大人の階段を昇る時というのは、一体いつでしょうか。
酒を飲んだ時。
煙草を吸った時。
車の免許を取った時。
成人した時。
セックスをした時。
結婚した時。
様々なファクターが考えられますが、いずれにせよメルクマールとなる出来事というのがあると思う。 逆に言うとそのような出来事を経験できなかった人は、いたずらに年だけ重ねていくのみで、大人になれない大人、なんて逆説的な状況が生じてしまうのではないでしょうか。近時のいたましい事件の数々、そのいずれもがそのような大人になれない大人たちが引き起こしている様に見えてなりません。
大人の階段を昇る…ひどく抽象的な物言いですが、その階段を昇る重要性は計り知れない。もちろん行為そのものが大事なのではなく、問題はそれを通じて心に変化が起きるかどうか。
煙草をプカプカふかしていきがっている高校生は子供そのものですが、仮に中学生が煙草を戯れに吸ってみてそのあまりの不味さ、そしてその不健康さに恐れおののき、煙草撲滅運動に着手、ゆくゆくは肺癌の名医になった、という例があるとすれば、それはまさしく大人の階段を昇ったと言っても過言ではありません。表面的に見れば中学生が煙草を吸った、その一点に囚われてしまいがちですが、内面を見ると大いなる変革が起きているわけです。人は自分を客観視しにくいもの。なりたい自分になれない自分、ということはままあるかと思います。そんな時、思い出してください。自分がどんな大人になりたかったのか?を。大人の階段を昇ったのは、いつの頃ですか?と。
そうしたら、きっと、いろいろ見えてくる。
汁 外伝 〜大人の階段〜
中学三年の夏。部活も引退して暇を持て余していた僕は、毎日友達と遊んでました。
河野くんと竹野くんという友人と遊ぶのが主で、夏の間はいつも 僕を含んだ三人でつるんでた記憶があります。
夏の思い出
手を繋いで
歩いた海岸線…
なんてことはビタイチ有り得ず、もう狂おしい程に男三人だけだった。
またその二人がアホでねぇ。彼らはバスケ部に所属してたんですが、僕の中学のバスケ部ってのがかなり強かったんですよ。全国大会行っちゃうくらい。その為合宿とかにもよく行ってて、彼らが合宿での出来事をよく話してたんですが、なんか聞いてたらこいつら風呂場でのぞきやってんのな。厳密に言うと多分のぞきしかしてなかった。よく考えたらのぞき以外の話を聞いたことがなかった。
つまりこの人たちね、わざわざ合宿行ってんのに田代まさしみたいなことしかしてないの。やれあそこの中学の女はすげえパイオツだっただの、あの女は可愛い顔して見事なジャングルを育んでいただの、もうバスケ話とか皆無なのな。後輩を見張りにつけて、狂ったようにのぞき。何かのぞきの虎みたいな目付きになってた。
「いい覗き場所を見つけた時、つまり完璧な角度と視界を有する場所を発見した時…この時こそがバスケ部冥利に尽きる訳よ」
と熱く語ってた河野くんの目付きは間違いなく狂人のそれだった。
シャブとか打ってそうだった。
そんな彼らなので、つるんでいても会話の内容なんて毎日変わらないのな。
来る日も来る日もエロトーク。100%エロトーク。1ミリの妥協もなくエロトーク。
口を開けば「やりてー」とかそんな言葉ばっかり。
「やりてー」って言葉が接続詞みたいに乱発されてた。
あの時僕らが子育てしてたら、赤ちゃんの最初の言葉は「ヤリテー」だったに違いない。
その他にも
「昨日オナニーした?」
「したした!」
とかいう会話に至っては、最早ただただ涙が流れるばかり。
お互いのオナニーライフを確認、というどう控え目に見ても変なプレイの一環
としか思えないようなことを平気でやってた。
余談ですが、変化形として
「昨日シコッた?」
とかもありましたかね…おぼろげな記憶ですが…。
やっぱり15歳くらいの男の子って一番やりたい盛りだと思うのですよ。事実、その位の年
齢で童貞捨てる人も多いワケですし。
でも僕らといえば彼女もいない。
いいルックスもない。
お金もない。
これはもうないない尽くし。
ナイナイ・ナーイ!って魔法を唱えたくなるくらいの無さっぷり。
だからどうしても 僕達みたいな者はAVばっかり見てた。
「女子高生スクランブル」っていうAV。
コレばっかり見てた。
でも、やはり1年365日同じAV見てたらさ。ホラ。アレやん?
分かってしまうじゃないですか。
「あー、この後フェラのシーンにいくんだよな」
みたいな。
「で、ここから騎乗位→バック→フィニッシュみたいな流れだよなー(シコシコ)」
みたいにさ、何て言うか予定調和?て言うのかな。
とにかく浪漫がなくなってしまうじゃないですか。
やはり「AVは浪漫」という側面は拭いきれませんしね。
15歳という若さですから、その溢れ出るパッションも相当のモノがありました。
それを「女子高生スクランブル」一本で押さえつけるというのは土台無理な話なんですよ。
もっと見たい!色々見たい!瞳リョウが見たい!城あさみが見たい!洋ピンが見たい!
