男はどういう風に成長していくのか?という問題を考えた時、これについては『知ってる人は知ってるけれど、知らない人は知らないかもね』ということになると思う。例えばこれを読んでいる男性の方、ないし兄弟がいらっしゃる方からは
「なんとなく分かる」
との声が返ってくるだろう。が、家族に父親以外の男性が存在しなかったとすれば。幼少期〜思春期〜青年期において、男性がどのような成長を遂げるのか……というのを知らない可能性が高い。
僕の義姉がそうである。義姉は女三姉妹の中で育ったため、健全な男子がどのような成長過程を経るか、という部分には疎いそうだ。確かに男三兄弟の中で育った僕にしても、女の子がどのような成長過程を経て『女性』になるか……なんてのは知る由もない。
「だから思春期の男の子とかに接するのって、ちょっと怖い部分があって。そういう意味で、私は女の子が欲しいかなー」
義姉の描いた明るい家族計画。無論、僕に依存はない。何か思うとしても 『姪が増えるよ!』 『やったねにくちゃん!』 程度のものである。

(イメージです)
しかし、赤ちゃんというのは天からの授かりもの。最近では様々な方法があるとは聞くものの、生まれてくる子供の性別を100%コントロールするのは難しいことだとだろう。
だから僕は聞いた。
「義姉さんは何が不安なんですか?」
「そうだねー…うーんと……」
「オナニーのこととかですか?」
人にはそれぞれ "良いところ" がある。
率直さ、それが僕の長所だ。
「ま、まあね。確かにそういうのも不安かも。兄弟がいなかったから、そういうの全然分かんないし……」
「義姉さん、いいですか。男は絶対にオナニーしますよ。間違いありません。むしろしない方が問題だと言えます。これは確実です。なあ兄さん?」
「うむ」
「そ、そうなの……」
「そうですとも。僕なんかは小2あたりから上り棒を性的な意味で使う日々でしたしね。その後はビート板に移行し…と、まあそれはどうでもよろしい。つまりですね、男子というのはある時を境に異性に対して並ならぬ興味を抱くわけですが、その姿を見ても決して畏怖しちゃいけない。また、強い調子で追求してもダメだ。そっと優しく……あたかも、ひな鳥の成長を見守るような目線で……接してあげること。これが何より大事なわけです。なあ兄さん?」
「うむ」
「へ、へえ……」
その後、僕は義姉に対して延々と『男のオナニー論』を展開した。もちろん、思いやりの気持ちと共に――である。世の中には意味のない紛争が数多はびこっているが、それはきっと相互理解が足りないせいだ。だからこそ、早い段階でティーン・ボーイズの精神性を理解しておけば…義姉とティーンたちの間に、諍いなんて起こるべくもないだろう。
"いい仕事、したな"
そんな思いと共に僕は兄の家で焼酎を舐めた。先日の話である。
さて、上でも述べたし当ブログでも何度か言及したことがあるが、男の子というのはある時期を境に怒涛の勢いで性欲が高まる生き物だ。ある時期、というのは人よって異なるが、おおよそ 小学校高学年〜中学校入学前後 あたりが一般的か。いわゆる『性のめざめ』というやつだ。
『めざめ』迎えた僕らの前に大きな壁として立ちはだかるもの。それは確実に "オカズ問題" だろう。
幼い時分である。資金力がない僕らは、エロ・アイテムを『購入』することは難しい。正月や誕生日などでお小遣いを手にしたとしても、若年齢のため購入を禁じられてしまう…という側面もある。辛くて悲しいが、これが日本の現実だ。
それでも小学生の頃の僕らは猛り狂っていた。ヌきたい!そのパッションは11歳の頃であっても強烈な情念として我が胸に宿る。
そんな、小学生なのにまさか……
と思われるかもしれないが、幼い分だけ常識や分別に欠けるため、本能からの欲求に対しては抗いがたいものがある。理屈じゃないんだ。
ヤンマガやヤンジャンのグラビア、余裕でオカズになった。電影少女や地獄先生ぬ〜べ〜、俄然ヌいた。もちろんそれだけで僕らのパッションが霧散するわけではない。ヒトというのは業にまみれた存在である。ひとたび何かで満足しても、次からはより強い刺激を求めてしまうものだ。
『もっと…もっと破廉恥なブツを』
