青春時代、僕がオッパイパブに全てを注ぎ込んでいた事実は今さら言うまでもない。もちろんそれは超・個人的な事情であり、その裏側では別の人間が別の人生を歩いている。極めて当たり前の話だ。
それでも『別の誰かがどんな人生を謳歌しているのか?』の部分をオンタイムで知る機会は意外と少ない。我々が『揺ぎない真実』というものを了知するのは、大抵の場合相当後になってからであろう。
話は逸れるが、もしかすると世に生きる女性たちは
「男って自慢話が好きよねぇ」
と思っているかもしれない。
確かにそれは真理だ。自分がいかに凄い野郎か?今進めているプロジェクトがどれだけビッグな代物なのか?そういう話を大好物とする男は相当数存在する。男のサガなのである。
しかしその反面で、男という物体は
「自分がいかにダメな経験をしたか?」
というテーマを好んで語る節がある。この1年で何キロ太ったか?いつぞやの飲み会でどのような失態を繰り広げたか?…といった具合に。どちらにしても注目を集めたい一心でそのようなトークをカマしているであろうことはほぼ間違いない。
「高校の頃はさぁ、足繁くオッパイパブに通ったもんだよ」
飲み会においてしばしば僕が放つキラー・チューンがこれだ。当然これは "ダメ話" の方に分類される。そんな話をして一体何の得になるのか?と問われれば苦しいが、
『こんなにダメな野郎、そうはいないだろ?』
という部分を語りたいのであろう。実に情けない自己顕示欲である。それによって何をアピールしたいのかは自分でも謎な部分だ。
『当時の俺は童貞だったけど、何も知らないネンネではなかったんだぜ』
誰も聞きたくない、切ない告白。
オンデマンドでは口にできなかったけれど、酒の場でなら言える気がするのである。
しかしながら上には上がいる。いや、この場合は『下には下がいる』と言い換えた方が良いのかもしれない。
先日、中学時代の同級生と居酒屋で飲んでいた時のことだ。僕はいつもの調子でオッパイパブ・トークという盆の上で踊り狂った。得意満面の笑顔で『いかにオッパイが素晴らしいものだったか』を同級生女子に力説しまくる24歳男子。
「やっぱさぁー、オッパイも人によって全然、もうぜんっぜん!味が違うワケよ!分かるか?その境地が」
秋元康ならば決して紡がないリリックだ。分かりたくもないであろう境地。青少年は足を踏み入れてはならない地平。
「でもさぁ」
一仕事終えた風情で酒を飲んでいた僕のところに、ライトな異議が飛んできた。それは何度となく経験してきたことである。
『お金払ってオッパイなんか揉んで虚しくないの?』
『そーゆーのに青春費やして、寂しくなかったの?』
女性から向けられる紋切り型の言葉の数々。僕はそれら全てをことごとく撃破してきた。虚しいか?と聞かれれば『虚しくないね』と答えるし、寂しいか?と問われれば『寂しくないね』と説示する。同情や憐憫を傾けるのは勝手だが、僕の思い出を土足で踏みつけるような真似は許せないし、許したくはないからだ。
ただこの時は少々……いやかなり、風向きが違った。
「でもさぁ、そういうのって誰しもあることなんじゃないの」
――あるのか?いや、ないだろ!僕は心の中で叫んだ。同じセリフを男が言うならいざ知らず、目の前の彼女は紛れもなく女、THE・メスである。罵倒や哀れみの言葉を受けたことは多いが、こういった展開は初めてだ。
「アタシもさぁ、昔いきなり車持ちの男に拉致られてさぁ」
話が猛然とした勢いで魔界へと突入した。この人は何を言っているのだろうか?僕の脳内は混迷を極めるものの、彼女はそれに構わず口を開く。
『負けたく、ない』
振り返って考えれば、あの時の彼女の瞳にはそんな炎が宿っていたように感じられる。クズ自慢、それは男の専売ではないのよ――きっとそれは、全ての女の心のシャウト。
「何回か遊んだことある人で、その日もいきなり誘われて。まああんまり乗り気じゃなかったんだけど、別に暇だからいいかな?と思って車に乗ったのね。したら何か全然知らない山奥とかに連れてかれてぇー。んで、いきなり車降ろされるし」
「そ、それで一体どうしたの…?」
「すげぇー困ったよねー」
困るだろうなぁ。いや!論点はそこじゃない。というか、僕が聞きたいのはお前の精神状態ではなく、もっとこう……具の話をお聞かせ願いたいのである。