そういう叫びっていうのは、至極まっとうなこと。
しかしそこは15歳という若さですから、AVなんて中々手に入らないのな。
むしろAVコーナーに入ることすら叶わない。
だから僕たちはラックの隙間から、まだ見ぬAVばかり眺めてた。
河野 「おい!あのAVスゲエなっ!」
竹野 「いやあ、俺はその隣の方がええね」
僕 「どれもこれも捨て難いぜ」
本当にアホの子だったあの頃。
そんな折、風雲急を告げる事態が訪れたのです。
柴田という男が僕らの前に現れたことに端を発します。
柴田は同じ中学の同級生だったのですが、そんなには目立つヤツじゃあなかった。
ぶっちゃけ中のど真ん中の中くらい、言ってみれば一億総中流のカリスマみたいなヤツだった。
そんな柴田が、ある日突然
「おい、俺、AV借りてきたぜ!」
とか口走るからさあ大変。
僕 「お、おい、どういうことか!」
「いや、この前レンタルビデオ屋に行ったら普通に借りれたぜ!」
な、なんだとー!普通に借りれた、とお主そう申すかー!
これは大変なことですよ。あのレンタルビデオ屋にあったAVコーナー、すなわち「夢の牙城」、あそこに並べられた数々のAV、いやAV様が、望めばすぐに手中に収まる、ということをこの柴田は言ってるんですよ。夢が。あの日夢みた僕らの願いが。瞳リョウが。城あさみが。「盗撮スペシャル24時」が。今!まさに!僕らの手中に!
と思って少し考えた。いや、だって、ああいうビデオは18歳未満はレンタル禁止じゃないの?それがあるから僕もこれまで躊躇われてきたのですよ。どう考えてもおかしい。どういうトリック使ったんだ、柴田は。
僕「でもさぁ…借りれんの?本当に。ヤバいんじゃないの?」
「バカ!
そんなの気合いだよ!」
まさかビデオレンタルに対してこんな風にモンマリと精神論が持ち込まれるとは思いもしなかった。
『エロビデオは気合いで借りろ!』
何て言うか、この時の柴田の目は間違いなく狂ってた。
僕「そ、そうかー!なるほど!」
僕の目はもっと狂ってた。
溢れ出すくらいの気合いは既に具備されていた僕。すぐに竹野と河野を招集する。
とりあえずレンタルビデオ屋に呼び出した。
河野「なんだよ急に」
竹野「どうしたんだよ」
僕「いいか、お前ら。よく聞け」
河野「おう」
竹野「なに?」
僕「俺が、AVを借りてくる」
河野・竹野「な、なんだってー!」
彼らにとっては寝耳に水、というか寝耳にザーメンをぶっかけられたような発言だったことでしょう。これまで、望むべくもなかったAVレンタル、それを今まさに僕が行わんとしているのですから。
河野「待て!待てて!それはヤバいやろ!」
竹野「そうやって!やめとけって!」
僕「臆するな!柴田だって借りられたんだよ!俺にできねえワケがねえよ!」
河野「でもよ…」
僕「お前らはAVが見たくないのか?俺は見たい!AVが見たい!それだけだ!」
竹野「棒太郎…」
河野「お前…まさかそこまで…」
三人を奇妙な友情が包んだ。戦地に赴くソルジャーみたいな目つきになってた。
河野「よし、じゃあ折角だからジュンと白濱も呼ぶか」
竹野「そうだな。皆で選ぼう」
そんな感じで更に二人の同級生を動員し、僕らは死地(AVコーナー)に赴いたのである。
何て言うか、アホだった。でも、それでよかった。あの頃は…。
AVコーナーに入ると、そこは異世界だった。
見渡す限りの裸・裸・裸…クラクラした。眩暈がしそうだった。
竹野「これっ!いつも遠目で見てたアレやん!」
河野「うわっ!すげえ!妊婦とかあるよ!」
ジュン「犬が!犬と人が!」
白濱「スッゲ!ババアがセックスしてる!」
僕たちは、目をキラキラ輝かせてAVを物色してた。
夕暮れまでひたむきに遊んでいた、小さい頃をフと思い出した。
心は、まるでピュアな少年だった。
やってる行為は、限りなくどす黒かったけど。僕らの生臭いリビドーがその空間を支配してた。心なしかイカ臭かった。
一通り見回った後、僕はみんなの方を向きなおして、言った。
僕「よし、じゃあ皆好きなのを選べ。俺が今から借りてくるから…」
一同「(ゴクリ…)」
緊張が走る。本当に大丈夫なのか?リスクはないのか?引き返すべきでは?
