむしろ邪魔!
独り身でメシウマ!
他人の破局が面白い!
『戦略的童貞』
いつしか僕らの合言葉はそれになっていた。"敢えて"の独り身、"敢えて"の童貞。僕らは、後ろ向きにポジティブな受験生となった。
――しかし、僕は知っていた。そんな風にしてひたすらに呪詛を振りまく僕らだったけれど、誰の瞳の中にも
『大学に入りさえすれば……』
『上京できればすぐに恋人くらい……』
そんな光の宿っていたことを。
人は希望がなくては生きていけない。僕らは後ろ向きな言葉を叫び散らしながら、心の底では"輝かしい大学生活"という明日を、確かに望んでいたのだ。そして、その一作用としてカップルを卑下していたのである。振り返れば本当に若く、また愚かしい行為だ。
だけど、あの頃の僕らにそれ ――カップル蔑視、そしてオッパイパブ―― は、必要欠くべからざることだった。夢を夢見て、夢掴むために。だからこそ "将来かくあるべき姿" として君臨する目の前のカップルたちが眩しく、羨ましく、疎ましかった。幼かったのである、僕たちは。あの頃、切なくなるくらいに。
こんな風にして僕たち負の一族は大学に合格した。
古い古い話だ。
戦いを終えた者たちは、本当の安らぎを求めて旅に出る。時、あたかも春。キャンパスには有象無象の若い女性が――いや、あえて言おう。ギャルが!ギャルたちが!闊歩していた。俺は自由だ!叫んで、僕は駆け出した。
〜三ヵ月後、2002年7月〜
「ああ、竹下?うん、元気。お前は?この前お前が教えてくれたサイト、2ちゃんねるだったっけ?うん、あれ結構面白いよね。最近専ブラも入れてさ。あとさ、お前winMXって知ってる?あれの使い方がどうもよく分からないんだよね。え?明日早いかって?大丈夫だよ。出席取らない授業だし、サークル入ってないから学校行ってもヒマだし。だから映画のダウンロードの仕方とか教えてよ。うん、うん、そう。彼女?俺の彼女なら凄い勢いで右クリックしてるよ」
僕は知らなかったのだ。
あの日見た眩い未来(あした)――そんなものはどこにもないのだ、ということを。結局僕らは、いつだって泥臭い現実(いま)を生きなければならないのだ、ということを。
ハチクロに騙されてはいけない。
僕みたいなもんのリアルは、常に高校アフロ田中、ないし稲中でしかないのである。森田先輩はどこにもいない。
だが、それを嘆いてもいけない。
せめてウシジマくんでなくて良かった!
その幸福を感謝すべきなのだ。
人は急には変われない。
今日の日記はただ、それだけの話。
「あー、あとさ。ホームページの作り方とか教えて欲しいんだけど。そうそう、日記でも書こうと思って」
――そして、時計の針はゆっくりと今へ戻っていく。
古い、古い話である。
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あなたになら、私の出口を入口にしてもらってもいっこうにかまいません。
あえていいます。
ニクサンのニクサンを私のアレまみれにしてください。
追伸
いつもクローゼットのなかからみています…
じゃなかったら院に進んでも、今まさに賢者タイムに陥ってる私は何なんですか!?
俺も輝ける大学生活を夢見ていた一人ですw
人生の重要な時期である受験期くらい恋人を人間から参考書に移したっていいじゃないって毎度思うんですよね。そんな僕は高三の九月まで彼女と激しくファックしとりました。
本当にほうじ茶噴き出してしまった。どうしてくれよう
え、彼女とか都市伝説の類じゃないんですか?
まあ俺は彼女がいなかったのに受験に失敗したけどね……
今の肉さんと来たら、有名ブロガーとして、
あんなこと、こんなことまで・・・。
『彼女の一人や二人が何?あぁん?』ですよね、さすがです。
【肉欲より】
シッ!
http://2949.seesaa.net/article/31244108.html
【肉欲より】
シッ!
もうちゃんちゃらよ。ちゃんちゃらおかしい。
【肉欲より】
シッ!
【肉欲より】
どうか落ち着いてほしい。
【肉欲より】
はてなはやめてくれ!!
「追憶の彼女」読みましたよ!!
嘘つき〜。。
まぁ面白いからいいっしょ!
僕は、彼女を受験期に勉強のストレスのはけ口にしてました。
ぼくは受験に成功し彼女は受験に失敗。
あれは男の哲学ですよね
大人はいつだって嘘つきだ
今回の日記ではカップルに嫉妬する姿を自虐的に語り、そういうのが好きな人の支持を得る。
あざとし!
確かに正論だろう。
だけど、そんな正論は通用しなかったよ、肉さん。
僕にはカップル達に抗う術はなかったよ。
弱すぎた。幼すぎた。
せめて、オッパブを知ってさえいえれば。。
悔やまれる。けれど、遅すぎた。
こうも心が響くものなのか
↓
『王の力は人を孤独にする』
おいおい…またギアスネタですかww
永沢ばりに家が燃えてしまえばいいのに。
まあ面白いからいいけどw
リアルの自分みたいだ…。
いつも楽しく拝見させて頂いてます。
彼女と励ましあいながら受験勉強頑張ってますo(^-^)o
ちなみに彼女もここの大ファンです。
騙された!た!た!
てことで独り貫くよおおおお
うわーあああんちくしょー
秋から冬にかけて、なんだか人恋しい季節ですね。
でも肉欲さんの文章は寂しい季節もつまらない日常も、全部笑いに変えてしまうから大好きです♪
いつもありがとぉ(*^_^*)
追憶の読んだしwww結構真面目に書いてたしwww
俺も浪人して今年大学入ったんですが、
もうまさにその気持ちでした!!!(つД`)
だけど負同盟みたいなのはなかったですけどw
あぁ〜もう11月だけど、まだ大学入って異性と会話したことすらねええwwww
僕にそう教えてくれたのは肉さんでした
今、大学二年生。もちろん僕は今なお童貞
その時歴史は動いたとかに出演して欲しい