肉欲企画。

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2008年07月02日

桃太郎 -旅立ち、そして-

 
 
絶句!誰も望んでいなかったあの話の続きが唐突に。

【前回】
桃太郎 -邪気に目覚めた男-

・・・

「都の方角は……」

何やらぶつぶつと呟きながら地図を広げる桃太郎。家を離れて二日目、彼は早くも道に迷い始めていた。

「まあ、いい。歩いていればそのうちどこかに辿り着くだろう。それよりも――」

立ち上がった桃太郎は黙って己の喉に手を当てる。昨日からほとんど水分を摂取していなかった。

「何か飲まねばなるまい」

手近に茶屋などないか、そう思って辺りを見渡すのだが、この山道だ。茶屋など望むべくもなく、それどころか民家の一軒すらも目に付いてこない。

「このままでは喉の渇きで死にかねない」

さしもの桃太郎も渇きには勝てない。取り急ぎ山水でも飲んで急場をしのごうと考えた桃太郎は、水脈を探して山林の中へと分け入った。

・・・

「助けて!誰か、誰か助けてぇ!!」

「ヘヘッ、こんな山奥に助けなんてくるかよ!!」

鬱蒼とした木々の間に、穏やかならぬやり取りが響き渡る。ひとつは若い女子のものと思しき声、もうひとつは粗野で無骨な男の声。

「観念しなァー!」

「イヤッ、イヤァー!!」

木と木が激しく擦れ合う音がしたあと、鈍い音を立てて何者かが地面に倒れ込むような振動が響いた。

「もう逃がさねえぞ、娘!」

「帰して!帰して下さい!!」

「うるせえ観念しろ!!大人しく外つ国に売られっちまえ!!」

男は人攫いであった。街に下りては若い娘をかどわかし、隠れ家に引き連れてから裏ルートで娘たちを売りさばく。外道の仕業である。

「なあに、悲しむこたぁねえ。買い主は労働力を求めてるわけじゃねえからな……もっとも、"違う"働きは求められるかもしれんがなぁ。ゲヒョヒョヒョ!!」

「いやっ、いやぁーー!!」

切ない叫びが山間に木霊する。けれど人里離れたこの場所で、その声はどこにも誰にも響かない。だから娘はこのまま人知れず遠い国に売られ、そして二度と郷里の土を踏むこともなく永劫に――

「そこまでにするんだな」

その声は、唐突に現れた。
瞬時、激しく揉み合っていた男と娘の動きが止まる。

「だっ、誰だぁ?!」

情けない声を上げながら、男は慌てて辺りを見渡す。誰だか知らんが、見られてしまった以上は口封じをしなければ――!男は激しく混乱しつつも、懐に忍ばせた匕首の移置を確認した。

「全く……"水(エリクサー)"を探していたのに、まさか"奴ら"の一味と遭遇するとはな。これも俺の"宿命(サダメ)"なのか……?」

そして男は見た。
何やらぶつぶつと怪しげな言の葉を紡ぎながら近づく、虚ろな目をした青年の姿を。

「だ、誰だテメェ?!それ以上近づくとぶっ殺すぞ!!?」

「"誰"、か。その問いは単純でしかし世の理を説明するよりも複雑な様相を呈するが――俺は敢えてお前に言おう。俺は神から授かりし"桃力(チカラ)"を持つ男であり、またの名をこう言う……"P・B"と」

「完全に狂ってやがる」

目の前の青年の口上を半分も理解できなかった男は、懐から匕首を取り出す。僅かに降り注いでいた木漏れ日が、男の凶刃を不気味に光らせていた。

「目障りだ。殺してやるよ!」

「ここでお前を黙らせるのは簡単だが、しかし"桃力(オーラ)"を使うことに対して"あの方々"が何というか……ともすれば"機関"も黙ってはいまい……」

「何をゴチャゴチャ言ってやがる!!死ねェ!!」

「クッ……!"元老院"が"限定解除"さえしてくれれば、こんな下郎は俺の"桃力(フレア)"で……!!」

獣のような雄たけびを上げながら、男は桃太郎に突進していく。それまで黙って脇にいた娘は、これから起こるであろう出来事を予測し――

「やめてぇー!!」

鋭い甲高い金切り声を上げて、目を伏せた。
桃太郎の目に映るのは、殺気立った男の形相。
迫り来る死の刃――

(クソッ、せめてここに"桃友(ナイツ・オブ・ラウンド)"がいてくれれば……!!)



