注:今日の日記は福本伸行作品を知らないとあまり楽しめない仕様となっております。ご了承下さい。
ここは区立幼稚園『性愛』。
両親が共に働いている"ワケあり"の児童たちが集められた場所。
キンッ……コンッ……カンッ……コンッ……!
「昼食の時間だ……」
ざわ……
ざわ……
「ないっ……僕の弁当が、どこにも……ないっ……!」
ざわ……
ざわ……
「騒がしいですね。どうしました?」
「先生……僕の弁当がどこにもっ……!まるで水溜りが蒸発してしまったみたいに……なくなってやがるっ……!」
「それは困りましたね……」
「だから施せっ……!僕に、施しを与えろっ……!それが貴様ら大人に課せられた唯一の使命……背負うべき債務っ……!」
「……」
「さあ食わせろっ……!僕にまんまをっ……!」
「なるほど……。ふむ、無償で食事を与えることはできませんが、弁当代の融資でしたら問題ありません」
「わ、分かった、背に腹は代えられない……それで手を打とう……とりあえず500円ほど貸してもらおう……」
「なお、この貸付金の金利は利率1.5%の10分複利とさせていただきます。悪しからずご了承下さい」
ざわ……
ざわ……
「ば……馬鹿野郎!金利1.5%の10分複利だと?たかが弁当代に、通るかっ……そんな暴利……!」
(おい……あの金利って……)
(ああ……500円借りたら、4時間後には700円程度にまで膨れ上がることになる計算だ……)
(バカなっ……やっこさんのお年玉、吹き飛んじまうぞ……!)
「もうやめろよっ……そういう考え方っ……!子供を騙してお年玉を掠め取る、阿漕な手口っ……!子供は国の未来……!国家の財産っ……!労われっ……児童をっ……!」
「何も無理に貸付けようとは思っておりません。幸い、電話は無料で提供しております。ささ、遠慮なく母上にお電話をなさって下さい。弁当の追加を頼むべく、なんなりとご家族にお電話を……」
「鬼かっ……貴様らっ……!それでも人の子かっ……!」
(あいつの母親って……)
(ああ、今頃はマダム連中と優雅なランチ中……それも旦那の稼いだ給料を湯水の様に使いながらのセレブランチ……)
(そんな最中に電話をかければ、即アウツ……!帰宅したヤツを待っているのは、メンツを潰された母親からの鬼のような折檻……!)
「僕は、僕たち児童は……子供は……未来に亘って貴様たち大人どもを支え続ける柱……礎となる存在っ……!いわば貴様らの受給する年金の土台となる英雄……!だから一も二もなく与えるべきっ……!最上級のコンビニ弁当を……行政が、国が僕にっ……!」
「ククク……暴論……貴様の言は暴論甚だしいっ……!将来的に貴様が年金を払う番になったとしよう……しかしその金を俺が受け取ることができる保障がどこにある……?貴様が成人するまでに死なない保障がどこに……?ないっ……!そんな保障はどこにもないのだっ……!!だからこそ敢えての『融資』っ……!!遠い年金よりも近くの搾取っ……!!これが大人のさんすう……」
「ぐっ……くっ……!!」
「とはいえ、我々も鬼ではない……どんな社会にあっても"チャンス"は平等……だから君に与えよう……未曾有の"チャンス"を……」
ざわ……
ざわ……
(まさか……)
(『アレ』が始まるのか……?)
「ここにたまごボーロが10粒……これを君に貸し付けよう……おっと、まだそれを食べてはダメだ……我々はあくまで『貸す』のみ……処分権限は君にはない……」
「つまりはこのたまごボーロを元手にギャンブルをして、これを増やせということか……」
「イグザクトリー……そのたまごボーロが10粒を超えたとき、初めて君はたまごボーロを口にする権利を獲得する……利子は付さない、最後に10粒を返済すればそれでオーケー……他に説明はいるかね?」
「もし……ゲーム終了時に10粒を割り込んだ場合は……?」
「ククク……聞くかね、それを……まあいいだろう……ゲーム終了時に"たまごボーロ返済不能(オーバーローン)"に陥っていた場合……もはや我々は容赦しないっ……!地獄の園長室(べっしつ)行き……!」
ざわ……
ざわ……
(園長っ……園長室っ……!!)