ハアハアと荒い息を吐きながら、新たなオカズを物色する小学生たち。まさにシャブ中の如し、餓鬼の如しである。目は落ち窪み、動悸は激しさを増し、四六時中ピンクな思考で頭が一杯になる。繰り返すが、これは何も僕だけの話ではない。あなたの彼氏も、旦那も、お父さんもお爺さんも。みんなが同じ道を通っているのだ。例外なんてどこにもない。
そんな停滞した状況を、一気に破る光明が現れた。当時隆盛を誇っていた『ギルガメッシュないと』という深夜番組である。僕のクラスメイトの一人がギルガメッシュないとの情報をキャッチするや否や、その報は一気呵成の勢いでクラス中に知れ渡った。
オッパイを見ることのできる番組が、あるらしい――
瞬間、魂が震えた。2Dじゃない、水着越しじゃない。生のオッパイが、そこに。
ただ、一つだけ問題があった。それは僕に自室がなかったこと、そして放送枠が紛れもなく『深夜』であったという二点である。
苦しんだ。ジパングはすぐそばにある、にもかかわらず…手を出すことができない。
もう無理かもしれない――
所詮、小学生には手の届かない代物だったんだ――
誰もが、諦めの声を漏らした。
だが、その時。
録画をしてみたらどうだろう
肉欲は戸惑った。当時、我が家のビデオデッキは居間兼両親の寝室にあった。録画をするとなると、当然深夜にビデオデッキが動き出すことになる。その音を感づかれない可能性、低くはなかった。
無理です、できません
友人は思わず叫んだ。
俺たちがやらずに誰がやるんだ
俺たちが作り上げるんだ、俺たちのオカズを
友人の熱い思いに、肉欲は心打たれた。
クズの血が騒いだ。
やらせてください
こうして男たちは、『ギルガメッシュないと録画作戦』へと踏み切った。1995年頃の話であった。
作戦は順調に進んだ。それぞれが手分けをし、深夜番組の録画を開始した。ギルガメッシュないとだけではない。新聞欄を鷹の如き鋭い目つきで精査し、『これは』と思う番組名のものはあまねく録画した。
もちろん、外れも多くあった。
また、外れちゃったよ――
苦渋に満ちた表情でそう語る技術者(クラスメイト)。しかし、僕らに落ち込む暇はなかった。"外れ"番組の名前は全てリストアップされ、闇のリージョンコードとして僕らの間に伝達された。爾来、ミスは目に見えて減っていくことになる。
そして幾数日が経過し。
ついに役者が、揃った。
やりましたね
誰かが言った。
まだだ。まだ、最後の作業が残っている
別の誰かが、叫んだ。
膨大な数のビデオテープが、一人の技術者(クラスメイト)の家に集められた。それらは全てナマの素材である。オッパイシーンも多々あるが、当然CMや別の番宣など、不要な情報も含まれていた。それでもいい、多くの技術者(クラスメイト)はそう考えていた。しかし、一人の男の考えは、違った。
最高の一本を、作ろう
男の家にはビデオをダビングできる機材がある。それを駆使して、完全なオカズ・ビデオを作ろうじゃないか――男は、そう言った。異論はどこにもなかった。
3日、待って欲しい
3日あれば、選りすぐりのビデオが完成する
男の力強い言葉に、皆が頷く。今にも暴発しそうなパッションは確かにあったが、男同士の契りの前に、欲望は遠く霞んでいった。俺たちは――待てる。強い確信だった。
ただ待つだけの3日は、果てしなく長い。
(いっそ、ヤンマガのグラビアで抜いてしまえば)
そんな弱い気持ちが胸に芽生えた夜もあった。しかし、耐えた。男は、そして技術者(クラスメイト)たちは、砂を噛んでただ、耐えた。
あの日から三度目の朝日が地上に輝いた時。
吉報が、クラスに轟いた。
完成したぞ
志を共にした技術者たちが、差し出された一本のビデオテープを取り囲む。そのラベルには『ドラゴンボールZ』と記されていた。完璧な仕事だ――誰かが嘆息を漏らした。
独占しようとは思わない
これは皆で作り上げたものだ
ビデオテープさえ用意してくれれば、いつでもダビングする
願ってもいない申し出だった。その日、技術者(クラスメイト)たちは帰る道すがら、揃ってビデオテープを買い求めた。未来への、投資だった。
ダビングには時間がかかる。
『まずはお披露目会をしよう』
再び、技術者(おとこ)たちが一つの部屋に集まった。黒いテープがビデオデッキに飲み込まれていく様子を、皆が固唾を飲んで見守る。最初にノイズが写った。そして次の瞬間――
オッパイだ!
オッパイが、写っている!
オッパイが、写っている!