「その後は?」
「やっぱそんな所で降ろされても困るじゃん。したら男が『ここで降りるのが嫌だったらついて来い』とか言うワケ。だからもう一回車に乗ったのね。したらどっか知らない家に着いたんだけど、そこに男が4人いてさぁー」
「えっ」
「まぁ6Pしたよね」
チーズの話だったのか。ノン!雪印は関係ない。あくまでもこれは具のお話なのである。僕は半ば愕然としながら話の続きを促した。
「でも、そのー……足りなくないですか?」
「何が?」
「穴、とか」
当然の疑問。人間には『一物一穴主義』という概念が導入されているが、いないが、まあともかくアス・ホール、口、苦し紛れに両手、を発動してようやく五つである。そう考えれば6Pも決して不可能とは言い難い。
それでも人間という存在には自ずと限界が生じるものであり、概念的にはあり得ても実現達成は不可能、後ろから前から、横から縦から、襲い来る肉体言語とか何とか、愛は地球を救うとか、とにかくもう僕の地球をどうするおつもりなのか。
「そんなの同時に相手できるワケないじゃん」
「じゃあどのように?」
「部屋の前で待たせて、一人ずつ順番にファックした」
6Pなのか?!それは。否、この際そんなことは瑣末な問題だ。
『順番待ちでファック』
シュール過ぎる絵なのである。それは目の前で五人兄弟が量産される光景でしかない。一体誰が長兄になるのか?揉めただろう、確実に。果たして彼らは、どんな気持ちで順番を待っていたのだろうか?シチュエーションが異常過ぎて僕の理解が追いついてくれない。
「それがいつ頃の話なの?」
「確か……16の時かな」
僕がオッパイパブに狂っていた時期とピッタリ符号した。八年ぶりに露見したハードコアな真実である。やはり『シビれのある真相』というものは後になってからしか暴かれ得ないものなのかもしれない。
「それで、大丈夫だったの?」
「意外と楽しかったよ。全部外で出したし」
彼女はあらゆる場面においてピントがブレていた。結局、ダメ自慢をするような人々は "心に据えるべき重要な焦点" みたいなものが一般常識から大幅に外れているのである。そのブレが大きければ大きいほど俗世では生き辛くなってしまうのだが、飲み会の席においてはブレ幅の度合いに比例してトークの破壊力は増す。まことに罪深いことではあるものの、それが事実だ。
「それで何だっけ?オッパイパブの話?」
「忘れて下さい!後生ですから忘れてください!」
彼女の放つハードスメルな話を聞きつつ、自分がまだまだ未熟であることを知った。上には上が……いや、下かもしれないが、どちらにしても偉大な先達は数限りなく存在する。オッパイパブに通っていた!程度の話で天狗になってはならない。
その日、僕は『オッパイパブがいかに素晴らしいか?』を語った全ての夜に、全ての酒に、そして全ての人々に対し――全力で詫びたく思ったのであった。
それでも見えない敵と戦い続ける僕は "もう誰にも負けたくない!" という一心から
「19歳の頃に調子に乗って浮気をしたらその女性から彼女ところへ『アンタの彼氏バリバリ浮気してるよ^^』というエキサイティングなメールが届き、驚愕した彼女が『変なメールが届いたんだけど!?』と問いかけてきた瞬間に『チェーンメール。それは間違いなくチェーンメール』と返答しつつ光の速さでメールを抹消したものの、その後でボコボコにされたでござるの巻」
を飲み会で語るべく、毎日トーク・スキルに磨きをかけている最中である。
譲れない戦いが、そこにあるのだ。
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デッドマンズ・ギャラクシー・デイズ
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えろげ届きました。ありがとうございました。ボクシングのゲームかと思うほどスリリングでした。
よくあるよね^^なんて言えない・・・
あるよねぇ〜、6P。
ねぇよ。
正直、身体もたないよ…。
なんか元気でてきた。
なんか涙でてきた。
穴が足りないにしろ、順番待ちはシュールすぎるよw
なんかこの話読んだらもうグズ自慢出来ないな…