(伝説の幼児性愛者……性愛グループの園長っ……!)
「とどのつまり世の中の大人は並べてペドフィリア……聖職者の仮面を被っていたとしても例外は絶無……たまごボーロ返済不能(オーバーローン)に陥った時、君の債務は身体で担保していただく……」
「くっ……汚ねえっ……!」
「汚い……?汚いのはどっちだっ……!貴様ら児童はいつも……いつもっ……!我々大人の庇護下に置かれてきたっ……!それがさも当然のことであるように、恵比須顔でっ……!三度三度の食事は当たり前、あまつさえ三時にはオヤツっ……!!そのオヤツが気に入らなければ母親を怒鳴りつけっ……時になじりっ……カルピスが薄いと怒鳴りっ……!!その貴様らが汚いなどと口にするかっ……!!世のサラリーマンを見ろっ……!!安い小遣い……終わらない残業……付き合いの飲み会……休日出勤……!!三度三度の食事など夢、桃源郷の類っ……!オヤツなど絶無、角砂糖を舐めて凌ぐ日々っ……!!その現状を斟酌して、なお貴様は大人を汚いと罵るかっ……ブチ殺すぞっ……!!」
「ククク……まるで貴様ら大人が生まれつき大人であったかのような口ぶりだな……まったく、虫唾が走る……」
「誰だっ……!許可なく喋ったのはどいつだっ……!」
「ククク……俺さ……」
ざわ……
ざわ……
(あ、あいつは……)
(ああ、伝説の勝負師……)
("はな組"の"山田"っ……!)
「お前ら保育士だって享受したのだろう……その"甘ったれた幼児期"とやらを……それを棚に上げて一方的な説教……訓話……ヘドが出るぜ……」
「黙れ……"失われた10年"を経験してもいないガキがっ……分かった風な口をきくなっ……!」
「失われた10年……確かにあの時、俺は未だ親父の陰嚢の中を這いつくばっていた……それは事実……しかしながらっ……!お前が幼年期の頃は、日本はバブル経済期っ……!空前絶後の狂乱時代っ……!国中に札が飛び交っていたっ……!」
「貴様……それをどこで……!」
「大切なことは"めばえ"が全部教えてくれた……あんたらが幼年期〜幼少期にかけて、どのくらいの贅を尽くしたかということもな……」
「黙れ……黙れっ……!お前に分かるのかっ……!『すき焼きに入れるのは豚肉なのよ』と言われ続け……欺かれ続けっ……!そのことを疑うことなく育った者の気持ちが……後になって『すき焼きに豚肉とか有り得ないんですけどww』……とバカにされた者の気持ちが……ぬくぬくと育ってきたお前に……分かるのかっ……!」
ざわ……
ざわ……
(話をすり代えた……)
(ヤツもまた……稀代の博徒(ほいくし)っ……!)
「分からないね……結局のところ、俺たちにできるのは"通信"……つまり『通じたと信じる』ことだけ……この地球に60億の人間がいれば、60億の孤独があるばかり……まあいい……とにかくも俺はアンタらの提示するギャンブルに興味を持った……俺も外ウマに乗らせてもらおうか……」
※外ウマ=ゲームの勝者を予想して賭ける行為
「"山田"さんっ……!」
「いいだろう……この性愛、外ウマ行為は禁じていない……最も、そのリスク故にそんなバカげた真似をする園児はいなかったがな……とにかくもお喋りはここまでだ……ルールの説明に入る……」
『限 定 お は じ き』
ざわ……
ざわ……
(よりにもよって……!)
(店側が一番得意とするギャンブル……)
(あのゲームを受けて"娑婆"に帰ってきた園児は……いないっ……!)