誰もが手を取り合って喜んだ。一つのオッパイが終わると、すぐさま次のオッパイが映し出される。CMなどは一切存在しない。あれだけ憎たらしかったイジリー岡田の顔は、完全に消えうせていた。それは圧倒的な勝利だった。
俺たち、やったんだな
誰かがそっと、呟いた。
違う、これで終わりじゃない――ただの、はじまりさ
その言葉を聞くと、皆が前屈みで……笑った。
マスターテープはダビング主の手元に収められることに決まり、僕らは『ドラゴンボールZ』と記されたダビングテープを手にすることになった。およそ120分の超大作である。僕はそのテープを学習机の奥深くに眠らせ、家人のいない頃合を見計らっては、偽りの神龍を探す旅に出かけた。それはきっと僕だけではない。あのドラゴンボールZは、確実に僕たちに夢を与えてくれた。ありがとう、鳥山先生。
栄枯盛衰、会者定離。
奢る平家も久からず。
栄光はいつまでも続くものではない。
AVが手に入ったらしいぞ
雷鳴のような一報だった。誰もがざわめいた。他のクラスから駆けつけてくる者すらいた。
一体、どうやって
当然の疑問である。レンタルは無理、ましてやAVの購入など不可能だった頃の話である。AV、その存在を知ってはいても、所有することなどはまるで雲を掴むような話だった。
UFOキャッチャーで、取った
あ、と思った。確かに駅前のゲームセンターに設置されたUFOキャッチャーは、AVが景品として選ばれていた。しかし、そのゲームセンターは近隣の中学、高校に通う名うてのワルたちが通いつめる魔窟だった。そこに小学生だけで行く――考えられないことだった。しかし現実に、AVが目の前にあった。
僕たちはすぐさまAVの量産体制に入った。悲しみは等分に、喜びは等倍に。また新たなビデオテープを買い求め、ついには願って已まなかったAVをこの手に入れた。
だからそれと同時に。
僕たちに絶え間ない夢を与えてくれた『ドラゴンボールZ』は、静かにその役目を終えた。
きっと永遠は、どこにもないのである。
そして時間は流れる。僕たちは、いつまでも子供のままではいられない。あれほど遠かったはずのAVも、中学校に入学すれば途端にその距離を縮めるものだ。
中学に入ると、諸先輩方は当然のようにAVを所有しておられた。革新的な話であった。更に、我がソフトテニス部には長年の先人たちの審美眼に耐え、風雪を越え、それでも燦然たる『至高のオカズ』として殿堂入りした一本のAVがあった。それは部員から部員へ、先輩から後輩へと受け継がれていった、伝説の一本。
きっとそんな一本は、当時の日本中のどこにでもあったことだろう。現に、バレー部やハンドボール部にも同じような一本があった。受け継がれていくもの、変わらないもの。夢から夢へ――それはまさに、形而上のタスキとなって。
ダビングをしよう、という声はあがらなかった。所有しないからこそ、価値を増す物は確かにある。あの時、部室で殿堂入りしていた一本(主演:瞳リョウ)は確実にその類のAVだった。誰かが持ち帰り、戻し、また誰かが借りる。あのビデオの中で華麗に舞っていた瞳リョウは、一体清らかな男子中学生から何ガロンのザーメンを搾り取ったのだろうか。まこと、罪深い存在である。
寂寞とした気持ちもないわけではない。オカズの数は豊富になったけれど、僕たちは一度来た道を戻ることはできない。ヤンマガで、ぬ〜べ〜で、ギルガメでヌいたあの頃の気持ち。それはもうどこにもないし、あの時のオカズでヌくことは、もうできない。悲しいが、それが現実だ。『成長』、その言葉の意味を知りたい時は、男子中学生に聞いてみるといいだろう。
これが激しく迸る男子たちの情熱譜である。もちろん高校生になっても、大学生になっても社会人になっても――オカズを集めることはどうしてもやめることができない。ただ、そこに向かう情念については、自ずと差異が生じてくるだろう。今、僕の中に、深夜番組を切り貼りしてダビングする熱意は存在しないからだ。
長くなってしまったが、最後にもう一度。もし将来、あなたのお子さんが狂ったような眼でオカズ探しに明け暮れていたとしても……どうか心配しないで欲しい。それは、正しい成長の姿なのだ。
犯罪行為を助長しろ、とは言わない。ただ、モザイク消し機を購入する行為や身分証を偽ってAVを借りる行為、あるいは修学旅行で女子風呂を覗こうとする行為があったとしても。ご子息の行動を、あまり咎めないであげて欲しい。おそらく、彼の中に悪気はなかったはずなのだから。
多感な時期、それは誰に対しても訪れる。
そんな時、親としてどう接するべきか。難しいところだが、どちらにしても愛を持って接してあげれば…間違った解答は導かないのではないか。少なくとも僕はそんな風に思っている。
――大学入学後、実家に帰省すると所蔵していたはずの快楽天、メガストア、ペンギンクラブ山賊版などのブツが全て処分されていた事実に慄然とした記憶を掘り起こしながら。肉欲拝。
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ちち丸出しの運動会みたいなやつなかったっけ?
懐かしき思い出・・・
長男が現在11歳…とてもこのことに関しては悩んでおりました。
ありがとうございます。
僕もお世話になりましたュあとアイズとか
まあそのせいでガキの頃から色々汚れてましたけどね…
家捜しする楽しみが無くて非常につまらないです
肉体面ではアノ部分の正しい洗い方や皮の手術とか気になります。
最初の何回はアレが出なくて、本と違う!とかパニくったけど、初めて出た時(1ccぐらい)にめちゃくちゃ感動した記憶を思いだしました。
それからはオナニー三昧なので、夢精したことないのが、唯一の心残りです…
このことについてコメントお願いします。
それはそうと、「俄然」の意味は辞書で一度調べておきましょう。
無論肉さんは俄然の辞書的意味など知ってらっしゃるだろうが、それをこのように三回転半に捻りを入れて使っているわけですな…。
さすが肉さん!!俺達に出来ないことをやってのける!!そこにしびあこ。
…感動した!!!