―――呼んだかい?



刹那、茂みが盛大にざわめいた。
それと同時に一つの影が二人の間を遮った。

「な、何だァ?!!」

「ようやく来たか――"桃友(レジェンド・オブ・マナ)"よ」

男が目をやると、そこには一体の闖入者……桃太郎の腰袋にまとわりつく一匹の生き物、厳密に言えば、非常にみすぼらしい柴犬が現れていた。おそらく腹を空かせていたのだろう、柴犬は必死になって桃太郎の腰袋の中にある物を漁ろうとしている。

「ワンワン!」

「なるほど、"上層部"が遣わせた"能力者"という訳か……確かに人の形をしたモノよりも"柴犬(ベヒーモス)"の方が市井に溶け込みやすかろう」

「ワン、ワオーン!」

「俺が"P・B"である"証(サイン)"を見せろというのか?全く、"元老院"の爺様たちは相変わらず疑り深いことだ……」

「何だあいつ……犬と喋ってやがる……」

呆然とする男をよそに、桃太郎は腰布の中から吉備団子を取り出す。桃太郎にまとわり付いていた柴犬は、団子の姿を確認するや否や猛然たる勢いでむしゃぶり付いた。

「これで俺が正統な"P・B"であることは分かっただろう……では、お互いの"桃合力(チカラ)"を使ってあの男を"排除(ターミネート)"するとしようか」

「ワン、ワワン(待てよ、P・B)」

「なんだ……」

「ハッハッ、バウ(お前さんが使う"桃力(スペル)"は危険すぎる……ここで"解放"したら、すぐに"奴ら"がやって来るかもしれない)」

「しかし、どうすれば――」

「キャンキャン、ハッハゥ(無益な殺生は避けるべきだ。ここは"桃力(サイド・ワインダー)"を使うことなく、上手いこと切り抜けた方がいい……というのが"枢機卿"からのお達しさ)」

「"あの方々"も、つくづく無茶ばかり言いやがるぜ……」

桃太郎は"機関"の"柴犬"から語られた言葉の意味を咀嚼すると、額にうっすら汗を浮かべた。"桃力(ホンキ)"を出さないようにして、この状況を打破する――自分に何ができるか、何をすべきなのか、それだけを必死に考えながら、桃太郎はただ。

一方、男は。

(ヤベーよあいつ犬と喋ってるよ。超コエーよ)

目の前に突然現れた柴犬は、音の速さで青年の持っていた団子を平らげた。すっかり心を許したと思しきその犬は、周りの状況なんてまるで関係ない、という風情で青年にじゃれ付いている。

「ワンワン」

「しかし、どうすれば……」

分かる。飢饉の時によく見かけたけれど、あれは確実にキチガイの目つきだ。さっさと手の中にある匕首でグサリとやるべきだ、とは思った。が、突然展開されたあまりにも斜め上の光景に、男は動けずにいた。

「"あの方々"が――」

不意に、桃太郎の発した声が耳に入った。

("あの方々"?こいつ、ただのガキじゃねえのか……?そういえばさっきから『オーラ』だの『サイン』だの、聞きなれない言葉を口にしていた気がするけど……もしかして、外つ国からの遣いか?)