「基本的なルールは……通常のおはじきと同じ……ただ一つだけの限定がある……つまり『こちらが10個のおはじきを使うのに対し、貴様らは一個のおはじきしか使えない』……理解できたか……?」
ざわ……
ざわ……
(汚いっ……!1対10、これはまさに多勢に無勢っ……!)
(しかしこれこそが……奴らが長年かけて作り上げてきた無敗の方程式……)
(勝ち目は……皆無っ……!)
「背に腹は代えられない……受けよう、その勝負っ……!!」
・・・
「オイ!さくら組の大石が『限定おはじき』やるらしいぜ!!」
「何だって?こりゃメシ食ってる場合じゃねえ!!」
「見れるか?久々の別室行き!」
・・・
ざわ……
ざわ……
「さて山田くん……大石くんのベットは終わったが……君は幾ら賭けるのかね……?」
「ククク……」
「おやおや……たまごボーロ一袋とは、随分弱気な……!」
「そして二袋……これで三袋……四袋……」
(ど、どうなってんだ山田のヤツ……アタッシュケースの中から次々とたまごボーロの袋が出てくるぞ……!)
(スゲェ……どこから用意したんだ、あんな大たまごボーロ(大金)……!)
「積もうか……ヒジの高さまで……これで負ければ、貴様は間違いなく破滅っ……破たまごボーロっ……!」
「ぐっ……くっ……!いいだろう、乗ったぞその勝負っ……!」
「や、山田さんっ……僕っ……!」
「心配するな大石……勝負はワンチャンス……先にブレーキを踏んだ方が負けっ……!」
『限 定 お は じ き ・ 開 始』
「まずは俺が先攻……」(カシッ!)
「グッ……!初手からなんて急所を攻めやがるっ……!」
(えげつねえっ……えげつねえっ……!)
(序盤から心理戦に突入かっ……)
(圧倒的物量……不可能への挑戦……ヤツらは現代のドン・キホーテ……!)
「次は俺の番か……よしっ……!」
「♪……かーさんが……よなべーをして……てぶくろ……を……あんで……くれたっ……!」
「……!!……っ」(カシッ!)
ざわ……
ざわ……
(大石のおはじきが……!)
(あれではまさに格好の餌食っ……)
(長い戦いだったが、ここまでか大石……)
「汚ねぇ……汚ねぇぞ貴様っ……!」
「戦場で汚いもクソもあるかっ……!詰まるところこの世は戦争……全てのことは血を流さない殺し合いっ……!それに気付けなかったお前の甘さが勝負の帰趨を決するっ……!さあ死ねっ……死ねっ……死ねっ……!」(カシィッ!!)
ざわ……! ざわ……!
ざわ……! ざわ……
ざわ……! ざわ……!
刹那、弾き出される大石のおはじき――中空に舞って。
一瞬が永遠の長さに感じられる。
大石は負けた――そこにいた誰もがそう感じていた。
ただ一人、山田太郎を除いては。
「おおおおおっ……!ロン……!ロン……! ロン……!ロン……!ロォォォン……!!勝ちっ……!ワシの勝ちじゃっ……!ヒヘ、ヒヘヘヘヘっ……!!」
「あ……ああ……あああ……」
「ククク……さあ、準備してもらおうか……別室(えんちょうしつ)に行く準備……」
「チョンボだ……」
「あ……?」
「お前が落としたと思った大石のおはじき……それは束の間に見えた幻影……お前が真に落としたもの、それは……」
「この……たまごボーロ……」
ざわ……
ざわ……
(た、確かに大石のおはじきが落ちた先にはたまごボーロが落ちている……)
(これは明らかなるチョンボっ……!逃れ難き罪悪……!)