しかし、既に少年達のそれぞれの息子は猛り狂っており、よもやここから引き返すなど考えようもなかった。皆、それぞれの手に、大事そうにAVを抱えていたのだ。本能には逆らえない−−−実感した。みんな前のめりだった。
それぞれが僕にAVを手渡す。城あさみ、瞳リョウ、女子高生…あの日夢見たAVたちが、ここに。
僕「よし、じゃあいくぞ…!」
河野「あ!ちょっと待って!こ、これも!」
河野が、何か意を決したように慌ててもう一本ビデオを持ってきた。
パッケージを確認してみる。
『極秘盗撮!湯けむり温泉宿』
彼の顔はアホそのものだった。やはり『のぞきの虎』だった。
AVコーナーからズババンと飛び出す一人の少年。
彼の手にはおびただしい数のビデオが…AVが…。
少年に迷いはなかった。
悠然とカウンターに突き進んでいくその姿に誰もが泪した。
あの背中を見たら、誰もが「抱かれたい!」と思ったに違いない。そう信じたい。そう信じないとやるせない。
柴田『気合いだよ!気合いで借りるんだ!』
彼の言葉が頭をリフレインする。大丈夫。気合いは充分だ。俺はやれる。やれるんだ!
店員「いらっしゃいませー」
僕「これ、お願いします」
決まったー!すっげ、俺すっげー!完璧じゃん!
なんていうかフレンチレストランで
「ボルドーで」
みたいに注文するくらい優雅だったね!
完璧!パーフェクツッ!
店員「あ、はい。じゃあ会員証を」
僕「(スッ)」
クゥゥー!し、渋いっ…渋すぎる…!流れるような一連の動作!
店員「はーい。(ピッ ピッ ピッ)」
僕「(フフ…)」
店員「(ピッ ピッ ピッ)」
僕「(もうすぐだ…もうすぐエロトピアが手に入る…)」
店員「(ピッ ピッ ピー!)あっ…」
僕「え…!?」
『通信兵!通信兵!戦況を報告!』
『こちら前線!弾幕で状況が掴めません!』
『馬鹿野朗!現状を報告しろと言っているのだ!』
『確認中!』 店員「あー、あのさー、これ18歳未満には貸せないんだよねー」
僕「へ…?」
『通信兵!こちら前線!被害甚大!衛生兵を呼べ!』
『通信兵!弾切れだ!弾を!弾を急げ!』
『メディック!メディーック!!』 店員「君、まだ15歳だよね?」
僕「いや、あの、
気合いは十分に…」
店員「ちょっと君、こっち来て?」
『通信兵!応答せよ通信兵!』
『通信兵!通信兵!』
『通信兵ーーーーーーーーーーーー……!』 (全滅)
その後、事務室らしき場所でビデオ屋の店長にメタクソに怒られた。
恥ずかしさと動揺でよく覚えてはいませんが、とにかく烈火の如く怒られた。
「お前、その歳でAV6本とか、何考えてんだ!」
「いくらなんでも借りすぎだろ!」
「なんで女子高生とか盗撮とか借りてんだ…?その歳で…?」
とか、そういうことを散々言われた気がする。
盗撮は僕じゃないのに…!河野の野郎…!
僕「すいません、親に言うのだけは勘弁…!」
僕「すっかり
借りれるものかと勘違いしてて…!」
とか、必死に懇願した気がする。
『すっかり借りれるものかと勘違い』
真顔で言い切った僕は結構男前だったように感じます。
その後、結局説教だけで終わったものの、友人達はクソ虫を見るような目つきで僕を見てた。何て言うか、ボソッと「使えねえな」とか言ってた気がした。友情とか、プライドとか色んなものを全部失ったあの日…。
一つ、確実に理解したのは、AVは気合いなんかじゃなくて、年齢で借りるってこと。
社会にはルールがあるってこと。
ルールを破ろうとしたものには容赦ない罰が与えられるということ。
僕はこの時、大人の階段を一つ、昇ったんだと思う。
そして今。当時の経験は今も生きている。
そう、僕を突き動かす原動力として。
15歳ではAVなんて借りれない。それは変わらない。
だから僕は青少年たちに向けて情報を発信する。
「キチガイ!」「変態!」と言われようが、ブログランキングから除名されようがそのスタンスは変わらない、変えられない。なぜならなぜなら性的扇情性のある文章を書くこと、それが僕の責務だからである。平成の団鬼六を目指しているからである。あの日夢見たAVの牙城…果たされなかった目標…悔しくはない、悲しくはない。ただ、ほろ苦い思い出として胸に残るだけ。夢から夢へ−−−
頑張れ
青少年たち
アヤパン「ちなみに現在の棒太郎さんの夢は何でしょう?」
「日本全国津々浦々の中学生が
『昨日の肉欲企画をオカズにシコッた!』
『思わずディスプレイに飛び散った!』
と目を輝かせて言っている姿を目にすることです」
アヤパン「なるほどー。素晴らしいですね!それでは、『今日のわんこ』です」
「今日のワンコは、東京都穴区の、ペディグリーチャム吉くんです。
バターが大好きな彼は、いつもバターをペロペr(おしまい)