それは決して有り得ない話ではない。突然に出航の日程が早まり、業者の方から娘たちをわざわざ受け取りに来る。そんなことはこれまでに幾度かあった。そうであるならば一大事だ。娘を引き渡さなければならないのはもちろんのこと、刃を向けたことなどを知られては自分の生命に関わる事態になりかねない。

「あ、あのよぉ、アンタもしかして……"あの方"の遣いなんじゃ……?」

その言葉の直後、桃太郎は柴犬との対話を止めた。
ゆっくりと腰を上げ尻に付いていた泥を払うと、真っ直ぐな視線で男を射抜く。

「……そうだ。"あの方々"の命を受け、"約束の地"へと向かう途中だ」

「約束、ってつまり、契約した所ってことですかい?」

「"契約者"か……奴ら"生徒会"のメンバーともいずれ見(まみ)えることになろう」

あの方、約束、契約者、そして謎の言語……直前までは理解不能だった数々の符号が、男の中で線となって繋がっていく。

「なるほど!そういうことでしたら早く仰って下さいよ旦那!いいタイミングですなぁー。丁度よくそこ、ホラそこに!!"例の"娘を用意してまさぁ」

「犬よ。ヤツの言う"例の娘"、とは――」

「ワン、ワオーン(おそらく、"地核(コア)"への鍵となる"鷹の巫女"のことだな……)」

娘……スエコは相変わらずその場から動けずにいた。
突然連れ去られ、何とか抜け出し、結局追いつかれ、そこに現れた男と――そして、汚らしい犬。スエコは考える。早く野良仕事に戻らないと、父親にどやされてしまう……と。彼女は実に親思いの平民だった。

「"欠片(カケラ)"が揃いつつあるな……分かった、その娘は確かに俺が引き受けよう。お前には手に余る代物だ」

「へへっ、ありがとうございやす。それで、お代はいつ頃いただけるんで?」

「お代?」

「ワンワーン(ヤツの言っている"御代(おだい)"というのは隠語。これを読み替えると "御代(みよ)"、つまり "王" の意味となる。それが "頂く"、すなわち 『天下泰平の世が訪れ、我々の王が頂点に君臨するのはいつか』 ――と、男は聞いている)」

「なるほど、そういうことか。心配することはない……我々の"尽力(フルパワー)"でもってすれば、"御代"はすぐに"頂く"ことができるだろう」

「何かよく分からないですが、いつもありあとあーっす!!これからもよろしくお願いしますぜ!!旦那!!」

男は丁寧に頭を下げると、娘の肩をぽんぽんと叩いて山道を奥へと駆けて行った。後に残ったのは桃太郎と、スエコと、みすぼらしい柴犬が、一匹。

「あ、あの……助けてくれてありがとうございます……」

「礼には及ばない。"上層部"の下命でこの案件は"機関"が担当することとなった。そして機関はこうも言っている――"彼女は聖なる因子(キー)である"と」

「ワンワンワワン(あの短いやり取りでそこまで察するとは、成長したな"P・B"よ)」


「こんなこともあろうかと"智のエレメント"を集積しておいたからな……クク」

「あ、あの!」

「?」

「なんだかよく分からないですけど、私、これから野良仕事に戻らなきゃいけないんです!だ、だからこれで失礼します!!」

常識の埒外にある言葉を連発する桃太郎に不気味さを感じた娘は、そそくさとその場を立ち去ろうとする。と、同時に――

「どこに行くというのだ"鷹の巫女"よ!」

大音声で桃太郎が叫んだ。あまりの声量に、スエコは肩を震わせて立ち止まる。

「バウワウ(待てP・B!彼女はまだ己の背負う"因果"に気付いていない。ここで全てを話してしまえば、彼女の抱える"暗黒因果(ダークネス・リング)"が"暴走(オーバードライブ)"してしまいかねない。慎重にいくんだ、P・B……)」

「……少し喉が渇いたんだ。良かったら水を一杯、飲ませて欲しい」

「い、いいですけど……」

「では案内してくれ」

こうして桃太郎とスエコと、そしてみすぼらしい柴犬は里へと向かって歩き始めた。

「そういえば……お前の名前をまだ聞いていなかったな」

「ワワン、ハッ(ああ、自己紹介が遅れたな。俺の名前は "Innocent noble unicorn"(無垢で高貴な一角獣)――Inu、とでも呼んでくれ)」

「分かった。よろしく頼む、Inuよ」

(ヤダこの人、犬と喋ってる……マジでキチガイじみてる……)