「ククク……限定おはじき、規則1項2条……『おはじき以外の物を弾き飛ばした者、その時点で負けとする』……これによるとアンタ、負けってことになるな……」
山田の手にしっかりと握られたたまごボーロ。地面を見るが、確かにそこにはおはじきは転がっていない。保育士の見た束の間の陽炎、勝負の熱に浮かされた彼はおはじきをたまごボーロと取り違えたのであった
――それが、余の者が認識した全て。真実は別のところにあった。この時、山田の手に握られていたのは紛れもなく大石のおはじき。たまごボーロとおはじきとの、瞬間のすり替え……それはまさに、幾多の鉄火場を潜り抜けてきた山田こそがなせる芸当である。
「馬鹿もーんっ……!!なんだこれはっ……!菓子…!たまごボーロじぁねえかっ……!通るかこんなもんっ……!」
「しかしながら……全ての状況があんたの負けを示している……証人もいる……この勝利、如何様にも覆らないっ……!!」
「イカサマだっ……!認めない、負けなど認めないっ……!俺は再勝負を提案する……!!」
「往生際の悪い男じゃて……もう昼休みも終わり、再勝負は認めない……」
「誰っ……?か、園長(かいちょう)っ……!」
ざわ……
ざわ……
「貴様の負けはもう確定事項……それは引っくり返らない……で、あるならば、気持ちよくそれを認めるのが博徒(ほいくし)の本懐……そうであろう……」
「しかしこのままでは……山田の外ウマではっ……!!私が、私が破たまごボーロ(破産)してしまいますぅっ……!」
「案ずるな……その負債、ワシが融資しよう……ただその代わり……」
「まさか……焼き土下座でございますかっ……!!」
「クココ……ワシはそこまで非道ではない……この夏の最中、鉄板を見るだけで不快での……ワシの提案する条件はもっと涼しげっ……!見る者を爽快にさせる演技……」
「そ、それは一体……?」
「紐なしバンジー土下座……!」
「絶望っ……!どうあがいても絶望っ……!」
こうして彼はどこからともなく現れた屈強な男たちに連れられ、ヘリコプターに乗せられた。爾来、彼の姿を見た者はいない。
「さて大石氏……山田氏……これが勝利のたまごボーロじゃ……たんと食べるが良い……」
「山田さんっ……!ありがとう、ありがとうっ……!」
「ククク……その程度のはしたたまごボーロで喜ぶとは、やはり園児か……」
「待てよ爺さん……」
「山田さん……?」
「勝負はまだ終わっちゃいない……」
「ほう……」
ざわ……
ざわ……
(まさか……)
(山田、もしかして……!)
「倍プッシュだ」
「クココォ……!クココォ……!」(バニッ バニッ)
「それでなくてはいかん……若い園児は、そうでなくてはならぬっ……!命など所詮紙、紙切れ一枚っ……!それが幼児となれば、なおさらそうっ……!!よろしい、受けようっ……!!王(えんちょう)たるワシが、山田君の勝負……心行くまで受けようではないかっ……!!」
「山田さん……無茶だ……!」
「ククク……いいか大石……ギャンブルは……狂気の沙汰ほど面白いっ……!」
キンッ……!コンッ……!カンッ……!コンッ……!
「丁度昼休みもおしまいのようじゃ……どうじゃ?この後、おひるねの時間を挟んで……その後ワシらの勝負を行うというのは……」
「いいだろう……毟り取る、(たまごボーロの)底が見えるまで……」
こうして山田と園長のたまごボーロでたまごボーロを洗う戦いの火蓋が、切って落とされたのであった――。
(つづ……!)(かないっ……!)
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あと、園長がペドって王道パターンwww
ざわ……
ざわ……
ぜんぜんわからね
イグザクトリーはJOJOか・・・!
ざわ………
ざわ………
でわかったw
創作ホラーが読みたいです!
虹かいてるのは
一児のクオリティ上げるためのステップでしょ。そうだと信じてますよアニキ!!!
→銀と金からだよ。
耳ドリル3cmな!
フツーに楽しかった
今度読んでみようかな?
つまらんことをすみません。
おもしろかった!
あんた天才だよ
ざわ…………………………
待ってましたカイジ!^^
さすが肉さんwチョイスがニクイww
あと発想力!
欲しいこれ(笑)