桃太郎の旅は、続く。

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posted by 肉欲さん at 23:50 | Comment(29) | TrackBack(0) | 日記 このエントリーを含むはてなブックマーク
この記事へのコメント
角なんて無いのに一角獣・・・!!
笑うの我慢してたのに最後でっ・・・!!
Posted by 長月 at 2008年07月03日 00:01
無垢で高貴な一角獣www
Inuにそんな意味が込められていたとはwww
Posted by メジロ at 2008年07月03日 00:32
"Innocent noble unicorn"=Inu=いぬ=犬
結局犬かよ!計算されつくしているが狂ってらっしゃる。

でも、嫌いじゃない。
Posted by らうゆ at 2008年07月03日 00:45
犬は本当に桃太郎の言う
"上層部"が遣わせた"能力者"?
それとも桃太郎の脳内麻薬が生んだ
彼に都合のいい幻聴なのでしょうか?
あれ?ワケわかんなくなってきました。
肉欲さんの文才で
私の頭もヤバイ感じになってます。
続きが楽しみです。
Posted by スケッチ at 2008年07月03日 00:49
"桃力(フレア)"って…
肉さんダブルアーツ読んでます?

このシリーズも楽しみです^^
Posted by at 2008年07月03日 00:56
ヤダこの人、犬と喋ってる……マジでキ○ガイじみてる……

書いたあんたが一番狂うとる
Posted by at 2008年07月03日 01:15
正直、好きです。
Posted by at 2008年07月03日 01:18
当時は続きが待ち遠しくて仕方なかったですが、すっかり忘れてました。

久しぶりに見ましたが、相変わらずひどいww
Posted by at 2008年07月03日 01:52
Inuって、Inuって…!!笑

激しくツボでした。
腹筋痛い。
Posted by CHAI at 2008年07月03日 02:30
待ち望んでました!!
Posted by at 2008年07月03日 02:42
ひさびさに早起きしたらまさかの桃太郎の続編…www
次も期待してます!
Posted by ゆし at 2008年07月03日 05:40
こういうの 大好きです
Posted by at 2008年07月03日 11:00
Inuwwwwww
腹筋がwwww
Posted by at 2008年07月03日 12:48
マジキチwww
どこまでが妄想なのかw
Posted by at 2008年07月03日 14:20
漫☆画太郎 の漫画とアプローチは似てますネ。
楽しいです
(^-^)/
が、二番煎じにならないよう期待してますよ!
Posted by ペチ at 2008年07月03日 15:33
これは確実に好きなジャンル
Posted by at 2008年07月03日 16:33
続きが楽しみすぎる!!!!
邪気眼桃太郎本当に良い・・・!
Posted by at 2008年07月03日 20:19
いや・・・もう・・・・
何か、、なんていうか・・・
もう・・・肉さん最高です!
Posted by おっす at 2008年07月03日 20:31
スクウェア厨w
Posted by at 2008年07月03日 21:44
結局犬wwww
Posted by at 2008年07月03日 22:16
極力www早めにwww続きをwwwよろwwwしwwwくwwwwww
Posted by at 2008年07月03日 22:43
まさかの続編w
続きが待ち遠しい
Posted by たか at 2008年07月04日 01:27
Inuワロスwwwwwwwww
Posted by だいきょう at 2008年07月04日 15:12
すごすぎ…wwwww
K.I.J.IとかS.A.R.Uとか出てくるんかな。
Inuの発言もクレイジー過ぎ☆
ユニット結成、楽しみです!

Posted by めるも at 2008年07月04日 15:42
ここから全力で厨二展開に走るのを期待
Posted by at 2008年07月04日 16:18
今回も笑わせていただきました!
ただ、気火=DAN=檎じゃなくなってたのが少し残念ですw
Posted by at 2008年07月05日 00:49
Inuワロチwww
Posted by at 2008年07月05日 02:51
サイドワインダーwww
鬼と戦うときはデミルーンをお忘れなくお願いしますwww
Posted by にま at 2008年07月05日 12:40
桃太郎の続き待ってます。
Posted by リーベルト at 2009年04月25日 22:37
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